写真集 レトロスペクティヴ2 ― 2014/12/07 07:55
すっかり寒くなった。
こう寒いと、いつものようにバイクに乗るとて、やはり、億劫になる。
吸気温が低く、冷却効率もいいから、バイクは調子がいいんだが。
人間の身体の方が、思ったように動かない。(硬い。歳を取った。)
こりゃあもう、おとなしくしていた方がいいかな、と。
少し、後悔する。
そんなわけで、代わりの時間に、という訳ではないのだが。
寒くなると、よく、写真集を開く。
「写真集」とは、写真家の作品を本にして出版したものであります。
アイドルの水着姿なんかではございませんのでね。
一応。
(そっちを想起する人も多いようなので。実際、出版量は圧倒的だし。)
作品のニュアンスをちゃんと感じるのなら、本当は、
写真家によるプリントを、直に見に行くのが一番なのだが。
写真展なんて、なかなか行けるもんでもない。
本(印刷)になってしまうと、ニュアンスが違ってしまうこともあるし、
いくら大判のハードカバーとて、めくったページは凸に曲がって、
写真の見栄えを歪ませる。
だから、ゆっくりと、(ページを平らに)めくりながら、
しんしんと眺める。
夏に比べて、湿度が低めなのもいい。
(地域に依るだろうけど。)
静かだ。
前回 、少し触れた、白黒のニュアンス。
その、一つの形だろう。
中盤のスクエア。
絞ったクリアさと (撮影の対象をクリアに→「見つめる」ニュアンス)
長い露光時間 (捉える時間を多めに→印象が重なって厚みに)
その、使い分け。
幻想的でもあり、現実感がないようでもある一方で、
確かに、いつか、どこかで見たような風景。
著者(写真家)は、主に風景を撮っている人で、範囲は世界中、
日本を題材にした作品も少なくない。
出版物も結構出している。
中には、内容の割にはお値段がリーズナブルなものもあり、
本書も、その一つだ。
ずいぶん前に手に入れた。
(はじめに図書館で見て、自分で買おうと思い、再版を待った。)
今でも、ふっと思い出しては、本棚に指をかける。
(なぜか、寒くなると。)
Amazonはこちら
マイケル・ケンナ写真集 レトロスペクティヴ2
定期的に再販されるようなので、お高い古本にあせる必要はないかと。
私の買価は、定価の¥5800(税抜き)。
写真家のサイトはこちら
http://www.michaelkenna.net/
読書ログ エンジンのロマン ― 2014/12/21 09:53
業界(?)では有名な本だ。
当ブログでも、以前、軽く取り上げた気がする。
かつてエンジン技術者であった著者が、古今東西の内燃機関を取材し、その来し方を考察、解説した本だ。
エンジンという機械がこの世に生まれてこっち、それが、どんな人の、どんな考えに触れ、変化、変容、修正と進歩を経て、今の姿を成すに至ったか。筆者の目線で拾い、並べ、掘り下げ、つなげることで、一つのエンジン技術開発史、歴史としてのストーリーを成すに至っている。
技術者としての知識と経験をバックグラウンドにした洞察は、鋭さに満ちている。さらに、既に何回かの改版を経て、内容の拡充と訂正を重ねていて、深さと正確さの両方で、鋭さを増している。
この本の価値は、著者の知識の広さや、考察の深さだけではない。そもそも、「作り手」としての手つき、筆者の手に宿っている「感触」が、別世界、プロ級なのだ。
普段、我々が触れる技術情報、クルマやバイクのインプレなんかだが、その粗方は「評論家」が書いたものだ。自分で手を動かしたり、汚したりすることはほとんどなくて、他人が成した仕事を受け取って、その結果の上に乗っかって、言葉を云々する(だけの)人たち。
オレは違う、実際に身銭を切って自分の手を動かして、いろいろ経験を積んできた、だから人と違うことが書けるのだ、そう仰られる評論家もいらっしゃる。しかし、その設計製造を生業とし、一生の粗方の時間とエネルギーをそれに注ぎ込んできた人間(しかも、学生のころから準備と訓練を重ねてきた秀才)と並んでしまえば、レベルというより、もう世界そのものが違っている。
