バイク読書中 「Vespa style in motion」 #062012/09/23 10:15

Vespa: Style in Motion

” 汝、何をもてVespaとなりしか ”


前回、時期的、大きさ的にVespaのライバルと目される機種を並べてみたが。Vespaに似ているものがほとんどないことに、改めて気付かされる。

Vespaは、フルカバードのモノコックボディだ。コンペは大概、チューブラーに、プレスしたプレートを外付けだった。


モノコックの一部として、一枚板をゆるやかに曲げて、レッグシールドから、ステップボードにつなげる構造を持つ。乗り手の下半身は、走行風や、前輪が跳ね上げる泥からカバーされる。幅も広めで、足もとは広々だ。(転んだときの人間のダメージも小さい?。)


ボディのパネルの分割は、メンテナンス性も考慮しているし、ボディワークは、当時流行の「流線型」を取り入れている。

イメージ元としてはこの辺と。

エンジンをミッションと一体に作って後輪に直付けして、ダイレクトにドライブする。チェーンがないので油が飛ばないし、騒音や熱の発生源であるエンジンを、人間から離して置ける。(快適設計)

エンジンが後ろに行ったので、股ぐらには何もない。ボディはえぐって、ステップスルー構造にできる。クルマと同じでイスのように座れてラクチンだ。足を揃えて乗れるので、スカートの女性もOKとなる。

操作系のあらかたは手元にあって、ハンドルから手を離さずに乗れる。当時の路面状況(砂利または石畳)では、これはかなり有り難かったろう。

ホイルは前後とも片持ち式で、脱着が楽だ。(クルマと同じ要領。)当時のタイヤの質では、パンクの頻度も低くはなかったろう。

あと、これは設計者が狙ったかどうかは怪しいのだが、前輪荷重が少ないこと。エンジンも人間も、リアタイヤの真上に乗っかる構造なので、前が異常に軽い。これがもたらす副次効果は、いずれ詳しく述べたいと思う。

そして、美は細部に「も」宿っている。

Vespaはこの後も、この生まれながらの特徴を、ほぼそのまま、継ぎ続ける。
今でも一目で「Vespaだ」と分るのは、これらを兼ね備えた機体が、前にも後にも無かったからだ。

そのブランドをクラックできる模倣が出なかったのは、パテント戦略や、技術的な難易度など、幾つか要因を追うことができる。(後に詳述する。)

しかし、私が興味をそそられるのは、Vespaの「前に」これが無かったことだ。

D'Aascanioは、如何にしてVespaを思いつきしか。

よくあるのが、これは飛行機屋の思いつきですよ、という解説だ。
(D'Ascanioが航空技術者だった由。)

飛行機の設計は、目的に応じて、機体の構成を考えて、それに必要十分な最小限の構成を、具現化することを考える。
例えば、爆撃機、戦闘機、旅客機などの目的が初めにあって、それに応じた構造を、要求される飛行距離や搭載量などの仕様から、機体の形や寸、馬力(エンジンの機数)などを割り出しつつ、現実に作り上げていく。
軽くなければ飛ばないが、もたずに落ちたんじゃ意味がない。その境目を、いかに美しく狙うかが、デザイナーの腕なのだ。

そういう思考に慣れた技術者が、「必要最低限の移動の道具」として、「一般に供する二輪の乗り物」を考えた結果の、「合理的な構造」。
確かに、そう見えなくもない。

しかし、違っている。

大体、一見して分るが、この作りは、飛行機ではなく、クルマに近い。
(モノコックの四輪は、1923年のLanciaに先例があり、この当時も既知だったはず。)

もうひとつ。

D'Ascanioは、飛行機の人というのとは、ちょっと違うようなのである。




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