読書ログ 「弱いロボット」 ― 2013/08/31 05:35
私のようなオッサン世代は、「巨大ロボットが悪をやっつける」路線で育ったせいか、ロボットと言うと、人間より大きく強く、下手すりゃ合体までして、少なくとも、何かしら特殊な能力があって、役に立ってくれる存在だ、と思うのがデフォルトだろう。
そこへ来て、「弱いロボット」である。
・・・何それ!?
と、本屋の店頭で、この題名戦略(?)に見事に引っかかって買った。(笑)
著者は、情報の伝達や認知のあたりを研究しながら、いろいろウロウロされている方で、今は(笑)大学の教授とある。
話は、「雑談」から始まる。
あなた、うまく雑談できますか?。
意外と、会話のキモだったりもするんだよね。
でも、どこがキモなんだろうね。
えーっと、雑談って、プログラム出来るのかな。
・・・そもそも、雑談って、何だっけ?。
トーキングアイ(雑談をする目玉のプログラム)なんかを通して、解析じみた研究を続ける著者はしかし、何となく、行き詰って行ったようだ。
画面の中だけの仕事。
画面の目玉が、「助けてー」と叫んだところで、だから何?と。
VRやAIなんかのコンピューター工学が、一段落、つまりピークアウトしてきた、停滞期でもあった。
画面と現物では、コミュニケーション能力が違う。
(人間の側が、どう認識するのかが違う。)
例えば、簡単な、目玉のロボットである。
言葉はしゃべらない。
一言「むー」と、それだけを、適宜、返してくる。
機能はそれだけ。
・・・なのだが。
これを前にした人は、何となく、適当に、コミュニケーションを始める。
何?、オマエ。
何か言いたいの?
そうして、意思伝達(コミュニケーション)が始まる。
「誰か押してー」・・・?
しょうがねえなあ・・・(笑)
・・・ふと、思い出した。
赤ん坊は、よく泣くものだが、笑ったりもする。
何だかわからないが、笑うのだ。
「にへー」 (ニッコリ)
「ねへー」 (もっとニッコリ)
何がおかしいんだろうね、などと女房と話しながら、それでもキッチリつられて、赤ん坊と3人で、ひたすらヘラヘラ笑っているという。妙な光景が展開されるのだが。
この時、赤ん坊は、何を伝えていたのだろうか。
そして、ゴミ箱ロボットである。
自分でゴミは拾えない。
頼りなげにヨチヨチと歩き回り、人間にゴミを入れてもらうのを待つ。
小さな子供の反応が面白い。
なんだろうこれ、と興味深げに覗きこむ。
えい!と倒してみちゃったり。
でも、ゴミを入れてやると、お辞儀をする。
ぺこ。
そうか、ゴミをいれてほしいのか!。
弱いからこそ、伝わること、できること。
普段、上へ前へと煽られっぱなしの日常に居て、忘れている感覚ではなかろうか。
でも、本当は、昔から、わかっていたような気もするし、
例えば、人望がある爺ちゃん婆ちゃんなんかは、普通に体現していたような気もする・・・。
章の見出しからして、いろいろ示唆的に読める本だ。
「それは、エラーなのか?」
人の会話を、よくよくモニターしてみると、言い直すのを前提に話していることが結構あるそうだ。ロジカル思考では、単なる「エラー」なわけだが、ちゃんと、それなりの何かを伝達していると。
同じような見落としは、いつもの生活でも、結構ある気がする。
「理屈っぽい人ほど、クルマの教習で苦労する」
ハハ。私は理屈っぽいのでね。現に今、もう一つのバイクの連載で苦労してます。(笑)
スキーとか楽器とかでも、同じことが言えるのだろう。
「受身のアシストが言葉をひらく」
受身のアシスト、というだけで新鮮な気がする。
それがさらに、扉を開く働きをすると。
巷によくある、いけいけリーダーシップや、ぐるぐるPDCAなんかでは、絶対にできない仕事なんだろう。
そういえば、弱いロボットならぬ、 遅いバイク なんて世界もあって、どうも歳を取ったせいか、それに納得するだけじゃなく、居心地よくも感じている私にとって、読みどころの多い本だった。
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弱いロボット (シリーズ ケアをひらく)
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