読書ログ 地球を一周!オフロードひとり旅2014/08/31 04:57



図書館で、ふと目に止まって。借りてみた。

内容は題名そのもので、3年ほど世界中を走り回ったという、ツーリングの記録だ。

時代は、1990年代半ば。
著者は、30歳そこそこ。
イヤな会社を、カネがたまるまで我慢して。
その間に、バイクなどをコツコツと準備して。

基本、資金は持ち出し型で、当地で稼ぐことはしない。
予め目星をつけたルートを巡る方式、気分次第はなし。
走り切るまでは帰って来ないつもり。

どうも、「各大陸の南北端の走破」を目指しているようで、そういうルートを選んでいる。必然、南北方向に往復する感じが多く、ユーラシアの横断はあっさりとインド回りで、ロシア、モンゴル、中国の辺りはスルーしている。オーストラリアだけは、よほど気に入ったのか、縦横に走りこんでいる。

まだ著者も若くて、人生これからという時期だったし、日本は、まだバブルの残り香が漂う、浮かれ感もあったろう。あの頃特有の軽さでもって出かけて行って、でも無論、世界に出てしまえば、危ない目にもいろいろあって。幸運にも、死にそうな目にはさほど遭わずに、大体、想定される通りの、厳しさ、楽しさ、真新しさ、と。そんな感じだ。

著者は、「バイク好きが高じて」というタイプではなくて、「どこかに行く」方に目的があるようだ。初めから「走破」が主眼なので、装備はあまり凝っていない。当時の、ホンダの250ccのオフ車だが、大体はノーマルのまま、それでもエンジンを開けるような修理や整備を繰り返しながら、3年で20万kmを使い倒している。

なかなかマジメな青年で、奇をてらった行動はほとんどない。紛争地帯やドヤ街にあえて突っ込んだりはしないし、当地のオネエチャンに手を出したりもしない。(オニイチャンに熱烈に誘わて、本気でビビったりはしている。)そういう意味では、順当な旅程だ。

当時、日本の巷に流れる海外ツーリングの情報は、ヨーロッパやアメリカから、パリダカなんかのアフリカ系や、オーストラリアの砂漠系あたりにシフトしていた頃で、その感化があるのか、「地平線をどこまでも」路線でもって、ロマンを追い続けている。

バイクが主眼ではない、ちょっと浮かれ気味、という意味では、以前取り上げた この辺り と似た感じにも思う。

この頃は、まだ「グローバル化」という単語は一般的ではなかったと思うが、こんな感じで、「とにかく世界をぶらり旅」な日本人は結構居たようだ。特定のメンバーに、地球の裏側で「また」再会が、何度もあったと。

確かに、この当時の方が、国外に出るのに気負いがなかったようにも思う。
それって、日本はやっぱりグローバル化していない、ということなのか、国際情勢(特に近隣の)の変化が、物理的、気分的に、何らかのバリアを作っているということなのか、良く分からないのだが。どちらにしろ、当時も今も、違った意味で、あまり芳しくない。動いてはいるが、変わっていない、といったような。

この著者は、日本はいい国だ、と何回も繰り返している。それは、日々の暮らしさえままならない人々、最低限のインフラにも恵まれない人々の現実に触れて、自分の恵まれ加減を反対側から認識した、ということだろう。

確かに、我々を豊かに守ってくれている、有形無形の事象というのはたくさんある。家族、決まり、会社、国、仕組み、文化、習慣、設備、健康、そんなものだが。普段は「前提」になっているそれらが、いざ無くなってみると、その意味と価値が際立って感じられるものだ。

海外に行って、えらく感動して。
でも、日本に帰ってきてしまえば、やっぱり、いつもの日常に戻ってしまう。

その体験は、その後の彼の人生を動かすトリガーになるかも知れないのだが、大概の場合、実際にそこへ踏み出すかは、別の話だ。ツーリングで現地と触れ合うことと、実際にそこに留まって支援の手を差し伸べることでは、必要なエネルギーも覚悟も、桁が違う。

この著者も、世界一周の経験が、その後の人生に、何らポジティブに効いたのかどうかはわからない。著書も、これ一冊で終わっているようだし。

結局、若い頃の冒険譚を聞かされて、感想を一言、よかったね、とそんな読後感になってしまった。

この夏も、バイクや自転車のツーリングを、たくさん見かけた。
中には、 日本一周 ののぼりを掲げた人も見かけたが。

みんな、いい旅ができただろうか。


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