ヒコーキのDVD ~ The History of BLUE IMPULSE “蒼い衝撃”の軌跡2012/05/06 06:10



ブルーインパルスの歩みを、当時の映像と関係者のインタビューで振り返る

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今週のエントリーは、バイクとは直接関係がない。しかし、このDVDを見ていると、どうにもバイクを連想してしまうことが多いので、そのことをつらつらと書いてみる。

最近、ハチロクが何とかいう話題をよく耳にする。個人的には、重くて大きいスポーツカーなんてのには興味はなくて、むしろ、あったなあハチロク・・・と、飛行機の方を思い出してしまった。そういえばDVDがあったはず、と引っぱり出して、また見てみた。

買ったのは、ちょっと前だ。F-86Fのブルーインパルスがまた見たくて、ついでに?最近の映像も見られるという便利さに惹かれて、買ってみたのだった。

86ブルーは、幼い頃にテレビで見て感動した。
あの、翼を広げて舞うイメージが好きだった。

今、実際の飛行シーンをあらためて見てみても、あのころのイメージはそのままで、実に優雅に飛んでいる。
しかし、よおーく見てみると、実際はそんなに甘くはない。

機体の剛性は低く、エンジンの効率も悪い(パワーがない)。今の感覚からすると、何をするにも不如意で厳しい。それで、近接してアクロバットだ。空恐ろしい状況だったと思う。

昔は良かった・・ワケではないのだ。

バイクで言えば、多分、かつて名車と言われた旧車に乗ると、多かれ少なかれ、同じような感じがするのだろうと思う。

ブルーに戻って。続いては、T-2の時代に移る。
翼が小さい、精悍なイメージの国産機である。

演技の方も、86ブルーの優雅なイメージとは様相が変る。機体の鋭さに合わせるかのように、至極ソリッドな感じになった。編隊でロールを切る時など、まるで一枚の板に張り付いているかのように、精密に回って見せている。

この機体、ぱっと見だが、低速で舞って見せるアクロには向いていない印象がある。実際、えらく派手に落ちたりもしている。

当時の関係者のお話からしても、このイメージはおおむね間違ってはいないようだ。しかし、当のパイロット達のコメントは、やはり一味違う。

パワーに余裕がないので、一度遅れると挽回に時間がかかる。ちょっとしたタイミングで演技が間延びしてしまうので、えらく気を使った、と。これを、うまい言い方をしていて、「安定性重視な特性」と表現されていた。

一番驚いたのは、翼の面積が小さい(翼面荷重が大きい)機体なので、曲がるとスピードが落ちる、だから、高低差をつける(落とす)などして躍動感を保つように工夫した、と。
タイヤが細くて面圧が大きいので、コーナーで減速する・・・それって、一昔前のバイアスタイヤのバイクと同じだ。

ビシッと決まれば美しいが、レンジが狭くてリカバリーには腕が要る。常に二手、三手は先を読んで、備えておかねば立ち行かない。そんなイメージだろうか。

この機体で、正確に編隊を維持するのは至難だったろうと思う。それが、カキッ!と見事に決まっているのは、パイロットの技術がいかに卓越しているかを示している。戦慄するほどだ。

次の機体は、今も使われる最新型。T-4だ。
軽く小さく、翼も大きい国産機。
これでまた、イメージが一変する。

大きさや軽さ(重さ)が、アクロの速度域に合っている。パワー自体は高くないが、機体の方も軽いので、動作には余裕がある(テキパキ動く)。結果としてパワーに余裕を持てるので、今までは難しかった、スモークで「縦に」何か描くことも可能になったようだ。(今までは性能的にムリだったので、例えば86の時の五輪のマークなんかも、水平に描いていたとのこと。)

実際に飛んでいる姿にも、安心感がある。まるで、空気をそっと押さえるように、翼をちょっと下向きに伸ばしながら、しかし翼端から雲を引きつつ(翼が長いから)、軽々と、ふんわりと身をひるがえす。その姿は実に優雅で、86ブルーを思い出させる。違うのは、力んでいる感じが全くしないことだ。それでいて、演技が実に緻密なのは、T2ブルーからの伝統だ。

