バイクの本 「熱くなるバイクたち―国産車編 」 おしまい2013/05/05 08:01


(前回の記事は こちら 。)


この本で取り上げられた車種が、「名車」扱いされる所以なんだが。
どうも、はっきりしない。

ピークパワーや、スタイリングの「一発芸タイプ」と、ボサっと乗れる意味での「乗りやすさ」に秀でているものの、両極端が混在している。

とにかく、どこかしら優れていれば名車なんだ、と言えなくもないのだろうけど。それでいいなら、どれでも名車だ。

やっぱり、物の出来とは関係なしに、「一時期、話題になったもの」のような、背景を指しているようにも思われる。

ネモケンも、そんな様なことを書いている。
名車の所以は、作り手の熱さのゆえだ、「こんなものが作りたい」、そういう熱意が、名車に魂を吹き込むのだと。

せせら笑いながら、何度でも言うが。
Guzzi あたりに比べても、この辺の「熱さ」など、大した事はない。
そもそも、本当の名車は、熱さではなく、冷徹な判断が造るのだ。

・・・という私の持論は、ここでは置いて。

もっと、実際的な視点で論じる。

###

もし本当に、ここで言う「名車」を手に入れ、満足できる可能性が低くないなら、私とて、何も言わない。しかし実際、そうではない事例には、事欠かない。

まず、愛されて、長く乗り続けられている個体よりも、飽きられ、売られ、回され続けている個体の方が、遥かに多い。

カワサキの空冷を、後生大事に、歳をとっても長く乗ってるオッサンなんて、雑誌の上でしか見かけない。実際にパーキングに居るピカピカの空冷ヨンパツは、若め(?)の兄ちゃんが、入れ替わりで乗っているだけに見える。

ニンジャだって、一時期はあんなに居たのに。イイ感じに使い込まれた、所帯じみた個体を、今見ることは、全くない。

CB750をノーヘルで気楽に乗れたり、カタナが速かったりオトコだったりするのは、マンガの中だけだ。

しかし、だからこそ、本書のような「名車論」が、逆説的に意味を成す。

確かに、これら「名車」への思いの強さは、人それぞれだろう。
ひょっとしたら、トラウマと言えるほど、強いものかも知れない。

その思いに、火をつける。
これらの記事は、言わば、そのために定期的に繰り返されるリマインド(予定の時間を知らせるメール) だ。

これら「名車」は、この所、値段が高騰している例が多い。
モノの方はキッチリ古びているし、「進化した」新型は出続けているから、機能的には、衰える一方なのにもかかわらず、だ。

それは、無為なプレミアを演出するため、プライスタグの左の桁に「1」と付け加えてみただけの、いたいけすぎる所作に見える。

値段は、「名車の証」なんかじゃない。
小ガネを握った「熱い」中高年をカモるための高級なエサとして、光らせたいだけだ。

その証拠に、バイクの中古は、相場の様相を強めている。

プレミアの正体が、希少性(相場)なのだとしたら、初期投資が少なければ、リターンも少ない。
乗り物の個人売買で、リターンの有無を問えるのは、フェラーリやアルファのクラシックの辺りがせいぜいだ。バイクなんか、まるで望み薄だ。

それに所詮、投資は、プロにはかなわない。
ミセス・ワタナベを気取って、(言いえて妙な)FXなんかに手を出しても、財布にヤケドをするだけだ。

いくら美しいノスタルジーとて、維持費が高けりゃ続かない。
車検、保険、税金に高速代、ガス代だって高騰している。
もう、真っ白に燃え尽きちまう。(笑)

###

大人なのだから。
煽られて、熱くなった結果ではなくて。

公道バイクとして、どう思うか。
冷静に吟味して、確かめた方がいい。

今や、YouTubeあたりで、こんなに希少な(笑)「名車」でも、実働状態をしこたま見られる。存分に吟味してみて、その動きが、自分の求める公道バイクにふさわしいと思われるなら、ふんぎることを考えても、いいのではないかと思う。

