読書ログ 生業の歴史 ― 2016/05/08 08:06
著者は、「 忘れられた日本人 」で有名な宮本常一氏で、当ブログでも以前、別の著書を 取りあげた ことがある。
今回、著者名で検索したわけではなかったのだが、職業の歴史に関わる本を探していて、偶然に同氏の著書を、またもや引き当てた形になった。
私は、このブログで、特に趣味のバイクに関するメーカーの動向に意義を述べることが多いのだが、これはつまり、他人の仕事をけなしていることでもある。
他方、自分の仕事(ただの会社勤めだが)の方も、そろ先が見えていて、既に行き詰りを自覚しつつある。新たな展望を切り開く必要性を、痛感せざるをえない状況だ。
さらに、そろ子供達の就職事情も気になり始めるお年頃でもあり、就活だの転職だのの巷の情報を、「見つけたものは目を通す」程度の馴染み具合で接している。
そんな中で、職業とか仕事に対する、視点の画一性というか、柔軟性の無さが、少し気になっていた。
簡単に言うと、年功序列や既得権なんかが崩壊してきて大変デスネエてな「あおり型(笑)」の論調とか、シリコンバレーにスマートにスタートアップしてIoTとフィンテックが滑って転んだ、みたいな「知らないの?型(笑)」の書き口とか、何だか同じような内容が多いように感じていた。
そんな世情のせいかは知らないのだが、会社の若い人の話なんかを聞いていると、職業と言うのは単なる稼ぎ口のことで熟考に値しないが、稼げるヤツ即ち人間の格ナンダヨネなんかいう、少々短絡的な人生観を披露されて、ちょっと、おののいたりもしている。
職業とは、なんなのか。
昔は、どうだったのかなあ。
調べてみようかな、と思いたった。
そこはこの著者のこと、十分な見識に触れることが出来たと思う。
まあ、言われてしまえばそのままなのだが、古来、生業は、食うためにあった。庶民はずっと、食うや食わずのギリギリの所にいたのだ。
日本では、長い間、ほとんどの人間が、農業で食っていた。
(だから、長い間、日本の人口は、この狭い国土が食わせられる人数から増えなかった。)
海に囲まれているから、漁業も可能ではあるのだが、相当量の漁獲を得るには、ある程度の人数がまとまって船を出す必要がある。しかし、季節を通して常に魚が取れるとは限らないし、今と違って流通の手段も限られていたから、日々食うための生業とするのは難かしかった。
狩猟の方も似たようなもので、殖えるより獲る方が多ければ単純に明日の食い扶持がなくなるわけで、銃の普及などで効率が上がれば、明日の自分の首を絞めてしまうから、安定して食える人数は増えようがなかった。そのうちに、馬や牛を半ば放牧し殖やしながら、必要数を捕らえて売る形から発展して、牧畜に近い形態に移行したらしい。
農業は、日ごろ食らう食料そのものを直接、継続的に生産する生業だけに、それに携わる人々の最も重要な価値観として、自給自足があった、とある。食物を筆頭に、生活に必要なものの粗方を、自力で調達しうる能力が尊ばれたのだ。
何と、持ち家はその筆頭アイテムだったそうで、他人(親方とか)に建ててもらった家に住んでいる「使われる」身分の農民は「格下」であり、実際、そう扱われていたそうだ。
家を建てるといっても、木を切り出して木材にして、建前をして屋根を葺いて・・・という一連の作業は、その技を持った村人が集まって一気にやるので、コストも時間も今ほどはかからなかった。
ただ、技術水準としては「あり合わせ」のレベルに留まっていたのは致し方なく、後に現われる、その道の本職とは、比較すべくもなかったようだ。(だから、家の造りや出来はどれも似たり寄ったりで、贅沢は言えなかった。)
また、鉄(鉄鉱石と木材)や焼物(土と炉)のように、原材料とエネルギーの双方が高密度で必要なものは、その調達が可能な特定の地域で集中して生産され、商品として流通させる方法が取られていた。
流通が最も顕著に行われていた例が「塩」で、沿岸部から山間部へ、塩の流通に即した独特の流通網が発達していた、とある。
