バイクの本 「それ行け!! 珍バイク」2012/12/30 09:36



ベトナムを舞台にした、「過積載バイク」の写真集だ。

無論(?)、そのほとんどは、我ら日本人が世界に誇る、二輪文化の象徴である「カブ」で占められている。

日本版はオチャラケた題名がついているが、元は外人さんの手による、ルポ(?)写真集である。

元の洋書はこの辺 (Amazonへのリンク)
英語版:Bikes of Burden
ドイツ語版:Bikes of Burden

著者は、ベトナムで、この強烈なバイクの群れを見て衝撃を受けて、いかん、これは撮って伝えねば、となったらしい。

私も、東南アジアのバイクはこんな使われ方だ、というのは知っていたし、また、今、日本の二輪メーカーが食えているのは、花形のスポーツバイクなんかではなく、こういった底辺の市場が支えているからだ、というのもよく聞く話だ。

きっと、たくさんいるんだろうなあ~程度の察しはつく訳だが。
こうも数を突きつけられると、圧倒される。

以下、適当に拾ってみる。


§第一楽章 「食品」

何せ、冷凍という手段がないので、鮮度を保つためには、小分けにすばやく運ぶ、のだそうである。

なので、日々運ばれるのは・・・

普通の鶏であり、

赤裸々な鶏であり、

もっと赤裸々な、豚である。

エイリアンの残骸? (リブかな)

平穏な、日々のパンであり、
(軽くてかさがあるので、これはこれで運びにくそう。)

もっと運びにくい、卵である。
(見ている方がヒヤヒヤ・・・。)

食うのか飼うのか、いぶかられる猫も。


§第二楽章 「工業製品」

無論、ものづくりに携わる人々の、運搬手段としても活躍している。

自転車のフレーム。

たわわに積まれたタイヤ。

もっと、並ではないタイヤ。
(何だかカッコいいな・・・。)

右手一本で運転できる利点を生かせるのは、蕎麦屋だけではないわけで。


§第三楽章 「矩形」

積載の量、重量はもとより、信じられないのは、その「形」である。

それは、額縁か何かであり、

ガラスであり、

鏡である、という事実。
(手を切らないよう、手袋くらいはしてほしい・・・。)

これは多分・・・、サッシか何か?。
二人で運べばね、荷積みの手間も、割れ物耐震へのケアも不要なわけで。


§第四楽章 「長尺」

無論、「長さ」も並ではない。

ベランダの手すり?。
重そうでもある。
これでコーナリングは、考えたくないなあ・・・。

取り回し感だけは、リムジン級でしょう。


と、こんな光景が、200ページにわたって繰り広げられる。

著者も、現地のバイクタクシーにタンデムで撮影したそうなので、ページをめくっている間に、路上で、この流れに乗った感じになってくる。

この積載で路面なので、スピードの上限は、せいぜい40~50km/hだろうか。
そのスピード感で、むき出しで、人が、物資が、生活が、流れている。
(日本が、このスピード感だった頃。私はカブの荷台の上で、父の背中ごしに、空を見ていた。)

すっかり呑まれてしまって、これが「普通のバイク」のような気がしてくる。
普段、ハンドリングだのスタイリングだのホザいている我々の方が、異常なような。
少なくとも、甘いな、とは思えてくる。
(全く目的が違うものを比べてはいる訳だが。)

著者いわく、
元祖「積荷のバイク」であるホンダ・カブをこの世に送り出した、ミスター本田に特別な感謝を捧げたい。

先週までの、Vespaあたりと並べて見ると、考えさせられる。

これが、日本が示せた価値観、その強烈なものの一つ、なのだろう。

著者はオランダ生まれの西洋人だが、この感覚は、東洋人でないと理解できない気がする。

ぜひ一冊買っていただいて、ご自身で評価してみてほしい。


なんかスゲー。(笑)


Amazonはこちら
それ行け!! 珍バイク
なお、上に挙げた洋書は150ページ前後だが、和書は「リローデッド版」が加わって200ページ、さらにお安いときている。東洋的に、お買い得である。(笑)


コメント

_ moped ― 2012/12/31 18:01

まいどです。

この本、アマゾンの欲しいものリストに入ってます(笑)

開発者にとっては、こんな使い方をしているとは、
驚きでしょうが、それでもバイクは走っているところを観ると、
小排気量でも、スタミナがありそうです。

あくまでも実用性、人も荷物も、所有者が載せたいだけ載せられることが、
アジアの小排気量車の使命かも知れません。

ベスパとは対極ですが、頼もしくも感じます。

ところで、今年も楽しませて、いただきました。ありがとうございます。
来年も、よろしくお願いします。(マイペースで)

_ ombra ― 2013/01/01 08:09

毎度コメントありがとうございます。
年をまたいでしまいましたが、本年もよろしくお願い致します。

カブの耐久性はすごいですね。
こうもコキ使われると、機械として本望のような。
乗って面白いものではないんですけどね。(笑)

今年も、乗って面白い公道バイクとは?、(荷物でなくて)我が命を乗せるべきバイクの特性とは?、その真髄に迫らんと努力してまいります。(も少しマイペースで・・・笑)

_ まーに ― 2013/07/16 20:56

中沖さんの最初の連載でも、終戦直後の日本では、こんな使われ方
(エンジンはビリヤスだろうが)だったそうですよ。今GP出版から
入手できる本にも、山のような積載バイクの写真が。

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