ただ、もう少し、相場が落ち着くまでは、お待ちになった方がいいだろう。
お祭りは、そうは長くは続かないものだ。

###

次に、吟味すべきは。
サポートである。

車体より、店の「掘り出し物」を見つける方が、実際、よほど難しい。

なにせ古いバイクなので、パーツはとっくに枯渇している。リビルドやリユース、復刻品などに頼らざるを得ない。専門店(Z専門とかそんな)は、パーツの仕入れ経路や、流用のノウハウなどを期待できるわけだが。

問題が、いくつかある。

まず、ノウハウ代は、いつも高い。
次に、仕事がいい加減な場合が、少なくない。

腕が確かなら、高くても納得できる余地があるのだが。
残念なことに、そうでないことが、本当に多い業界なのだ。

例えば、私が乗るMoto Guzzi あたりで、「よくあるけど、よくない話」を紹介すると、
 ・妙に値段が高いのだが、「完璧に整備してお渡しします」とあったので、
  思い切って踏ん切った。
 ・ところが、納期をはっきり言わない。「知り合いのスペシャルショップに
  出しています」。どこに出しているのかは、曖昧にしか教えない。
 ・延々、来ない。まだ来ない。さらに来ない。もっと来ない。全然、来ない。
  ホントーに来ない!。(クーリングオフをやり過ごす手段とか?。)
 ・やーっっっと出来てきたと思ったら。全然、直っていない。(涙)
 ・仕方なく、自分で店を探して、修理&整備に出す。
 ・トータル、キッチリ2台分かかる。(号泣)

大体、これだけ古い機体となると、それが完調なのかどうか、判断が難しい。

バイクの新車は高性能化を続けていて、今や「それが普通」になっている。路上のクルマも高速化して、走行のペースも上がっている。我々も、当時よりは性能に慣れているし、他方、体力的には落ちて来ていて、反射神経や腕力が想定以下という事態もありうる。

そういった変化の俎上に、古臭い「名車」を乗せるわけだ。
完調かどうかなんて、容易にはわからない。

だから、買ったバイクが何か変だと感じても、「そんなもんですよ」という診断(?)に、具体的に反論できない場合も多い。

私が見た限り、店の腕の良さと、口八丁の達者さは、反比例するようだ。
初めに説明をまくし立てられて、「これでもいいかナ」と、消極的に購入に至る場合も、少なくないように見受けられるが。(年かさの人に多いような気がする。) これは、必ず避けるよう、強く心がけることをお勧めする。

「これでいいか・・」ではなくて、「これがいい!ここにしよう!」という、明確な手ごたえが得られるまで、時間をかけて、存分にお買い物を楽しまれる方が、オトクである。

安くはない買い物、しかも、積年の思いを晴らす一戦となれば、尚更だ。

###

逆に、相場が底を這っている、裏ドラ(隠れ名車)を探すという手もある。

私のような貧乏人は、中古市場を見回すと、自然にそういう目線になってしまう。
何か、忘れていた一品、掘り出し物はないかな・・・。(笑)

この「裏ドラ」だが、上記の、店のサポートが得られにくいことが、大きな問題になる。

大体、単価が安いので。
世間一般、ビンボー人は、客扱いしてもらえない。

自然、サポートは、自助努力によることになる。
好戦的でスタンドアロンな、本質的「バイク乗り」には、お勧めである。(笑)

ワタクシ的な、背中プッシュはこちら。
ベスパ
モリーニ
「どおしても日本車がいい」って人は、 この辺を 見て、自分が何を欲しているか、よくよく反芻されたい。

うむ。
我ながら、下手な「名車あおり記事」より、たちが悪いような気がする。(笑)

###

と、そろそろ我に返って。

ぶっちゃけ、
いくら安いからって、瀕死のRZRと、腐ったガンマなんかで悩むのが、幸せだとも思えないんだけどね。
楽しいけどね。(笑)

KR250なんてどうですかね。多分、史上最後のタンデムツインだぞ。
VZ750、とっつぁんバイクとしてまぶしいね。ゴミみたいに安いし。
・・・・


Amazonはこちら
1999年刊 定価\1200
10年以上前の本で。当然、古本だけです。
熱くなるバイクたち―国産車編 (エイムック (116))
ちなみに、「国産車編」とあるが。「輸入車編」はないようだ。