たとえ山深い山間部とはいえ、塩が無ければ生きていけない。まとまった集落には、まとまった需要があったから、そこまで塩を運ぶ商いが生業として成り立った。狩猟のように移動を常とする人々に対しては、常設の調達場所、「店」のようなものも成立していたようだ。
農村の生産能力は、地域の気候や土壌の質などに強く依存する。いくらがんばっても、ろくすっぽ食えない村というのも厳然としてあったし、それが「流通の担い手」に特化する場合もあったようだ。生産者が物を運んで売る場合、その間は生産が止まるので、端的に収入減となってしまう。他方で、土地が貧弱で充分な収入が見込めず、運搬と販売を請け負う方が稼ぎが得られる人々は、そちらを生業としていった。それが「行商」に発展する場合もあって、「商い」の一つの形態を成して行った。
また、天災や戦争などで、意図せず食えなくなった人々は、乞食をしながら流浪する身分に落ちざるを得なかった。それは、門付け(他人の家の門の前に立ち物を乞うこと)から、物を頂く見返りとしての「芸」、歌や踊りなど、を伴い始める。各地を点々とし、芸で稼ぐ人々が、各地の品々を運んでは売り歩く商売を始める例もあったようだ。
無論、そうポジティブに昇華する例ばかりではなくて、単純に社会からドロップアウトした挙句、適当に頭を剃って、しかし特定の宗派に属するわけではない「自称・にわか坊主」が、村はずれに住まい、庶民が「けがれ」として疎んでいた死人の処理を請け負うことで暮らすような形態もあった。その昔、まっとうな住職は葬式は扱わず、もっぱらこういった身分の低い人々が、その任に当たっていたのだそうだ。
当時の倫理では、定住して自給自足して「食えている」人が、没落して「食えない」人々への施しを拒否するのは「恥」だったそうで、つまり、門に立てば何らかの施しは得られることを、食えない人々は知っていた。だからこそ、(すまない、みっともないと内心では思いつつも)他人の門前に立ち続ける人はいて、蔑まれることを承知の上なら、何とか食うことは出来たらしい。
その後、次第に都市が成立しだす。
都市とは、土地をもたない「自活できない人」の集まりでもあったから、食料や生活必需品は、行商を初めとする外部との物流で賄わざるを得ない。中でも、「自活できている」農村との交流は不可欠だった。
面白い例として「糞尿」の取引が挙がっている。人口が密集する都市部は、人々の排泄物の処理が大きな問題だったが、それを農業の肥料として用いるやり方が確立して、農村が引き取ることで農業の生産効率を上げると同時に、都市部は衛生を保つことに成功するという、いわばウィン-ウィンの関係を打ち立てていた。
とはいえ、糞尿を集めて運ぶのは、厭われる仕事の最右翼でもあったから、夜のうちに集めて、早朝に船や牛引き荷車などで運ぶものだったらしい。(地方によっては、朝にこれら運搬車の列が延々と続く光景が、昭和初期まで見られたそうだ。)
そういった取引の「縁」は、例えば、農村の次男三男や娘たちが、取引のある商家に奉公に出るような縁にもつながったし、農家が商いに「投資」する場合もあったようだから、決して小さな縁ではなかったようだ。
他方で、「技術者」のあり方も、同じように変化していた。かつては豪族や貴族のお抱えとして、建物や装飾品などの専用品の製作に携わり、高い技術を誇っていた職人たちも、雇い主の没落と共に離散し、都市部で生業を営むに及び、かつての特殊技術は、市井に適応して生きながらえた。
当時の商いは、例えば、鍋が欲しいんだよね、と出入りの行商人に頼むと、じゃあ来年持ってきます。次の年、持ちこまれた鍋は少々大きいねえ、じゃあ来年は、もう少し小さなものをお持ちしましょう。というわけで、鍋ひとつ買うのに3年がかりと、そんなスピード感だったらしい。
行商も作り手も、同業者集団のような特殊な群れを作って、互いのテリトリーを決めて尊重し合っていたので、客が他に流れる心配は無かった。売り手は、馴染みの客だけを見ていればよかったから、逆に、一見客を騙して不良品を売りつけるようなことも少なくなかったらしい。
そういった、日本古来の、職業に関する様々な伝統の粗方は、今はもう廃れてしまったが、それらが打ち壊されたのは、ごく最近のことだ。
