読書ログ 「問いかける風景」 ― 2012/10/13 05:40
風景写真を背景に、時代感を話題にした対談集
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題名に惹かれて手に取った本だったが、以前取り上げた これ と同じ著者だった。
その時にも書いたが、どうも、最近は恣意的に変質した写真に凝っているらしい。「問いかける」風景、ではなくて、風景に「言わせる」のがお好みと。
確かに、「真実」、特に、自分の目で見た(と思っている)ものは、ごく個人的なものだ。著者も、「捏造された原風景」と自分でも言っているが、それとこれとは、全く別の話だ。
さすが映像のプロ(業界人)だけあって、過去の映像ソフト関連の年代データはよく知っている。しかし、専門家だから本質を踏まえている、とは限らない。( 同様の例 を、幾つか取り上げた気がする。) 場合によっては、その知識の構造も「捏造された」ニュアンスを 帯びうる 。
写真とは、見えるものを撮ったものと、見せたいものに作り上げたものとの二種類があるが、この著者は後者になろう。
しかし私は、それは「写真」(真を写すもの)ではないと思っている。
既に製作者の意図から歪んでいて、レンズ(目)に向かってまっすぐ進んでくる光が持つ意味(真実)に対する、敬意(または、覚悟)が足りないと思う。
この本で撮られ、論じられている風景は、だから、ひどく表層的で、底が浅い。真実にいかに近づくか、という意味でのQualityが欠けている。
きっと、著者は真面目なのだろうが。
しょうもない本だった。
人は、自分の死を身近に感じると、変る場合が多い。
逃げられないことを悟り、覚悟するからだ。
(死神に隣に座られた時の恐怖の深さは、ライダー諸氏なら身に覚えがあろうかと思う。)
著者は、死病を患って考えた、と言っているが。
そういった緊張感が、足りないと思う。
きっと、まだ逃げられると思っていて、だからかえって、袋小路から出られないのではなかろうか。
この人の写真は、たぶん、この先も変らないのだろう。
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写真対話集 問いかける風景
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