読書ログ 「意識」を語る ― 2013/10/26 05:35
各界の研究者や科学者に、「意識」という題目でインタビューを行った様子を、そのまま口述筆記した本の翻訳だ。取り上げられているのは16人。原著ではもっと居たらしいが、数人、端折られている。
著者は、同じような質問で、相手の意図を掘り返すよう、上手にインタビューしている。知識的なバックグラウンドも豊富で、話の引き出し方や、話がそれた時の戻し方も上手だ。
ただ、やはり内容は「相手がしゃべったことの羅列」なので、まとまりがあまりない。この手の科学読み物の場合、多くは、著者は伝えんとする明確な内容をもっていて、それに沿って情報が配置されるものだが、そういう「主張」は読み取りにくい。
携わる分野を異にする16人の考え方がすれ違うのは当たり前としても、それぞれのインタビューで、話し手が、考えをまとめてから話してくれるとは限らない。文章も口述筆記そのままなので、長い割に内容が薄くて読みにくい。話し手の本意を読み解くのに手間がかかる一方で、それを上下2段組の300ページを越えるボリュームで繰り返し、16人分の意図を汲み取って、どこがどう違って「面白い」のかを考える。かなりの労力だ。例え、それが一つ二つわかったとしても、大した内容じゃなかったりでガッカリすることも。(彼はこう、私はこっち、お互いにこれからだね。終り。)
著者が言うように、これは「ラジオ」(読むものではなく聞くもの)なのだろう。インタビューをしている方としては、いろんな意見に触れられて楽しかったとのことだが、読者がそれを共感できるのかは微妙そうに思う。
訳も良くない。こなれた訳ではあるのだが、何となく、自己満足的な言葉の羅列のようで、読んでもらおう、人に何かを伝えようという意図があまり感じられない。結果、話し言葉ならではの臨場感を出すことと、伝える内容に正確を期すことの、両方に失敗していると思う。とにかく読みにくい本だったが、それは、原著だけのせいではないのだろう。
昔、自分が書いたメモが出てきて、思い出しながら読んだら面白かった、でもそれ、他人が読んでもわかりませんわね、とそんな感じ。
と言えば伝わるだろうか。
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「意識」を語る
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