バイクの本 「熱くなるバイクたち」 勝手に外車編2013/05/12 05:53




前回の記事 の最後で、ふと、
  国産車の「隠れ名車編」
を書こうかとも思ったのだが。

何だか、昔、Mr. Bike あたりで見た企画のようだったし。
思い直して。

単純に、「外車編」を書いてみようと思う。

結論は、先週の国産車と同じである。
 ・外車とて、ホントに使える「名車」なのか、よくよく吟味すべし
 ・維持の方が大変なので、店を初めとした環境を、さらに吟味すべし

ただ、モノが外車となると、業界の規模はかえって小さくなる。
小さくて辛らつな世界が、より「笑える」と面白いのだが。

一般に、バイヤーズガイドって、クールに書くと、面白くならないので。
あまり自信がないのだが・・。


◆ BMW ◆



やっぱ、BMWと言ったらコレだ。
一番、BMWが濃かった世代。

ハンドル幅がえらく狭くて、初めはちょっと乗りにくいが、「下半身でバイクにつかまる」基本で行けば、本当に従順に走ってくれる。重心が低いので、大型車ならではの「重さの恐怖」は、今や小さい部類だろう。

BMWなので、乗ること自体を楽んだり、より高みを目指す意味での「スポーツ性」は、求めてはいけない。バイクの懐に合わせて、スムーズに乗ってやるだけだ。そうすれば、コイツはあなたを、どこまでも、淡々と、運んでくれる。

荷物や女房をくくりつけて、
  いい天気、いい景色。
  いい宿に、いい食事。
  ああ、楽しいツーリングだった!。
と、そういうバイクだ。(☆)

基本的に、乗るのには労力をかけない人向けだ。
だから、日本車からの乗り換えにも違和感が少ない。(←ポイントである)

一時期、耐久性伝説では天下を誇ったR100RSも、そろ絶滅の淵が見えつつある。

今、生き残っているのは、「大事に使われていたから、辛うじて残っているもの」と、「放置期間が長かったから、残っているように見えるもの」の、どちらかだ。両方、手に入れた後、整備し直せるのかは微妙だ。

純正パーツは出なくなってしばらく経つし、この旧フラットの整備で鳴らしていた第一世代のBMWショップは、代替わりができていない。当時の経験を持つ整備士が、まだ残っていたとしても、現場で手を動かしているかは微妙で、年とともに管理職や内勤に移っていたりで、現場に居ないケースもある。

なので、今、これの整備をするのは、現世のデジタルBMWの整備士が、不慣れな手つきで、という場合が多い。その仕事に、この老いぼれのアナログバイクが耐えるのかは、わからない。

BMWとて、磐石とはとても言えない状況だが、それを望んだのは、BMW自身だ。

「やっと手に入れた一台を、大切に長く乗る」訴求の仕方を、BMWは、とっくの昔に放棄している。

BMWの良さは、上記☆の乗り味にある。
だから、一台にこだわる必要はないはずだ。
☆のようなツーリングが、ラクに楽しくできる提案を次々に行って、新しいのに乗り換えてもらった方が、メーカーもユーザーも幸せだろう、とそういう考えだ。

今さら、旧フラットへのこだわりなんかを持ち出されるのは迷惑だ、とBMWは思っている。

淘汰される一方の古い世代に付き合っていては食えない、店の方もそう思っている。

それに反抗する気概がないと、もうこの世代には乗れない。

BMWとてバイクなので、アツいアタマでは乗れない。
クールなアタマで、諸般の事情を了解の上ならば、私も、静かに背中を押させていただく。
値ごろの個体も増えているようだ。

高速型の2本サスと、中速型のモノサスの区別も、今のバイクの性能レベルからすると、もう大して違わないだろう。


◆ ハーレーダビッドソン ◆

ハーレーもBMWと同じで、新型になるほど、どんどん便利にラクになって、持ち味の方は薄まっている。

ワイルドがウリのハーレーだが、昨今のハーレーの荒々しさなんて「ただの演技」だし、それに乗っかってワイルドな気分に浸るオジサンは、コスプレと同じだ。

コスプレ(中身はどうあれ、姿と気分はアレゲ)が目的なら、新車でいい。

そうではなくて、「本物」が目的なら、旧車を探す。

ヘルズエンジェルの初代総長 は、FXRが一番だ、と言っていた。
FXSなんか、今見ると日本人サイズだったなあと思う。
実情は、良く知らないのだが。

もうどれも、レストアが必要な世代だが、それなりの整備で、それなりには走ってしまうようだ。(ちゃんとエンコもするけど。) 「デフォで改造あたりまえ」が災いして、いじったり戻したりが激しいと、手旗信号状態(赤上げないで白下げない・・)で、何が何だかわからなくなったりする。