著者がこの本を書いたのは昭和40年代初頭だが、その頃にはまだ、上記のような古式ゆかしい職業が、まだ、まばらにだが見られたということだ。(私も、幼少のみぎりに見た覚えがある職業も、幾つかあった。)
著者も指摘しているが、職業そのものは潰えたものの、その根底に流れる職業観や価値観のようなものは、今に残るものが少なくないようだ。
マイホーム伝説は、かつて、持ち家の有無で、農家の社会的地位がハッキリ分かれていた頃の、名残かもしれない。
職業に貴賤は無いと、口では言われるが、歴史的に、日本は、職業に貴賎をつけ続けて来た。ただそれは、貴族や豪族や武士といった、雇い主の身分の威光をそのまま反映していただけだけだったり(役人とか御用職人とか)、汚い、または卑しいものとされていた職業(死人の処理や、糞尿の運搬など)を蔑む心が、そのまま反映された結果だったかもしれない。
大変な仕事、人が嫌がる仕事は、弱い立場の人々に回される確率が高い。そういう構造は今も変わらないから、辛い仕事を弱い人に押し付けて「安く使う」と同時に「蔑む」ようなことは、今でも、そこここで見られ続けているように思う。疎まれる仕事は賃金が低く暮らしが厳しく、そこから這い上がるチャンスもほとんどないから、同じレイヤーの人々に受け継がれてしまうという構造的な悪弊も、同様に受け継がれてしまっているように思う。
馴染みの客だけを視界に入れて、それ以外はまともに取りあわない偏狭な根性は、大企業だけではなく、小さな役所なんかも席巻している、セクショナリズムと同根かも知れない。
本書には、かつて、特殊な技術を持った集団(石組みで橋をかける職人など)が、技術の流出を恐れる為政者によって、工事の直後に、殺された例なども出てくる。
著者は、そのものズバリを書いてくれている
「日本は、技術は大切にするが、技術者は大切にしなかった。」
技術者は、昔から社会的地位が低かった。その証拠に、優れた技術によってもてはやされたのは、それを手がけた技術者ではなく、専ら、その「発注者」だったそうだ。インフラから仏像に至るまで、発注者の名前は残っていて今も賞賛されている一方で、実際に手を動かして、それを造り上げた職人の名が残っていることは稀だと。言われればその通りだ。ヨーロッパのバイオリンなどの楽器が、その製作者の名前で今でも通用していることを考えると、えらい違いだ。
現代でも、かつての日本の興隆を陰で支えた技術者を、リストラで叩き切って路頭に迷わせた挙句、海外のライバル会社に(食うために)転職したのを、轟々たる非難で責め上げるような例は、ここ最近は引きもなかったが。(営業秘密情報規正法のような枠組みで、今後も継続・固定化する動きもある。) 技術者を道具として扱うというのも、「古式ゆかしき日本の伝統」かもしれない。
また、今回は詳細には触れないが、男尊女卑や、人身売買の因習も根深かった。騙されて女衒に売られた娘なんて、その辺に「普通にいた」のだそうだ。
以上、概観すると、職業の論理なんて、昔から同じだったようだ。シーズとニーズが合えば勃興するが、飽きられたり市場がなくなれば没落する。その繰り返しであって、それ以上でも以下でもない。
職業でイッパツ当てられるかは、ほとんどが運だから、今もしこたま出版されている「上手く行った社長さんやCEOの経験的経営論」の類は、実際に読むと何だかパッとしないものが多いのだが、それは、そういう有難いお話のほとんどが、ただの「後付けの理屈」、都合のよい部分にスポットが当たった自慢話であって、広く人の役に立つ一般論ではないことを、庶民の我々でも判断できるからなのだろう。
本書によると、日本古来の大きな職業観の一つとして、ラクして(または何もせずに)儲けて、豪勢に暮らすのが「理想」だった、とある。それは、日本に限らず、世界に共通するお話、「人類一般が持つ性向」なのだろう。
思うのだが。
職業に貴賎はないが、優劣は厳然としてある。
その優劣は、その時々の応じて流転するもので、金品が国境を越えて激しく流動するようになった昨今、それは、国家レベルで起きる可能性も十分にある。(ふた昔前の日本、一昔前のBRICS、今の中国?USAも??)
