'90sのバイクの本(8) バイクは動くか? ― 2015/08/30 06:30
1995年8月刊
この題名。前世紀の古いバイクと付き合いが絶えない私なんぞには、「ギクッ」とくる。(笑)
何が書いてあるんだろう?と、図書館から題名借りした。
パラパラめくると、どうも、エッセイらしい。
ヘタウマなイラストがたくさん。えらく力が抜けているのに、特徴だけはキッチリ伝えていて、クスッと笑える。
普通、バイク関連のエッセイって、あまりいい予感がしない。上から目線の、ありふれた経験談が多いからね。(人のこと言えないけど。)
でも、せっかく借りたからと読んでみた。
これが意外と、面白かった。
著者は、有名なデザイナー/イラストレーターで、絵本からエッセイまで、著書を多数お持ちだ。私の父の世代に近い年代。
そのオジサンが、中年も折り返しを過ぎた辺りで('80年代らしい)、何となく、バイクに乗り始める。
初めは小さなオフ車、XL200。いや、ホントは別のが欲しかったらしいが、うまくバイク屋に伝わらなかったらしい。(RだかXが一つ足りなかったとかそんな。) 納車整備を見に行って、これじゃないよなあ・・・と思いながら、まあいいか、もう来ちゃったんだし、と。
昔の「何でも免許」で、法的な資格はあるものの、実際に乗ったことはないから、技量の方は全くない。だから、初めのバイクは家まで届けてもらったと。(バイク屋の店先から颯爽と走り去る・・・のがムリだったから。)
スタートラインがそんな底辺だから、乗り越えるべき山はたくさんある。見栄っ張りで諦めが悪い著者は、自宅前での発進の練習から、一つ一つ、山を越える。(実際に、近所の土手の山を越えたりして、練習している。笑)
幸か不幸か、周りには結構バイク乗りが居た。ナンダいい年してバイクなんかアブナイと、それまでさんざ言ってきた。それを、金利をつけて返されるのだが、そんな揶揄まじりの助言を経て、晴れて仲間入りとなる。
時代も、ご身分も、良かったとは思うのだが。
その後の規模拡大のご様子は、あの頃の懐かしい感じだ。
「無駄がないシンプルなデザイン」が気に入って、トライアラーを買う。それも外車。ただ1台の売れ残りを倉庫まで見に行ってホコリを払って即金で買ったが、その1台で店は終って無くなったりする。その後はいろいろ大変だ。ウインカーを自分で付ける。エンジンは爆音仕様のロータックス。でも、心配は無用だ。すぐにTLR200が増車となる。
同じようにシンプルさが気に入ってハーレー 883が、逆に堂々としたBMW K100RSも増える。「プラモデルのように作って楽しむ」ために、TY50のお不動様がさらに加わり。それぞれを、マイペースで楽しむ。ペダルが付いている古いモペットから、モンキーなんかも加わる。
オジサン仲間とのツーリング。オンオフ両方行くのだが、オフではトライアラー、オンでは883がお気に入りのようだ。(シンプルで、シート高が低いのがいいと。) 行き先は日本国中、期間は2~3泊くらい、宿は出先で探して、値切って泊まる。オジサンだから、キャンプなんかしない。温泉&ビールは必須である。露天風呂があれば尚よい。できれば混浴ギャルも。
まあ実際は、何とかの沙汰もカネ次第だから、大体は錆びたトタンに囲まれた、古式ゆかしき、趣あふれる・・・、いや、ウソはいけない。寂れた、庶民向けの露天風呂に、オジサンが並んで呆けるハメになる。混浴ギャルは、こんな安宿には来ない。まあ期待するのだけはタダだから。(笑)
オジサンは、かっこよくない。
大した事ないのに、言うことはデカい。
でも、大概の事には慣れてるから、いちいち逃げないで、何とかすることを考える。
筆者は、バイクの上から世間を見ている。
短い足はベッタリ地面に着いているから、上から目線では全くない。
そして、見回せば、世の中、困難ばかりだ。
付き合いでイヤイヤ野球をやっている少年、モトクロスやトライアルのバイク軍団、自前で作ったラジコン飛行機の滑走路なんかが群雄割拠していた川原は、ブルドーザーで伸されて、ゲートボール場になってしまった。どうしてなのか。風が吹いたから、桶屋が儲かったのか。
バイクは、身体が丸出しだから、ただでさえ、世の困難を我が身で受ける。クルマには嫌がらせをされ、着いた宿では端っこに止めろとうっちゃられ、路面が悪けりゃ転ぶこともある。転べば人間もバイクも削れて減っていく。たとえ風が吹いたって、ただ吹かれるだけで、儲かったりしない。単純でダイレクト、シンプルで厳しい。
だから、バイク乗りは、出来のよい、しっかりした人物でないと危ないと、筆者は言う。でも、自分はオジサンのくせに人間ができていないからダメだ、とも言う。(私が見るところ、そういったことを潔く認める、現実的に考える人なので、著者は、バイクに乗れている。)
思えば、私は、この本を書いたころの著者と、同じ年代になっている。
比べてみると、私はまだ、著者に比べて、迷いが多いようだ。
(グチも。)
拙者、まだまだ未熟者だな、と。
父が若かった頃の写真を、ふと見た時のような感覚を覚えた。
Amazonはこちら
定価¥1456(税別)
バイクは動くか?
