読書ログ 「キリスト教の真実」 ― 2012/06/30 06:35
キリスト教が思想史に及ぼした影響を列挙する
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著者自身が前書きで述べているが、この本の目的は、巷の定説を否定することだ。
これまで信じられてきた定説には、実は根拠がなかった、本当はこうだ、という「著者の視点」が、とうとうと述べられている。
不思議なことに、他人の根拠の有無をなじる一方、著者が自分の主張の根拠を示すことも稀で、結論だけの断定口調が続く。
古代や中世の人々のものの考え方、感じ方などが、「あの頃の人たちは、普通はこうだと思われているが、本当はこうだった」と、さも見てきたような口調なのだが。要は、当時の文献などを著者が読んだらそう思われた、というだけのことに過ぎないらしい。
著者は今の人なので、物差しも今の物差しだ。それを、古い文献に直接当てがって論じている。妙に場違いな感じが付きまとう。
当時の人々の考え方は、その時、その場所に立ってみないと、本当の意味では理解できない。その時、確かに実感していた人でさえ、時を経て、環境が変るに従い、当時の感覚をリアルに想起するのは難しい。自分の子供の頃でさえ、時を経るに従いおぼろげにかすれ、場合によっては そごを来たす 。まして歴史をや、だ。
断定口調は、著者が相当な自信家であることの表れだろう。
逆説として、「自分が正しい、進んでいる」が前提であり、何かを伝えよう、わかってもらおうといった、歩み寄る歩調はほとんど感じられない。端的に言うと、わからないヤツが悪い、というわけだ。
要は、自分の思考をまとめてみたかっただけであって、読後感としては「ふーん、そういう感じ方もあるのか」といった所がせいぜいだ。知識なり見識なり、何かが得られるのかは、微妙だろう。
少なくとも、私には著者が何がしかを妥当性を持って論破できたのかすら、わからなかった。 まして、キリスト教の真実について、理解できたわけでもなかった。取っ掛かりすら得られなかった感じだ。
題名買いしてはいけない本だ。
というより、出版には適さない本だと思う。
個人ブログあたりに載せるのが、せいぜい妥当な線だろう。
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キリスト教の真実: 西洋近代をもたらした宗教思想 (ちくま新書)
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