職種自体の流転も激しくて、例えば、シリコンバレーあたりが奉られるのも、もうそろそろじゃなかろうか。
他方、生活必需である衣食住が食えるとは限らず、上手い汁を吸うのは上層部だけ、といった構造的な問題は、国境を越えて、強固に固定され続けているように見える。
その仕組みは、職業だけを見ていたのでは理解できず、経済や心理学など、他の理論も並行して見る必要があるのだろう。
ただやはり、既存の視点だけでは足りていない。
まだ誰も気付いていない、新規な視点が必要と思う。
個人的に、一番よくないのは、「自分が食えればよくて、他人が食えるかは気にしない」という、排他的な考え方じゃないかと思うのだが。人類の歴史上、その是正に言及したのは、宗教だけだ。
今、日本は、失業や下流化と、自然災害(地震)の波状攻撃のおかげで、人々の不安は増し、人心は荒れがちという、困難な状況にある。かつてのオウムのような宗教的な意味と、もっと前の大政翼賛(ナウい表現ではコンプライアンス?笑)の両方の意味で、日本が、変な方向に転ばずに済むよう、天を仰がずにおれない心境だ。
人類の知恵は、私個人は無論、社会全体が安心して食えるようになるには、まだまだ、遠そうだ。
これって、何となく、人類が、恒久的に生きながらえることができるのか、試されているような気もするんだが。
誰が、試しているんだろうか。
まさか、「神」じゃねえだろうな。(笑)
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生業の歴史 (双書・日本民衆史)
表題が少々違うが、これも同じものらしい
生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)
読書ログ 日本人と中国人 ― 2016/05/15 05:56
「なぜ、あの国とまともに付き合えないのか」という刺激的な副題からすると、近頃流行の中国をけなす本の類かと勘違いしそうだが。そうではない。ニクソン、角さんの時代の、日中国交正常化を機に書かれた、古い本だ。
売らんかなの後付のようなこの副題は、本の内容を伝えていない。
「あの国とまともに付き合ってこれなかった由来」程度が妥当かと思う。
日本にとって、「圧倒的な外国」といえば、黒船の前までは専ら中国で、誰が何といおうと、その影響下に長く置かれてきた。
中国との付き合いは長い。だが、お話し合いがまともにできたことはほとんど無い。この本の当時も、侮蔑していたはずの中国に、いきなり尻尾を振るという豹変を、勝手にしていた。
なぜ、そういうことが起きるのか。その原因として、日本が古来から培ってきた、ものの考え方の根本の辺りが関わっているだろうと、著者は、その系譜を、芋づる式に掘り返して見せる。
多少?の誤差を承知で、まるっと丸めてみると、
○ 文化的な象徴の元に感情的に隷属することで安心する気質。
(裏返すと、それに従わない者を感情的に糾弾することが許される、ことにもなる。)
○ しかし実利(カネ勘定)は別の原理で動いていたりするので、
その「頂の象徴」を挿げ替えるのには、あまり抵抗がないこと。
(象徴は、権威さえあれば機能するので、適当な理屈が新しく流布した程度で、誰も気付かないうちに変わっていたりする。)
○ 交渉相手(特に外国)のイメージを自分で勝手に作り上げ、
実物に投影してしまうこと。つまり、リアリティがないこと。
(その状態で、ものを考えたり言ったりするので、相手からは迷惑だったり、理解不能だったりで、「不思議な国・日本」となったりする。結局、お話にはならないのだが、それをまた感情的に相手のせいにしたりするので、収拾がつかない。)
といった所だろうか。
その根拠として、著者は、古い国内外の文献などを縦横に引用してくれるのだが、漢文はもとより、古文も読めないドロップアウト日本人である私には、その是非が分かろうはずも無く。
