暴力と不平等の人類史 ― 2020/08/22 06:47
とにかくブ厚い本だ。本文580頁に文献リスト140頁。普通だったら上下巻に分けるだろう、という分量。
内容は、不平等や格差について歴史的に研究したもので、いろいろな要因、例えば、戦争、革命、改革、成長、技能、疫病、最近では民主主義やグローバリゼーションなどが、不平等にどう影響してきたか、データを解析した結果を、章立てにして詳述している。終盤は、不平等の今後の見通しについて幾つかの可能性をまとめ、少々の提言やモデリングを交えて終わっている。結論はない。研究なので、終わりはないのだ。
この手の本の通例として、「わかったことは全部書く」という姿勢で書かれていて(だからこれだけの量になる)、詳細、または煩雑な印象だ。情報は全て開示し、読者の判断に委ねるのが「親切だ」という方法論だが、全てを一望したい、または調べたい対象が決まっている人には便利な一方、結論とその理由だけを手っ取り早く欲しい人には向かない。
内容の密度は薄いので、私は早々に熟読は諦め、概要の把握に留めた。結果、あくまで個人的な曲解による感想だが、人間が良く書けているように感じた。
人間は、群れを作る動物だ。そこには、上下を含む構造があり、その間を、何か(カネ、モノ、情報など)が、たえず流動している。その構造自体も安定しておらず、構造が変わる度に、流れの方も様子を変える。ただ、大雑把に見た場合、何かが吸い上げられる動き、頂点を目指して、各々が争う、そういうコンスタントな作法があって、それが、構造の骨組みとなるコンセプト(概念)を成している。構造が変化しても、そこだけは崩れない。それは多分、人間の本性を、ある程度表している。
ずいぶん前にも似たようなことを 書いた のだが、富、端的にカネというのは、エントロピーに従わない。フリーに放った時、そいつは、平均化せず、逆に、集約する。多くある所に、勝手に集まる。人間が作った仕組みなので、自然法則には従わない。むしろ、人間によく似た、不条理な動きをする。
本書によると、不平等を作るものは、余剰だそうだ。それは、多くある所に、勝手に集約する。不平等は、自動的に拡大する。体制が崩壊したり、権力者が入れ替わって、集約先が変われば富も動くし、酷い戦争や、疫病でたくさん死んだりすれば、余剰がなくなるので平準化する。単純に、仕組みとして、そうなっている。
つまり、人間は、本質的に不平等なのだ。
何となく、そう思った。
繰り返すが、本書にそう書いてある訳ではなく、私が勝手にそう思っただけである。
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暴力と不平等の人類史: 戦争・革命・崩壊・疫病
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