この題名。前世紀の古いバイクと付き合いが絶えない私なんぞには、「ギクッ」とくる。(笑)
何が書いてあるんだろう?と、図書館から題名借りした。
パラパラめくると、どうも、エッセイらしい。
ヘタウマなイラストがたくさん。えらく力が抜けているのに、特徴だけはキッチリ伝えていて、クスッと笑える。
普通、バイク関連のエッセイって、あまりいい予感がしない。上から目線の、ありふれた経験談が多いからね。(人のこと言えないけど。)
でも、せっかく借りたからと読んでみた。
これが意外と、面白かった。
著者は、有名なデザイナー/イラストレーターで、絵本からエッセイまで、著書を多数お持ちだ。私の父の世代に近い年代。
そのオジサンが、中年も折り返しを過ぎた辺りで('80年代らしい)、何となく、バイクに乗り始める。
初めは小さなオフ車、XL200。いや、ホントは別のが欲しかったらしいが、うまくバイク屋に伝わらなかったらしい。(RだかXが一つ足りなかったとかそんな。) 納車整備を見に行って、これじゃないよなあ・・・と思いながら、まあいいか、もう来ちゃったんだし、と。
昔の「何でも免許」で、法的な資格はあるものの、実際に乗ったことはないから、技量の方は全くない。だから、初めのバイクは家まで届けてもらったと。(バイク屋の店先から颯爽と走り去る・・・のがムリだったから。)
スタートラインがそんな底辺だから、乗り越えるべき山はたくさんある。見栄っ張りで諦めが悪い著者は、自宅前での発進の練習から、一つ一つ、山を越える。(実際に、近所の土手の山を越えたりして、練習している。笑)
幸か不幸か、周りには結構バイク乗りが居た。ナンダいい年してバイクなんかアブナイと、それまでさんざ言ってきた。それを、金利をつけて返されるのだが、そんな揶揄まじりの助言を経て、晴れて仲間入りとなる。
時代も、ご身分も、良かったとは思うのだが。
その後の規模拡大のご様子は、あの頃の懐かしい感じだ。
「無駄がないシンプルなデザイン」が気に入って、トライアラーを買う。それも外車。ただ1台の売れ残りを倉庫まで見に行ってホコリを払って即金で買ったが、その1台で店は終って無くなったりする。その後はいろいろ大変だ。ウインカーを自分で付ける。エンジンは爆音仕様のロータックス。でも、心配は無用だ。すぐにTLR200が増車となる。
同じようにシンプルさが気に入ってハーレー 883が、逆に堂々としたBMW K100RSも増える。「プラモデルのように作って楽しむ」ために、TY50のお不動様がさらに加わり。それぞれを、マイペースで楽しむ。ペダルが付いている古いモペットから、モンキーなんかも加わる。
オジサン仲間とのツーリング。オンオフ両方行くのだが、オフではトライアラー、オンでは883がお気に入りのようだ。(シンプルで、シート高が低いのがいいと。) 行き先は日本国中、期間は2~3泊くらい、宿は出先で探して、値切って泊まる。オジサンだから、キャンプなんかしない。温泉&ビールは必須である。露天風呂があれば尚よい。できれば混浴ギャルも。
まあ実際は、何とかの沙汰もカネ次第だから、大体は錆びたトタンに囲まれた、古式ゆかしき、趣あふれる・・・、いや、ウソはいけない。寂れた、庶民向けの露天風呂に、オジサンが並んで呆けるハメになる。混浴ギャルは、こんな安宿には来ない。まあ期待するのだけはタダだから。(笑)
オジサンは、かっこよくない。
大した事ないのに、言うことはデカい。
でも、大概の事には慣れてるから、いちいち逃げないで、何とかすることを考える。
筆者は、バイクの上から世間を見ている。
短い足はベッタリ地面に着いているから、上から目線では全くない。
そして、見回せば、世の中、困難ばかりだ。
付き合いでイヤイヤ野球をやっている少年、モトクロスやトライアルのバイク軍団、自前で作ったラジコン飛行機の滑走路なんかが群雄割拠していた川原は、ブルドーザーで伸されて、ゲートボール場になってしまった。どうしてなのか。風が吹いたから、桶屋が儲かったのか。
バイクは、身体が丸出しだから、ただでさえ、世の困難を我が身で受ける。クルマには嫌がらせをされ、着いた宿では端っこに止めろとうっちゃられ、路面が悪けりゃ転ぶこともある。転べば人間もバイクも削れて減っていく。たとえ風が吹いたって、ただ吹かれるだけで、儲かったりしない。単純でダイレクト、シンプルで厳しい。
だから、バイク乗りは、出来のよい、しっかりした人物でないと危ないと、筆者は言う。でも、自分はオジサンのくせに人間ができていないからダメだ、とも言う。(私が見るところ、そういったことを潔く認める、現実的に考える人なので、著者は、バイクに乗れている。)
思えば、私は、この本を書いたころの著者と、同じ年代になっている。
比べてみると、私はまだ、著者に比べて、迷いが多いようだ。
(グチも。)
拙者、まだまだ未熟者だな、と。
父が若かった頃の写真を、ふと見た時のような感覚を覚えた。
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