多分、正統派の歴史解釈からは相当離れている、だけではなく、むしろ挑発する語気で書かれているらしき雰囲気は読み取れた。
上記の箇条書きを見ても、確かに自分もそういう所あるよなあ、と納得できる面は多かったし、「だから日本は外から見ると理解されない」(理解されない原因は日本側にある)という意見は、一考に値するように思われた。
全く、この著者の博識には驚かされるし、ユダヤ的なモノサシという、日本人には珍しい武器を使いこなす手腕は大したものだと思うのだが、悪意に解釈してしまうと、上記にもある「感情的な隷属先」をユダヤに挿げ替えた日本人、とも言えるかもしれないので。両刃の剣かなとも思った。
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日本人と中国人―なぜ、あの国とまともに付き合えないのか (Non select)
写真集 木村伊兵衛の昭和 ― 2016/05/21 13:19
久しぶりに、図書館で写真集を借りたので、一応Logっておく。
木村御大の写真集なので、無論、写真はいいのだが。版が小さく、焼きがあまり良くないものも。
キャプションや、間に挟まる文章が、またあまりよくなかった。
やはり、「木村伊兵衛」を見たいのであれば、大判の写真集を、ゆっくり見るのがいい。
そうではなくて、裸の昭和を見たいのであれば、別の本の方がいいだろう。
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木村伊兵衛の昭和 (ちくまライブラリー (39))
写真集 宮本常一が撮った昭和の情景 ― 2016/05/21 13:21
こちらも一応ログだけしておく。
私が借りて見たのは、上巻だけだ。
当時の普段着の昭和が見られる、貴重な記録ではある。
ただ、写真集ではなく、記録である。
そう思って見た方がいいだろう。
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宮本常一が撮った昭和の情景 上巻
宮本常一が撮った昭和の情景 下巻
読書ログ ローマの平日 イタリアの休日 ― 2016/05/21 13:27
旦那のイタリア転勤について行って、イタリアの薫陶を受けることになった奥様の手記である。
文章とイラスト、写真が組み合わされた、軽い読み物だ。
・ クスっ…と笑かすイラストは、著者自らが。
・ オヤッ?と唸らす写真は、プロのカメラマンによる。
共に、なかなかのレベルだ。
「イタリア派暦」が既に長いワタクシと致しましては、知らない内容は、ほとんど無かったのだが。でも、「そうなんだよ~ウンウンン」なんか言いながら、何となく最後まで読んでしまった。
普通、この手の本は、飽きる or 読む気にならない「箸棒」と、真新しくないのに何だか読んじゃう、のどちらかに二分されるものなのだが。本書は後者だった。
それは多分、日本の文化とは ねじれの位置 にあるイタリア文化を、物珍しがるだけでなく、本気で楽しまんという境地に至れたからだろう。
イタリア人は、楽しむことが人生の目的だと思っていて、それに、自らが持つ全エネルギーを、常にかけ続けることを厭わない。いちいち気合が違うのである。
対して日本人は、楽しむことは何となく罪だと思っていて、どうしても楽しみたい時には、楽しんでもいい理由を探したり、他人(世間様)にご説明せずにおけないという、悲しい習性を持っているようだ。
この一線を越えて、イタリアの何たるかに触れ、楽しむことができる日本人は、限られている。
オレも同じ側の人間だと思われる貴兄が、軽い読み物に触れたくなった時には、お勧めの一冊だ。
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ローマの平日 イタリアの休日
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