ある世捨て人の物語 : 誰にも知られず森で27年間暮らした男 ― 2020/05/03 08:42
アメリカで実際にあった話のルポだ。
もともと内気で人と接するのが苦手な男が、若くして就いた初めの仕事をブッチして、そのまま放浪。最後に、地方のキャンプ地近くの、茂みの中に住み着いた。
と言っても、自活していたわけではなく、何のことはない、周囲の人家から物を失敬して暮らしていただけなのだが。地域では謎の泥棒と、ずいぶん有名になっていたのだが、何と、27年間も捕まらなかった。
それもそのはず、彼は、人目につかないこと、足跡を残さないことに、全精力を傾けていた。「そこまでして、彼は一人で居たかったのだ。」
それが、ついに捕まって、その人となりや、どうしてそうなったかの由来、その後どうなって行ったのかを、著者が、興味の向くまま、多少しつっこく、追い求めた、その結果がまとまっている。
読後感としては、「まあ、ヘンな奴もいるよね・・・(苦笑)」。
本の題名から、stand alone に生きていきたいと切望するあなたが、何か参考にでもと期待するかもしれないが。残念ながら、その役には、ほとんど立たないだろう。
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ある世捨て人の物語: 誰にも知られず森で27年間暮らした男
時間は存在しない ― 2020/05/09 06:38
図書館で題名借りした。(しばらく順番を待った。)
少し期待したんだが、それほどではなかった。
要約すると、「時間は『前提』でしかない」ことを、主に物理学の目線でもって解説した本だ。時間というのは(物理学的には)本来こう考えるもので、それは何世紀の何という学者が行っていたのと同じで…云々。
話が薄いし、よく飛ぶしで、付き合っていられないので飛ばし読みしたのだが、主題は大きく二つだった気がする。
(1) 人間の感覚は、相対的である。
(2) 人間は、現実のほんの一部しか認識できない。
まず(1)だが、人間が何かの尺度、暑い寒い、長い短いなど全てだが、それを語るとき、必ず「何に比べて」という枕詞が隠れている。絶えず、何かと比較して、大小を論じている。
などと言うと、オレの感覚は絶対的だ!などと怒る人が必ず居るのだが。俺の方が正しい!と言った瞬間に、お前に比べれば、という比較論を、図らずも露呈するに至ったりする。
人間は、絶対的な大小を論じることができない。それまでに触れたものや聞いたもの、既存のモノサシなどとの比較でしか、物事を捉えられない。
次に(2)だが。一番わかりやすい(?)例が、高校の数学で出てくる「i」だ。
i = √-1
二回かけて、-1になる数。
現実にはあり得ない。だが、これを仮定することで、解ける問題がしこたまある。
いい例が「交流」だ。普段使っているコンセントの、電圧や電流。あれは、実に独特な計算をするもので、そこには必ず i が出てくる。
目の前で流れている電流 I、そこにはないはずの「あの世の電流」 i I を仮定して初めて、実物と合う答えが得られる。
どうやら、「時間」も同じらしい。
それが「相対的な差」であること、「あの世の裏側」を仮定して初めて、得心できるもの。
そんなもの、珍しくもないよなあ。
と思っている私には、あまり得るものがない読書だった。
普段から、自分の感覚しか頭にない人には、珍しかったりするのかな。
(分からないだけ、のような気もするけど。)
内容が散漫なので、長年の疑問とか、特定の興味分野など、読みたい所だけを便利に使うような読み方には、適しているかもしれない。(労力 vs 得るもの、という意味でのコスパは、悪いだろうけど。)
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時間は存在しない
ゲームライフ ― 2020/05/16 06:59
日々、ビデオゲームに没入している、宅の息子などを見るにつけ。
ゲームって、何なんだろうなあと。
どんな意味があるのかと。
ずっと、考えているのだが。
この本を、どこかの書評で見かけて。
何か教えてくれそうな気がして。期待したんだが。
違った。
要は私小説で、小さい頃から触れて来たゲームを振り返り、ああ今のこの感覚はあのゲームのあの場面と同じだ、このやり方はあのゲームの何面から学んだ…のような話が、つらつらと綴ってある。著者は外国人のせいか、門外漢の私には知らないゲームが多かった。
これはつまり、昔はこうだったよなあ~というオジサンの昔語り、その若い人バージョンだ。同世代の、ある程度は趣向が共通する、限られた相手にしか通じない。
精一杯、一般化して考えても、ゲームで育つというのは、こういう感性の成り立ちを経るものなのだろうなと。
けど、それは、例えば、プラモとテレビで育ってきた私なんかの成り立ちと、構造としては、実は大して変わらんのだろうなと。
そんなわけで、今のゲーム、電車の中で老いも若きもスマホに没入しているあれの、成り立ちや、その何たるかを、教えてくれるものでは全くなく。そこは、ただの徒労だった。
ゲームに没入するマインドを遠くに振り返る感覚に興味がある向きには、面白い本かもしれない。
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ゲームライフ
声優という生き方 ― 2020/05/23 05:30
あのドラゴンボールのフリーザ様役の声優さんの手記だ。
何かの拍子に図書館の予約リストに放り込んで忘れていたのだが、順番が来たので借りて読んだ。
著者は、私より少し上の世代で、つまり、声優という職業の枠が、まだ曖昧だった頃からの叩き上げだ。そのせいもあってか、成り立ちは波乱万丈、経験はぶ厚くて、説得力がある。
私は、歳も歳だし最近のアニメには詳しくない。子供たちが見ているのを、後ろからたまに眺めるだけだが、すましたイケメンと、童顔に巨乳の女の子ばかりで、どれもコピペにしか見えないでいる。
だから、著者の言う、最近の声優界の事情がちゃんと理解できたのか怪しいのだが、最近の会社の新人の境遇も似たようなものなので、その辺の、身近な脈絡に沿わせて読んだ。
「少し先輩」の言うことでもあり、個人的には、大いに共感することが多かった。だが、若人たちの趣向とは、少しずれているのかも知れないな、と想像された。背景も環境も違うから、受け取り方も欲するものも違うのだ。
ただ、「表現の価値、その経緯と、これから」のような大きな文脈でみれば、参考にできることが沢山あった。仕事や育成、コミュニケーションや表現といった辺りに、漠然とした不安や疑問、課題を感じている人には、役に立つ内容と思う。
横で見ていたウチの娘が読みたいというので、借りた本は返して、自分で買った。
帯には、不適な笑顔のフリーザ様が大書きされていて、レジに出すのに、ちょっと気が引けた。(笑)
フリーザ様は、今も娘の部屋で、ずっと笑っている。
(取られた・・・)
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声優という生き方
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