バイクの上半分 52013/08/18 10:12



バイクの乗り方を既に学んだ我々は、普段、バイクをただ「乗れるもの」として、当たり前のように乗っている。

だが、それがどうしてバランスし、転ばずに走るのか、その原理や法則を、ちゃんと理解しているわけではない。

どころか、むしろ、ろくすっぽ知らない。

知らないのにやれているという、実に不思議な世界なのだが。

一つは、モノ(バイク)の方が、そのように(経験で乗れるように)考えられて作られている。
この辺は、メーカーの技術者の努力と歴史に感謝カンシャなワケなのだが。

もう一つは、人間の方が、バイクに合わせている。
訓練と経験の積み重ねによる職人的な勘で、この難局に対処している。
(もし、バイクの特性が、その守備範囲に漏れるようなら、乗れる代物ではない、という結論になる。)

人間が、楽しくバイクに乗れるには、この二つが、幸せに出会わないといけない。
その、「あるべき出会いの形」が、いいバイクとは何か、その根本的な所を、見せてくれはしまいか?。

と、そこまで行くには、まだ少し距離がある。
もうしばらく、外堀を埋める作業を続ける。
(ちょっとかったるいが。)

上述のように、バイクに乗れる我々は、バイクが何だか分かっていない。だから、バイクがどんなものなのかを検分するために、著者は、ある思考実験を提案している。現実とは全く別の状況(環境)を想定し、違う視点(アスペクト)を設定することで、その実態を明らかにしようというわけだ。

設定は、
 ・自転車もバイクもない世界で
 ・乗り物のメーカーで、次に投入する新製品を検討する部署で
 ・ある発明家が持ち込んだ、「バイク」を検討する

まず、のっけから、面食らってしまう。
タイヤが4つのもの(クルマ)、横に2つのもの(リヤカーやセグウェイみたいなの)は見たことがある。しかし、前後に2つ並ぶもの(single trackと言うらしい、軌跡が一本て意味かな)は、初めてだ。

それ、パタッと横に転んじゃうじゃんかよ。

いえ、技術的には、各種の慣性やセルフステア、ジャイロ効果などにより、これが直立して進むことができるという発明者の主張は、物理的に筋が通っています。
コーナーリングも可能ですが、カーブの曲率とスピードから一意に決まるバンク角を、正確に再現する必要があります。

操作はかなりややこしくて、アクセルは右手、クラッチは左手で、これは左足のギアとも連携する必要があります。ブレーキは右手と右足に分かれています。両手は、さらに、ハンドルバーを回転操作も行う必要があり、ウインカーやらホーンなど電装品の操作も加わります。しかし、操作の根本は車体の「バランス」にあるので、総合的な操作を連携して行えるようになるまで、相当なトレーニングが必要です。トレーニングには長い時間がかかりますが、習熟するまで、乗り手は、危険な状態に置かれ続けるでしょう。

エンジンは軽自動車くらいで、スピードはスポーツカー並み。加速はすごくて、レーシングカー並み。車重は200kgちょい位。(リッターバイクを想定。)

これ、誰が、何のために乗るだろう?。
「市場に、ニーズがあるとは考えられません。」

・・・・・まあ、多少、設定を変えてみた所で、同じような結論になるだろう。

何も知らない人がまっとうに考える分には、我々がバイクに乗れる機会は、永遠に来ないということだ。

ライディングがどれだけエキサイティングなのか、乗ったことがない連中に分からないんだ、と仰るかも知れない。

では、ライディングの何が面白いんですかーと問うと、皆して、違うことをしゃべり始めたりするわけだが。(笑)

とにかく、バイクが、どれだけ奇特な乗り物か、それに乗るのに、どれだけの労力をかけているのか、改めて、並べてみる機会にはなったと思う。

我々バイク乗りは、普通に考えたら、うんざりするような面倒な仕事を、無意識に、どころか、「喜んで」 こなしている、というわけだ。


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