読書ログ 「建築を考える」 ― 2012/09/16 04:05
著名な建築家によるエッセイ集
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小さくて薄い本だが。
箱入りで、えらく高い。
著者は、著名な建築家だが、その建築家が、普段の思索を、多少、小難しく書いている。
妙に、理屈っぽい。(ドイツ語を母語とするせい?)
理屈っぽいくせに、感情的に納得したがる。
壮大な理論を組上げて、でも、感情との境界に、段差や谷間を見て、迷う。
そんな印象。
形而上的とも言える。
建築は、空間を扱う。
光や間を切り取り、配置し、組み立てることで、馴染み、安らぐ空間を作る。
空間は、小規模な「世界」とも言える。
だから、建築は世界に対する取り組みだ。
・・・というのは、多少、大仰か。
「間を扱う」という意味では、クルマだって写真だって、デザインとかアートってのは、みんな同じだ。
それが有用になるためには、時代や文化に根付き、かつ、即していないといけない。
(あまりに突拍子もないものだと、受け入れられない。)
そういった、記憶や規範に限定されるのだ。
万能ではないし、自由でもない。
それを認めつつ、しかし、普遍性を求めて、さまよう。
視点(距離や角度)を変えつつ、吟味し、
それが真に有用で、安定し、安心で、美しいかを、確かめる。
「現実と向き合う」
作り手が、何を伝えるか。
オーディエンスが、何にシンクロしているか。
感じ、judgeするのは、感情、感覚だ。
著者は、観念は、人間ではなく、物の側に内在する、と思っているらしい。
人間が感じるのではなく、物の観念が、人間に働きかける。そういう方向。
「再帰的」と言うと、西洋的に聞こえるが。(ラテン語系言語の、文法用語。) 我々のような東洋人も、「このデザインには魂がない」のようなもの言いをするから、同じようなものかもしれない。
材料に埋まっている「それ」を掘り起こすのが仕事だ、とは、くしくも歴代の東西の彫刻家による、同じせりふだったかと思う。
そこを磨き、追求し、掘り起こし、腑に落ちるまで、ねばる。
表現とは、問いでもある。
問い続ける人の、不安や迷い、葛藤や、相克。
感受性や、感情が深いから、よけいに、移ろぐし、揺らぐ。
そうやって、それが美になり、芸術になり、詩となる。
(デザインは、皆同じ)
建築で特徴的なこと。
機能が、静的なこと。
タイムスパンが、永いこと。(永く残る。)
そのせいか、著者の思考も、静かで、深い。
建築を思うのは、哲学でもあるようだ。
建築になじみの薄い人(私のような)にも楽しめる本だが。
やっぱり高価すぎで、残念である。
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建築を考える
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