ライディングの科学2011/06/18 14:45



バイクのライディングを科学的に解説した本

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少し前に、これと同じ著者による本を久し振りに読んだのだが、ちょっと印象が予想と違った、というようなことを書いた。 (「タイヤの科学とライディングの極意」 )
その「昔に読んだ」本がまだ実家にあったので、久し振りに読み返してみた。

1990年の刊行である。ライディングが、「教習所のニーグリップ」と「雑誌にある外足荷重」の周辺で主に語られていた当時。「科学」を銘打った本は珍しかったと思う。
今見ると、「科学」というほど緻密ではない。曖昧なところもあるし、好みや偏見も混じっている。論点はあくまで体験や感覚で、これを力学的なベクトル図や、各種のデータを示しながら解説しようと試みている。著者の経験値の裏打ちがあるので、読んでいて思い当たるフシがあったりと、説得力としては侮れない。

感心するのは、イラストによる図示がとてもうまいことだ。
言葉では伝えにくいニュアンスやエッセンスを、シンプルかつ正確に抽出して、噛み砕いてわかりやすく示す。これは、写真とか、写実的な絵などでは出し得ない、クリア感・ダイレクト感がある。


「どうなってるか」を見せてから、「どうすべきか」を説明する方法も良い。読み手にとって「やりようがある」からだ。ライディングは、わかっていても、できなければ意味がない。なので、ここはとても重要だ。読者が、読み取った内容を誤用することは減るだろうし、自分なりに応用するにも自由度が取れる。


細部に間違いはあるのだが、たぶん、こういう本をじっくり読める人というのは、ハウツーの端部だけを頭から信じてラクしたいタイプではないだろう。自分になりにこなして取り込めばよいし、役に立つ本だと思った。

普段、ライディングの端々で感じている疑問に対し、ヒントのようなものを与えてくれるケースが結構ある。意外と私も面白く読めた。


注意点は、主なターゲットはスポーツバイク、せいぜいネイキッド止まりなので、オフ車やアメリカンには、ほとんど役に立たない。(著者はアメリカンはあまり乗れない方のようだ。) また、公道をターゲットにしたハウツー、例えば「街中での視線の取り方」とか、そういった内容でもない。目的はあくまで、「スポーツバイクの操り方」その一点だけである。


Amazonはこちら
既に絶版らしいが、安価な古本が出ているようだ。

ライディングの科学


コメント

_ moped ― 2011/06/19 19:16

まいどです。

以前、この本持ってました。
いま思うと、「・・・極意」を手放して、この本を持ち続ければよかったです。

イラストにあるバイクがスーパースポーツで、膝をするまでバンクさせている点には抵抗ありました。

ですが、直進状態で安定しているバイクを、一旦不安定状態にして、バンクさせ、トラクションによって旋回を維持、加速によって、正立に戻すプロセスは参考になりました。

普通にできるようになるまでは、苦労しました。ただし、いまだに膝をすることはできません。(笑)

_ ombra ― 2011/06/20 21:41

毎度、コメントありがとうございます。

この本あたりは、まだ真面目な方の情報源だったなあ、と思うのですが。こっちの方が先に廃れて、そうでない方がより多く残っているように見えるのは、皮肉というか、残念です。

スポーツバイクを「公道で」楽しむには、また違った方法論が要るはずで、そのあたりを加えてブラッシュアップしつつ、連載してみせるようなメディアが、欲しいですね。
洋書の方には、まだそういったマシな本があるようなので、そのうち紹介したいと思います。

しかし、いまだに「膝スリ」なんか言ってるのは「俺サ」時代のオッサンだけで、情報の出し手も受け手も、その世代で完結してる。その雰囲気に、若い世代の方が先にシラケてしまい、遠ざかっている。そんな風にも見えていて、ちょっと気になってます。

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