ただ残念なことに、そういう「本職の皆様」は、一般に、喋ったり伝えたりする所とは隔絶している場合も多くて(マル秘扱いだったりもする)、「職人が居る別世界」が、人目にじっくりさらされる機会というのは、ほとんどない。
この著者も、その例に漏れない。だから、最近よく見かける類の、やけに表面がツルツルした「伝えるスキル」なんかは、ほとんどない。しかし、ただ感じたこと、考えたことを、なるべく正確に、整理して伝えようと、朴訥に喋っている。それを裏から支える情念だけは、強く感じる文章だ。
数式やグラフの類も結構出てくるし、その意味をしっかりと汲み取るには、ある程度の訓練を要するから、スラスラ読める類の歴史小説ではない。ただ、それら技術的な細部をすっ飛ばしても、流れや大筋は追えるようになっているし、著者の人柄を感じさせる温かい手書きのものを含めた、イラストや図版、写真の類も充実していて、何となくレベルでも、著者の言わんとしていることの、少なくとも入り口は、覗けるようになっている。だから、決して専門書の類ではなくて、ただのアマチュア、エンジンだけでなく、クルマやバイクなんかの機械が好きな人が、その裏に流れるストーリーの一端に触れられる好著になっている。理科系だけでなく、文科系や、体育会系の皆様にも、十分に楽しんでいただける内容だ。さらに、機械の歴史に興味を持つ人間(私のような)には、ほぼ必読書と言える。
内燃機関のお話である。
その内部で燃焼を行い、エネルギーを動力として取り出す機械。
だから、そのお話の本質は、「どうやって、うまく燃やすか」に尽きる。
そのための潤滑、冷却、給排気であり、構造であり補機であり、力学であり、冶金である。
さらに、ゴールも様々だ。クルマや飛行機、戦車、潜水艦・・・、同じクルマでも、乗用車とトラックでは、また事情が違ってくる。
本書を通読すると、よくもまあ、これだけの人々が、これだけのことを考え、実行し、確かめて来たものだと、何度も感心することになる。
目論みや狙い。希望と、努力。
その連鎖。
しかし、物理の神は冷酷だ。どんなに優れたアイデアでも、そこに潜む穴やバグを必ず見つけては、容赦なく突いてくる。
そして、そうやって苦労した彼らの評価、そのエンジンが成功だったのかどうかというのは、「物理的、技術的な完成度」と、ビジネスや生産量のような「実務的な成果」の二つの、掛け算で決まる。(どちらか片方がゼロなら、答えもゼロだ。) そして厳しいことに、この二つはいつも、ほとんど関連を持たない。(技術的にに優れたエンジンが、評価されたり、売れたりするとは限らない。)
だから、失敗例も実に多い。
その幾多の恨みつらみを、教訓として活かすことで、内燃機関は、今に至った。
そうして、今や、扱い簡便で、気遣い無用な完成度。誰でも便利に使いまわすことができるようになった。
そんな、星の数ほどのエンジンの中で、私は、これと思える一台(ルマンね)に出会え、それを今も楽しめている。
そして、それ以外にも、何台かのエンジンを所有したり、稼動させてもいる。
本当に、ラッキーなことだと思う。
そんな感慨を持つ一方、改めて周囲を見回してみると、最近のエンジンというのは、一見、その進歩を助けたようでもあった電子化に、逆に殺されつつあるようにも見えていて。
他方で、世界的に、燃料を燃やし続けることの是非が云々され始めた横で、原発をカチ割って、ワケわかんなくなってしまった国に、住んでもいるわけで。
そんな風景が、渦巻くように描かれたこの頭で、今、エンジンを選び、使い、評価するというのはどういうことなのか、また別の意味で、少し、考え込んだ。
Amazonはこちら
エンジンのロマン―技術への限りない憧憬と挑戦
過去の類例エントリー
「名作・迷作エンジン図鑑」
バイクの本? 女ふたり原付で東日本縦断して水曜どうでしょう祭に行って来た! ― 2014/12/28 08:16
そういえば、最近、バイクの話を書いてないなあ、と思い。
(一瞬、白黒写真のサイトになりかけていたし。)
ネタ探しに、本屋を覗いてみた。
出張帰りの、都市部にある、ちょっと大きめの本屋。