インタビューで曰く、86は、アクロの速度や高度で、すごく動きが良かった。あんな機体を目指した、とのコメントがあったが、その狙いは、十分に達せられたように見える。

使うステージにしっとりと合っていて、使ってみてもしっくり来る機体。
こんなイメージの、公道バイクが欲しいなあ、としみじみ思った。

スペックで見るなら、サンダーバーズ F-16(来日時の映像が収録されている)の、パワーと剛性にはかなわない。翼面に雲を巻き出しながら、力で空気を押しのけて行く強引なイメージは、T4ブルーのしっとり感とは対極にある。機体が軽く、翼面積もあり、パワーも凄い。無茶苦茶な動きができるので、便利でもあるのだが、ちょっと行き過ぎ、という意味で、しっくり感はあまりない。

これが低速でブイブイ言わしている様は、何となく、次の信号まで全開!を繰り返す、スーパースポーツ君のありがちな風景に、似ているように見えなくもない。

スポーツ単能機という意味では、エアロバティクス(本DVDへの収録はない)の超軽量機の方が近いようにも思われるが、あそこまで尖がられてしまうと、使いこなすのは難しいだろう。かなりの訓練が必要な特殊仕様なので、一般人が乗った日には、やりにくくて胃が痛くなりそうだ。趣味としては度が過ぎる、曲芸専用機。Buellやモタードなどの、一部のとんがった車種のイメージだろうか。

普通のステージ(公道)に合っていて、操ることを、皆が楽しめるもの。
そんなに難しいことなのかなあ、と、青空を舞う機体たちを追いながら、思いをめぐらせていた。


飛行機乗りは大変だ。仕事で乗るのだから、大概は、自分では機体を選べない。

ブルーのパイロットには、共通点があるように見えた。皆、派手なところがほとんどなくて、すごく真面目で、冷静だ。飛行機の操縦も、ミスは死に直結する。それに真正面から向き合う生真面目さがないと、安全には飛べないし、生き残ることもできないのだろう。そう思った。
不良ちゃんや見せびらかし君は、時に従い退場して、結局は、地味で真面目なタイプしか残らない。バイク乗りと、類似だろうか。

ちなみに、こんなのも。
ブルーインパルス ジュニア
http://www.youtube.com/watch?v=RPkQKS4c6KA&feature=relmfu
あら?新型機になってる。知らなかった。
これ、上から見る方が面白いんだよね、きっと。


Amazonはこちら
ちなみに、96年の作なので、ちょっと古いのだが。
T-4が出たての頃で、初々しさが強調されていて。これもまた良し、です。
The History of BLUE IMPULSE “蒼い衝撃”の軌跡 [DVD]

コメント

_ moped ― 2012/05/06 08:49

まいどです。

ブルーインパルスは、数年前までツインリンクもてぎで開催されてた
INDY JAPAN 500(kmです 笑)の開会式での展示飛行を、よく見てました。

日米の国歌斉唱が終わるタイミングに合わせて登場し、
見事な編隊飛行を見せてくれました。
もちろん、地上では「ブルーインパルス ジュニア」が活躍してました。

航空基地祭に行けば、もっと長く展示飛行を観られるのでしょうが、
なかなか機会を作れてません。
航空基地は、たいてい交通の便が悪いところにあるのに、
マイカー乗り入れがNGだったりするのです。

それはさておき・・・
バイクの例えは、興味深いですね。
トータルバランスのT4は、600cc前後のバイク、
パワーで押すF-16などは、1000ccスーパースポーツという感じでしょうか。

_ ombra ― 2012/05/06 17:18

どうもですー。

そうか、もてぎに来てたんですね。
USの大きなレースには、アクロが来ますもんね。あれと同じだ。

いいなー。
私は、ブルーの実機は見たことはありません。
仰る通り、基地って、何だか足が向きにくいんですよね。
とんでもない望遠レンズが欲しくなりそうで、剣呑ですし。(笑)

T4のイメージは、少し贔屓目ですが、ラリオの開放感が近いでしょうか。天井はLMほどは高くないのですが実用上は十分で、とにかくもう、乗ってて楽しくてしょうがない。「最新型でラリオ」って、実にねたましいという・・。

F-16 サンダーバーズは何でしょうね。ハーレーの、これもんのダートトラッカーで、街中をドリフトしてるイメージかな。「ずるいぞ、それ!」

飛行機の方は乗ったことがないので、ただの想像ですけど。(笑)

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