永遠の翼 F-4ファントム ― 2020/03/20 09:53
飛行機の本である。
何でも、空自のファントムが引退間際なのだそうで。
最後のF4部隊を取材などしつつ、ノスタルジックにF4を語った本だ。
まあ、お話としては、半分予想した通り、身に覚えがある感じで。
いわく、
― デジタル化が進む近年の軍用機に比べて、F4は最後のアナログ機だった (レーダーなどの末端の装備はデジタル化していたが、操縦の手触りなどは刷新のしようがない由) ―
― 整基礎から応用まで、学ぶのにもってこいの機体だった ―
― 今、我々が飛行機乗りとしてやっていられるのは、こいつで学んだ基礎が生きているからだ ―
― 整備にも操縦にもひと手間がかかる面倒な機体だが、その分、調子が悪ければすぐにわかるし、飛ばしていても限界を如実に教えてくれる。慣れてしまうとかわいい機体、まるで生き物のように感じることも ―
などなど。
(古いGuzzi 乗りにとって、聞き覚え?身に覚え?があることばかりだ。)
複座ゆえの利点も結構あって、目も手も4つあるから、近接戦闘は、実は強かった。同じ複座&双発のF-14は、鈍重で旋回が重く、実は戦闘はムチャ弱かった。その点、F4は良くできていた。やり方次第で、模擬戦でF-15にも勝てた。
日常整備は整備部隊の仕事だが、オーバーホール(車検?)はIHIや三菱重工の出番となる。「今回のアフターバーナーチェックで、J79エンジンの整備は最後です。もうこれが見れないのは寂しい・・・」といったコメントも。
仕事とはいえ、手間がかかる分、うまく行った時の達成感は高いし、愛着もわく。昭和の古い仕事論かもしれないが、幸せな時代だったようにも感じられる。
「今の飛行機は、あっち飛べ、そこ撃て、と機械に指示される。」
「これから先はどうなるのか・・・まあスマホの時代だし、仕方ないのかな・・・。」
なのだそうだ。
一つ、意外&嬉しかったのは、RF-4Eを、結構な分量を割いて書いてくれたことだ。
RF-4は、F-4の機首のバルカン砲を外し、そこに光学カメラを仕込んだ偵察機だ。
個人的に、あの顎の下にぶら下がった不細工な二重顎がなくなって、細面になったシルエットが好きで。まだ高校生の現役モデラーだった頃、精魂こめて一機作って、惚れ惚れした記憶がある。
その機体が、今まだ飛んでいるというのも驚きなのだが、本書には、戦闘機と偵察機の運用の違いや、偵察「データ」の運用も記されていて、興味深かった。
例えば、戦闘機は、戦うことが目的だから、目的地までは直線的に向かうし、帰ってくることは二の次だったりする。(ヤバイとなれば、とっととベイルアウトする。)
しかし、偵察機は、敵のレーダーに引っかからないよう低空を縫うように飛ぶし、データ(フィルム!)を持ち帰らねばならないので、帰投までがミッションとなる。常に、帰り着く所までを作戦として組み立て、かつ完遂せねばならない。撃ち落されても埒が明かないので、常に自衛用のミサイルを抱いて飛んでいるというのも知らなかった。
戦闘機と違って、前席が操縦者、後席が撮影者。
カメラは固定だから、機体の向きを振ることで、撮影対象にカメラを向ける。
事前の打ち合わせもあるのだが、そこは阿吽の呼吸。
「あっ、ダメだった、もう一回!」も、ごくたまに。
持ち帰ったフィルムはすぐに現像し、その後はさすがにデジタルスキャンして、つなげて加工して「見るためのデータ」に加工した後、「見た結果を情報化する」部隊に回される。(インテリジェンス専門部署が別にある。)
それは、懐かしくも素晴らしい連携プレイではあるのだが。
時代からは、もう2周遅れだ。
今時、偵察機は無人だったりするし、データも現地から電送だ。
このRF-4、先の福島の地震の時は、寝る暇もないほどのフル稼働で、線量計を抱きながら「コイツが鳴ったら即離脱しろ」状態で、メルトダウン後の原発上空を飛んだりもしたそうだ。状況把握に、大きな役割を果たしたのだと。
実益上、かなり重要な任務のようにも思われるのだが、RF-4E引退後の偵察任務の運用は「未定」なのだそうだ。
戦闘機の方に戻って。
なんでも、日本のF4-EJは海外のマニアに人気があるそうで、日本仕様に改造されたF4は固有の存在で珍しく、実際に戦闘に使われたことのない(人を殺めていない)クリーンな機体で、いつも大切に使われていて、本当にキレイだと。こういう「戦闘機」は、世界的にも珍しいのだそうだ。
海外で運用されているF4もまだあるのだが、どれもコキ使われた古びた機体で、こんなに「エキゾチックな」機体はない、と。
うーむ。
私のルマンも、イタリアに持ってったら「キレイでエキゾチック」と、高値で売れたりしないかな、と。(笑)
もう一つ余談だが、かつての漫画「ファントム無頼」の読者が、現役ファントムライダーにも結構いらして。これを読んでファントム乗りになった、という人も少なくなかったようだ。漫画の影響は、結構大きかったらしい。(個人的には、エリ8の悲惨さの方が印象深いのだが。)
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