「本物」が欲しくて、時代を遡ったはずなのに、かえってわからなくなってしまうという。皮肉な状況だ。

「ワイルド」がウリだったはずなのに、一歩入ると、ショベルだナックルだと、スペックとフィーチャーの世界にすり替わるのも、判りにくい。(引っ掛けの臭い。)

程度の割にはえらく高価だし、新しい特定の店が、多量に入れていたりしていて。怪しさもひとしおだ。

それは、顧客を引っ掛けてやろうという、無邪気な罠の無限ループなのか、(ハーレーの、または業界の)二重らせん(DNA)なのか、よくわからないのだが。

そんなものと戦わないと、「本物」には、手が届かない状況に変わりはない。
その戦場では、絵の具で書いたタトゥーなんかじゃ、武器としては弱すぎる。

まあね。ハーレーだからさ。
乗りたいなら、乗ればいい。

でも、自由の国、USAの乗り物なので。
どんな結果になっても、他人に文句は言えない。

自由とは、そういうものだ。
自らに由ると書く。

今頃、Easy Rider を気取りたい人も、そうはいないと思うけど。

どうしても「本物」、という方は、 この辺り でもご覧になって、元気を出していただくとして。

逆に、そこまでお困りではないのなら、絵の具で書いたタトゥーなんかはとっとと洗い流してしまって、着慣れたスーツにでも、お着替えになった方が宜しかろうと思う。


◆ Ducati ◆



パンタもベベルも、吊るしのままでは、まっとうに走る代物じゃなかった。
手を入れながら維持しないと、立ち行かない造りだった。

ドカ乗りとて、好みも違えば、レベルに差もある。それを反映するように、維持くられてきた個体の方も、バリエーションが広い。

極端な話、一つ一つ、みんな違うのだ。
ドカの維持が、「ここをやればOK」のような、一律な言い方でくくれないのは、そのせいだ。

各々がワンオフに近いイジり方なので、結果の良し悪しは、時間がたってみないとわからない。

逆に、時間がたってもちゃんと動いている個体はアンパイだ、という判断になる。

ただ、そういう個体は、同じ店の馴染みの間で狙われている場合が多い。
古いショップの客同士ともなると、一緒に走ることもあるし、顔見知りだったりもする。大体、どんなヤツがどんな個体に乗っていて、その出来栄えがどんなんだ、というのは、店のメンツには知れ渡っている。

だから、例えば、乗り手がリタイアしたり、乗り換えたりで手が離れると、即、「買いですね」となる。

昔は改造で鳴らした店の方も、最近は電子化が著しいバイクをいじりあぐねていて、新規顧客はさっぱりだ。だが、昔、自分が作ったアナログ時代の遺産たちが、そうやって回りまわって、いまだにビジネスになっている。アナログ世代のDucati ワールドは、今や、そういう微妙なバランスの上に、辛うじて成り立っていたりする。

「輪廻」とも言えそうな、その輪の中に、割って入るのは難しい。
本物の「出物」に出会うのは、だから、そう簡単ではない。

ピカピカだが超・高価なベベル900SSなんかを、いまだに目にする昨今だが。あの、減り易い壊れ物のようなベベル・デスモを、維持する術、カネ、効果を、ご承知の上か?。

ドカも、アツくては乗れない。
むしろ、「クールに行かないと、命に関わる度」は高い。
その緊張感が、ドカの良さだった。

そういう時代では、とっくになくなっている。
当のDucatiが、一番それをよく知っている。
知っているだけに、悩みも深かった。

そんなワケなので、もっとアツく、ハジけちゃいたいのなら、製造ラインから出たてホカホカの、新車の方がいいだろう。

BMやハーレーと同じく、ドカとて新型に価値観をシフトしている。スピードなら水冷、ツーリングならムルチ、ご近所の練り走り用にも、大小いくつか揃っている。
今やドイツ車でもある。安心して、お求めいただけるだろう。


