読書ログ 十字軍物語 3 ― 2016/09/04 10:05
前回取り上げてから 5年も経っていて、自分でも驚くのだが。
やっと全巻(3巻だけだが)に目を通した。
ちゃんと出た当時に買ってはいて、でも一度読むのが途切れると、再び手がつくまで本棚の肥やしとなるという、よくあるパターンにて…。
でも本書の場合、他にも「理由」・・・いや、「言い訳」がある。(笑)
まず、本書は、後になるほどボリュームが増える。最後の3巻目は500ページというブ厚い本で、寝床で仰向けで読むと、腕が疲れるほどだ。
次に、「つまらない」。これは少し語弊があるが、いつもの塩野節、「いい男」デキる男の目線から、時代を動かす爽快感を、主人公と一体になって読ませる感じとは、少し違っている。1巻目には、「デキる男」がいたので、多少それに近かったのだが、それ以降は、登場人物が小粒になることもあり、もっぱら、著者の目線での時代の流れが描かれる。
無論、それがつまらないわけではないのだが、やはり、時代の気分が反映されて、「あらあら、ダメね」的な記述になってくる。勢い、従前の高揚感とはかけ離れたものとなってしまう。(どちらかというと、こちらの印象に近くなる。)
ま要するに、話が長くて暗いから、読むのに時間がかかりますよねと、そういうわけだ。
ただ、読後感は悪くなくて、期待通り、いや予想以上に、宗教について、ちゃんと書かれていた。これは収穫だった。(以前から、塩野先生が書いた宗教には興味があったのだ。)
十字軍の話なので、登場人物は、バチカンを初めとするキリスト教(原理主義?)をメインに、敵側であるイスラム教徒(今とさして変らない印象)が配置される。時代(時間)に従い世代は変り、優劣は行き来し、でも状況は一進一退で、さして変わらなかったりする。
どうしてか。
神が望んでいるはずなのに。
(↑登場人物の粗方は、本心でそう思っていたりする。)
それを横から描くのは、神を絶対視しない、純粋な現実主義でものを言うのに罪悪感がかけらも無い東洋のオバサマだから、それはもう、にべもない。(笑)
血を流せ!異教徒を殲滅せよ!!と金切り声を上げる聖職者が成しえたことは、ほとんどなかった。結局は、法王庁の精神的な圧力などをものともせずに、現実を冷静に見つめて対処したゴリゴリのリアリストと、私欲の実現の最大化のために優秀な能力を集中しえた、吐き気のするような利己主義者の両極端が、世の中をドライブしていた。
それは、何で神(を信じている人)ってそうなの?と素朴な疑問を抱き続ける、極東の島国のオッサン(私)にとっては、妙な説得力と納得感があった。
うん、頑張って読んだ甲斐があったな、と。(笑)
しかし思うのは、これ、西欧の識者(十字軍や聖戦といった辺りに当事者意識がある皆様、つまり、「同罪」なんだが認めたくない人々)には、どんな評価になるんだろうか。どなたか、ご存知でしたら教えて欲しい。
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十字軍物語〈1〉
十字軍物語〈2〉
十字軍物語〈3〉
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