雑誌から単行本まで、結構な冊数が並んでいた。
なのに、相変わらず、マトモに読む気がするものが、ほとんどない。
雑誌は、相変わらず、物欲ファンタジーに浸っているし、
著者だけは楽しそうな、恵まれたツーリング記とか、
できもしないんだが、詳細なメンテ集とか、
「バイクの歴史」てたって、単に昔のバイクのカタログ集かよオイ・・・
テレビをつけてはみたものの、チャンネルを一通りナメて、諦めて消す、みたいな手つきをもう一度。(笑)
そんな中で、唯一、読んでやろうかなと思ったのが本書だ。
えらく緩いマンガである。
「もう、これでもいいかあ・・・」という感じでもあったのだが。
意外と、バイクの楽しみ方のプリミティブな部分が書けているような気もして。
危ない危ない・・・
内容は、バイク初心者の若い(?)女性が二人、北海道で行われるイベントへの参加を目指し、スーパーカブで、埼玉から北に向かって本州を縦断するというものだ。
イベントというのは、副題にあるテレビ番組のファンが集う、お祭りだそうだ。
その番組だが、ご存知の方も多いと思うが、役者さん2人があちこちを旅する様子を、緩い映像で紹介するシリーズものだ。クルマで付いて回っているディレクターとのダラダラ喋りが、音声にずっと入り続けているのが特徴。初めは北海道の地方局から始まった番組だが、その後ブレークして全国に展開されて、とても濃いファンが、今でもたくさん居るらしい。(無論、本書の著者も含まれる。)
この番組の企画で、スーパーカブで旅して回る一連のシリーズがあった。(国内を一通り回った後、 ベトナム まで行っていた。) 最近でも、再放送でたまに見かける。本書は、そのマネをしながら、番組のイベント会場にたどり着こうと、そういう企画だ。(必ずしも本人たちの希望ではなく、このマンガのための企画のようだが。)
にしてもだ。
バイクは、全くの素人。
免許くらいはあったらしいが(クルマの)、原付の講習を受ける所から、話は始まる。
ヘルメットなどの基本的な装備は購入する。
(番組のマネなので、インカムは必須らしい。←後に雨で壊れかける。)
バイクとカッパはレンタルで済ませる。
バイクで行くのは往路のみ。(北海道で乗り捨て。)
新潟→秋田→八戸→苫小牧→札幌、9日間の旅。
えらく遠回りしているような気がするが、ルートも番組のコピーのようだ。
なにせド素人なので、いろいろ怖い目、危ない目に合いつつも、郊外に抜けて、交通量が減ってくれば、まあ何とかなるかな、という感じ。
よかったね。
弱いと見ると、嫌がらせをしてくるようなのは、必ず居るからね。
その辺りの展開は、まあ想像通りだし、基本、番組の内容の追体験が目的なので、ああ、あの時のシーンそのままよね~!のような「感動の場面」を挟みつつ、話が進む。
ただ、番組と違って、後ろからサポートしてくれるスタッフは居ないし、モノがバイクだから、雨が降れば濡れるし、寒ければ冷える。オンナ二人、艱難辛苦を耐えつつも、何とかブチかましながら、無事、目的地に達する。その様子は、プチ・アドベンチャーツーリングとも言えて、妙に楽しげにも見える。(カブのツーリング記としても、以前見た このあたり より、全然いい感じだ。)
無論、彼女らの目的の半分以上は、番組の生誕の地である北海道のTV局を訪ね、イベントに参加することなので、本の後半は、そっちの方にページが割かれている。
終盤に炸裂する「ランブータン」て何のことかと思ったが。本の初めに、ちゃんと紹介してあった。気になる方は、本書を参照されたい。(あれは、座り仕事人には付き物でね。厳しいやね。笑)
そんなわけで、絵はチャチいし話は単純だしで、しょーもないマンガではあるんだが。妙に気取った所もない分、 ムカッとくる こともない。
アハハと笑って気晴らしする。
その用途には、もってこいだ。
しかし、それにしてはちょっと高いので。
誰か、知り合いが持っていたら、借りるのがベストかな。
(この番組のファンが身近に居たら、狙い目かと。買わせても良し。笑)
Amazonはこちら
女ふたり原付で東日本縦断して水曜どうでしょう祭に行って来た!
最近のコメント