◆ Triumph ◆



何でも、最近のトラは「とても作りがよい」のだそうだ。
じゃ、昔のは作りが悪かったのかな。(笑)

旧世代のトラは、伝説だ。
スティーブマックイーンである。
トムクルーズ辺りとは、格が違う。

実際に乗ってみると、思ったよりはよく出来ているし、乗り味もパルシブで、はまる人ははまる。(らしい。)

でも、思ったほどは走らない。スピードも出ないし、やにわに壊れる。(これはホント。)

ボーリングぐりぐりのシリンダーにオーバーピストンにて、何とか走れるようにはした。
って、そのせいなの?とてーも高い。

「名車」の中でも、ワンランク古い「重鎮」だからだろうか。

その、ひと回り年かさのご老体が、繰り返し繰り返し、再生されては登場する。その輪廻の様子を見ていると、何でだろうか、いつも「悪循環」のイメージが沸く。

何となく、その湿り気というか暗さ加減と、妙にお高い敷居の組合せが、イギリスっぽい気もするんだけど。

気のせい?、それとも偏見かな。


◆ Moto Guzzi ◆

最近、エルドの時代を入れる業者が増えているとか。
しかし、どうも、皆さん小ぶりで、お仕事の方は、趣味のレベルに留まっているようだ。
おカネを払えるレベルにはない、というご指摘も聞く。

こういう業者は、昔からいた。
頼んだパーツはいつ来るんですか?と訊いただけなのに、
「オレは趣味でやっているんだ! うるさいことを言うんじゃねえ」
そう怒鳴られたこともある。

そんなんで食えているんだから、Guzzi は、乗り手だけではなく、業者にも優しいバイクらしい。
その分、あやしい個体も増えることになる。

他方、Guzzi の本社の方だが、上に書いた他のメーカー達と同じ状態にある。時流と共に、利便性の波に乗るべく流された結果、個性どころか、アイデンティティすら失いかけている。

なので、これだ!と思えた昔の世代に目が行くというのは、そういう年代の人たちにとって、ある意味、仕方が無いことだ。

それぞれの時代に、いろんな個性を具現化してきたGuzzi だ。
好きなものを選べばいい。

ただ、もうルマンIII 以前の年代の個体は、整備も乗り方も気にせずに乗れる意味の「普通さ」は、期待しない方がいいと思う。ルマンI の辺りの「名車」は、コキ使うことなんかは考えずに、たまに乗っては磨いて仕舞う、「宝物」扱いが妥当ではなかろうか。

他方、1100 Sport ~ ラジアルルマンのスパイン世代も、今や年式が妙齢に差し掛かっていて、パーツがナンだったりするので要注意だ。(このあたりの「世代の事情」は、ドカも似ている。)

だからといって、一足飛びに新車にしようと思っても、車種が少なく選べないのだが。(ここはドカと違う。)

バイアスルマンの世代が、乗り換えずに延々来ているのは、そういった幸運?(笑、あちゃー)のせいもあるかと思う。

Guzzi は、もともと「生真面目なイタ車」という、珍しい姿のメーカーだった。
だから基本、生真面目な車種を選んでもらえれば、外れはない。
ただし、生真面目だけに、面白みに欠けるきらいはある。

そんな時には、やはりバイアスルマンが光ってくるが。その実情は「別格」とは誉めすぎで、「不連続に孤立した頂点」だったりするので。維持には、それなりの覚悟(カネ)と、バックアップ(店)が要る。

なんて事情は、このブログをご覧の皆様には、釈迦に説法、耳タコだろうとは存じますが。(笑)


◆ Vespa ◆

新世代は、ちゃんとブラッシュアップしていて、電子化も進んで乗りやすい。でも、新車の値段は安くないし、何かあった時の手間のかかり方は、また格別だったりする。

やはり、構造がシンプルで、乗り味がダイレクトで、テスターではなくスパナで維持できる旧世代は、そういう年代の皆様にとって、いったん目が合うと、そらしにくい相手のようだ。

