Motorcycle Road & Racing Chassis2011/04/30 16:33



コーチビルダーによるバイクの作品集

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バイクに乗っていると、「やっぱ骨だよな」と思うことが良くある。

エンジンは、パワーをどう引き出すか、という宿命を背負っている。ガソリンをどう燃やし、どこで(速度域や回転域)、どういった(ピーキー/モデスト、ドラスティック/ステディなど)エネルギーをもたらすか、それが本題なのだ。なので、大きくなった、重くなった、というのは、その「帰結」として、ある程度は致し方ない。

一方、それをどう生かすかは、骨、つまりフレームの仕事だ。

いろいろ例えると、
・ せっかくエンジンが絞り出したピークパワーを、キッチリ
  路面に叩き込める設計になっているか?
・ 重いがゆったりとしたエンジンを活かせる、大きくて
  懐豊かなクルーザーを体現できてるか?
・ 機動性を最優先したエンジンの軽さを活かせる、アライ
  メントになっているか?

その機体特有の目的を体現できるかどうか、その実現可能性のほとんどを握っているのが、フレームなのである。
「やっぱり骨」なのだ。

逆方向に考えると、エンジンを選ぶ自由を許してもらえるなら、それに即した所望のフレームをデザインできれば、理想のバイクを作り出すことができる。

世界的に見ると、そういった方法論で機体をデザインし、世に送り出す、いわばコーチビルダーとも呼べる存在が幾つかある。
本書は、その作品を集めて概観したものだ。

コーチビルダーの勢力は、近年は衰える一方で、淘汰も進んでいるらしく、最近ではあまり取り上げられなくなった。
まだ勢いがあった当時でも、機体は高価だったし、生産は少数であったから、量産を背景にした前提(どれを買っても同じ、壊れない)は期待できなかった。維持は難しかっただろうし、その独特な設計が良かったのかどうか、評価はさらに難しい。
例えば、何らかの原因で走れなくなったとして、その原因が設計の不備だったのか、サポートの未熟さだったのか、ユーザーが自力で判別するのは、不可能に近い。

例えば今、あなたのTesi 1Dのフロントハブが壊れたとして、それが設計のヘマだったのか、作った職人がヘボだったのか、ラインの部品受け入れ検査がマヌケだったのか、区別がつくだろうか?。(全部かもしれないし・・。)

よって、この本は、その辺の雑誌のように「どれを買おうかな」といった読み方にはならない。
 ・過去、どんなアイデアがあって
 ・それを具現化する方法論はどんなものであって
 ・その結果が、後代の今から見ると、どんなものに見えるか
読者自身が評価する、そういう読み方になると思う。

自分の理想の機体を、具現化する機会と能力に恵まれる人は、そうはいない。(この人くらいのものだ →  BRITTEN motorcycles ) だから、「こうするとうまく行く/失敗するんだな」だったり、「自分がやるとしたらコレに近いな」といった読み方が妥当だろう。

「自分だったらどうするか」という視点で考えを深めておくことは、アマがプロの仕事を真っ当に批判できる有力な方法の一つだし、自分が求める「本物」が現れた時、逃さずに捉えるための、最強の準備でもある。

折角なので、私の理想を簡単に述べさせていただくと、「クルージングを可能にする最小限の馬力と信頼性を備え、後は運動性/操作性に最大限に特化した機体」だ。

日本は狭い。高速を延々とぶっ飛ばすような環境はないし、実際、法的に禁じられてもいる。
単に「最速」が目的なら、隼でもCBRでも、各社のラインナップの一番上のを無条件に選んで、右手を一杯まで捻れば誰でも可能だ。度胸も能力も、大して要らない。免許と財布(罰金)は、何枚も居るだろうが。
ヨーロッパの高速や、USAの長距離のようなイメージを、そのままこの国に持ち込むのは無理がある。
では、日本で楽しいバイクとは、どんなものか。

乗ること自体を楽しめる、小ささ軽さ、瞬発力、操作性を背景に、遠乗りができる程度の、ユーティリティーを兼ね備えたもの。これが一番ではないだろうか。

それは、オンロードスポーツの形をしている必要はない。オフ車でも、アメリカンでもいい。各人が、乗って操って楽しいと思える、量や形が体現できていればいいのである。
個人的には、大雑把にスペック化すると、「車重150kg、馬力50ps」程度ではないか、と思っている。
実際に探してみると、これがホントに「ない」。
過去乗った中では、やはり、この辺りが一番近かった。
→  MOTO GUZZI V65 Lario 

本書の中では、この辺りだろうか。



さて、フレームの話に戻って。

雨の週末。乗れない週末。
ちょっと一杯引っかけながら、こんな本をめくりつつ、あれこれ考えてみるのも楽しいものだ。
色々な「斬新」に触れられて、知的な刺激にもなる。

(酔っているので無茶苦茶な英語である。)

そして、いつの日か、まさに理想の一台が、目の前に現れる幸運が、皆様にあらんことを。


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