バイクの上半分 192013/12/15 08:19



今回は、バイクに限らず、道具一般の話になる。

先週、道具が身体に統合されて、特別な機能をもたらす例について触れた。

「身体に統合された道具」のような言い方をすると、人工臓器のようなイメージを持たれるかも知れない。実際、それと何が違うのか、境目はどこかと問われると、そう簡単ではないようだ。手足や胃や腸の方を、「自然に備わった道具」だと言えなくもないと。

実際、鳥のくちばしは、形に特徴があって虫や魚を取り易いとか、そういう特別な機能を持つ場合があるし、それでもちゃんと、毛づくろいをしたり鳴き声を出したりといった、普通の機能を妨げるものではない。良くできた道具なのだ。

そういった身体の一部を、または外付けの道具を身体の一部として、統合、インテグレーション、同一化して使う動作。その形や深度(レベル)は、様々な形、あらゆる場所で起こっている。

魚や鳥の群れが、一斉に、美しく方向転換することがあるが、よくよく観察しても、誰に従うわけでもなく、外側の刺激に反応している様子もなく(フィードバック反応ではない)、まるで初めから知っていたかのように、全体として一体の動きを見せることがある。まるで、自分の側が取り込まれたような統合の仕方だ。

そして、それは、人間のチームプレイが見せる一体感、例えば、レガッタで多数の選手が一斉に反応・対処する様子などと、同じようにも見える。

統合し、される。
動物は、そういう能力を持っているらしい。

ただ、人間は、それを「物」で行う。
床に置けば、すぐ人間との結合が外れる、デタッチャブルな形で統合を行える。

実際、くちばしは、取り外しが効かない。
改良するにしても、何世代もかかる。

道具なら、簡単だ。
特定の機能を具現化するための改良を、(世代に比べれば)一瞬で施せる。

そうして、それを「手足のように」使うことができる。
簡単な工具のレベルから、上で挙げたレガッタのボートやオールの例、さらに、深度も数も複雑な、オーケストラや楽器など、様々な例が見られる。

もっと直接的なインテグレーション、例えば義手・義足などでは、使っている本人も、本当の腕や足のように感じることもあるようだ。さらに、機能として、デフォルトの生の手足より、高機能を発揮する場合もある。

その機能が、複雑・多様化するにつれ、その製作に携わる人間も増加する。互いに分散・分離した技能が複雑に絡まりあい、一つの道具に結実していく仕組み(チェーン)ができていく。そうやって、技術という知能分野が形成されると共に、製品のマーケットとして一種の公共性を帯びるに至る。(我々は、自分のバイクを誰が造って、どう運ばれてきたのか知らないが、乗ることはできている。)

そうやって、人間は道具を作り、変え、発展させて、縦横に使いこなすことで、環境に打ち勝ち、他の動物との差別化、優位を打ち立ててきた。

良いことばかりではない。
悪いこともある。

大概の道具は、初めにいちいち使い方を学ばねばならない。
誤用すれば、危険にもなりうる。
盗まれて敵の手に渡れば、危険の矛先が、自分に向くこともある。
良いことがあれば、悪いこと(コスト)も、必ずあるものなのだ。

だから、使い終わった道具は、手から離して、片付ける。
子供がよく、お片づけしなさい、と怒られるのは、そういう背景があると。

人間と道具のかかわりは、長くて深い。
むしろ、特別な意味合いでもって語られてきたと言える。

地中でも朽ちずに残る材質(骨や石とか)で作られた道具が、人骨と共に発掘されることが多いことなどから、人間を他の動物と区別するための(キリスト教的な?)差別化要因の一つとして、道具が使われてきたのだ。

「道具を使うのが人間の証だ」というわけだが、しかし、ちょっと調べただけで、人間以外の動物が、器用に道具を使う例が多数見つかったと。猿や鳥だけでなく、虫(ハチとか)でさえ道具を使うことがある。かなり独創的な工夫を凝らした道具を作り出したり、使いこなしたりといった事例も明らかになった。

さて、それでは、人間が作る道具だけに見られる特徴とは何か?。
半ばムリヤリに考えたのが、芸術性であると。
より美しくデコレーションを施した道具。
これは、人間しか作らないのだと。

そうなるとだ。
確かに、バイクも、そのご多分に漏れないのかもしれない。(笑)


Amazonはこちら
The Upper Half of the Motorcycle: On the Unity of Rider and Machine

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://mcbooks.asablo.jp/blog/2013/12/15/7109430/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。