スモールやラージ、フェンダーライトだのと、いろいろと枝分かれはあるのだが。その状況を、まるっと、ひとくくりに書いてしまうと・・・。

もともと、丈夫なバイクとはいえ、頑強と言えるほどの品質ではない。
いろいろ弱点もあるのだが、人智の力で超えられる程度(笑)に収まってはいたので、まだ走行可能な状態の個体が、幸運にも残っている、とそんな状況。だから、中古を整備しようという場合、人智の力の助けがないと、復活しない場合も多い。

もともと、「外せない整備の要点」を、そこここに持っているアーキである。
その辺の国産バイク屋が、ホイと扱える代物じゃないのだ。
ところが、ホイと扱っているだけなのに、専門店ヅラしている店が、これがまた、えらく多い車種でもある。

パッと見にキレイな、旧世代ベスパを仮定しよう。
そは、
 造られた当時のバラツキ
 その後の扱われ方
 修理・整備の質
それらが全て、重なった実存である。
ぶっちゃけ、年食ってる分、修羅場をくぐってきているはずなのだ。

その個体が、皆様が旧世代ベスパに期待する「何か」を、まだ、体現できているのかを、外見だけから判断するのは、相当に難しい。
仮に手を入れたとして、そこに近づけるのかどうかも。

エンジンをカチ割って中身を全部やり替えて、ボディも補修して全塗装して、腐った電装やタイヤなんかを新品にして・・・。

確かに、金額としては、上述の大型車たちほどは行かないだろう。
その分、敷居は低いし、しくじった時の傷も浅いのかも知れないが。

そこまでして、復活なったVespaのパフォーマンスは、しかし、何十年か前の、あの当時の、そのままなのだ。

個人的には、ベスパの良さは、「旅心」だと思っている。

頼りなくてヘナチョコなのに、何となく、どこまでも行けそうな気がする。
で、 実際に、どこまでも行ってしまった例 を見て、何となく納得しちゃう。
「行くんだ、やっぱり・・・。」(笑)

私見だが、その、緩さと信頼が表裏に引っ付いた不思議な感覚は、イタ車というよりも、ふた昔前くらいのフランス車(BXとかあの辺)に近いような気がしている。
実用域での使いやすさも、また格別というのも似ている。

身近に置いて楽しめる懐の深さも期待できるとなれば、いよいよ、想いも募ろうというものだ。

ところがだ。
この「実用に楽しむニュアンス」が、別の意味で、難しさをかもし出す。

その走行のペース(巡航スピード)は、今のレベルからすると、ちょっとばかり遅い。公道の環境の方が、ベスパの側のいい感じのペースを、許してくれないかも知れない。(小型の旧車に共通の悩みだが。)

これは完全に私見だが。
公道を走る人々の走行パターンには、その考え方の根底(文化)が出る。
日本の場合、同調圧力がやたらに強くて、「皆より遅いのは悪いヤツ」という非難が許されるようだ。
他国を見ていると、これほどではない(各々のペースを許しあう度合いが高い)ように思うので、日本ならではの悩みかも知れないのだが。

お住まいの地域によっても差があると思うが、そういう、世知辛い世情を走って「幸せだ」と言える能力?余裕?が、乗り手の方に求められる。

言い換えると、皆様が、旧世代のバイクに期待するのが何なのか、より辛らつに突きつけられる、ということだ。

たかがVespaとはいえ、ゆめゆめ侮らぬが吉である。

まあ実際は、この小さな機体に精神汚染されちまえば、あっさりシンクロして、楽しく乗れちゃったりもするんだけどね。(笑)

そして、もしそうなっちゃった暁には、Vespaから見た風景がどんなだったか、是非、語ってみていただきたい。



#####

こうして見ると、やっぱり、外車も、バイクと乗り手、お財布以外の、それらを取り囲む「環境」の方のマッチングに、ポイントがあるように思う。

「熱さ」を説くような雑誌は、この辺も無責任なので。頭脳をクールにしていただいて、ご参考いただければ幸いだ。


(以上、写真は昔の広告などから流用。)