ツーリングの本? 「ツーリング・ライフ & いつもすこし寂しい」2013/06/23 05:16


「ツーリング・ライフ」

何やら、バイク関連の書き物を何冊か物している人らしく、著者名順に並んでいる図書館の棚に、数冊かたまって置いてあるのを見つけて。試しに借りて、読んでみた。

文筆の本業の人らしいが。BMWニューフラットのノンカウルか何かで、あちこちをツーリングして回った印象なんかを記している。

良く言うと、詩的で知的な散文である。

悪く言うと、小難しくて、上から目線だ。

出先で見た史跡や絵画や、著者が連想した音楽などから、自分の知識を掘り起こして、いろんな角度からウンチクを述べている。

さらに、ブナ林の破壊を嘆いて、良識派であることをアピールしたりも。

とどのつまり、自分の嗜好を開陳して、自賛したいだけにも見える。それに合わないもの、反するものを、間違ったもの、劣ったものとして、退ける感じの物言いも散見される。

一応で、予防線も張っていて、非難した側に自分を入れてみることで、真っ向からの非難を避ける、という常套手段が散見される。

 「いや、ボクも、それほど分っているわけじゃないんですけどね。」

ウソつけ。(笑)

一見、筋の通った理屈が展開されるので、部分部分はもっともらしいのだが。通しで見ると、前後で話が違ってたりする。
(雨に吹かれ風に濡れる不自由さがバイクの良さなのだ、と言いながら、人間に負担をかけないBMWのフィロソフィーを誉めてみたりする。)

著者がご開陳あそばす知識の粗方は、どこかの本で読んだことがほとんどなので。要は、ただの受け売りだ。

その時々の印象を、そういった知識で飾り付けた「散文」。

何となく、BMWのディーラーでやっているプロモのビデオ、あのナレーションに似ている。

ああ、頭がいいヒトで、しゃべっている(書いている)分には、気分がいいんだろうなあ、と。(自分本位だから。)

ただ、読む方としては、そんなにいい気分はしないし、カネを払って読むものでもないな、と感じた。

でも、なんぼかは売れた本だそうで、バイク乗り以外の読者も多いと、ご自身で書いている。

そうなのだろうと思う。
そして多分、その読者は、バイクに興味は持たないんじゃないか、とも。

例えば、登山家の書いた山登り紀行なんかを読んで、ああ凄いなあ、気分が良さそうだなあ、とは思うかもしれないが。じゃあ自分もいっちょう、エベレスト登ってみるか!とは思わない。そんな感じだ。
「ふーん、そうなんだー」と、それで終わり。

時代のせいも、あるのかもしれない。

これが書かれたのは、90年代の後半~2000年にかけて。一部では、バブルの残り香も残っていて。自由気ままを賞賛できる気分が、まだ少しは残っていた。

かつ、自己責任だコンプライアンスだのと、他人の足を引っ張りたい類のプロパガンダが台頭する直前。その「隙間」だった。

その当時に、著者は40代半ば。経済的、体力的に余裕があり、気分的には落ち着いてきて、アクセルを「溜める」精神的な余裕を持てる、ある意味、バイクを一番楽しめる年齢だった。

私の、単なる経験論、と言うか、ただの印象だが。
こういう人は、よく、あっさりとバイクを降りる。

彼が挙げているバイクの利点、開放感や緊張感など、いろいろあるのだが、それは、バイクだけにあるものではない。ということは、別にバイクじゃなくてもいいのだ。だから、同じような刺激があって、よりコストやリスクが少ない趣味を見つければ、あっさりと乗り換える。

登山やスキー、自転車などが、「次」として、よくあるパターンである。

少なくとも、「読者にも、是非バイクに楽しく乗って欲しい」とは、あんまり思ってはいないんだろうな、という印象は受けた。

バイクの楽しみを言葉で伝えることの難しさは、私も毎週苦しんでいるので。深く、同情するのだが。(笑)

一点だけ、反省した。
私も、似たようなものだと思ったのだ。
だって、
 「小難しくて、上から目線」
うーむ。似てる。 (笑)

例えば、少し前、巷の「名車」をコキ下ろした。

読者の皆様に向かって、
 「今頃、そんなポンコツ乗ってんじゃねえよ」
とバカにしたように見えたかもしれない。

そうではなくて、業界に向かって、
 「今頃、そんなポンコツで儲けてんじゃねえよ」
と言ったのだが。

私は、Moto Guzzi という答えに独力(運かな)でたどり着き、その説得力に打ちのめされ、それからこっち、長い間、バイクについて、一人で考え続けてきた。
  「さんざ求めてきた解が、全く別の形で、知らない所にあったと
  いうのは、どうしてなのか・・・こんなに情報があふれているのに」
だから、バイクに関する考え方の独自性と精度には、ある程度の自信を持っている。

上にも書いたが、バイクに乗るのと同じメリットが他でも得られるなら、わざわざ危ない思いをして乗る必要はない。バイクで「しか」得られないメリットこそが、バイクの価値の要点のはずなのだ。

そしてそれは、突き詰めると、バイクならではの「操縦の感触」しかありえない。だから、そこを掘り下げたバイクでないと、まっとうな趣味として成り立たない。

バイクを志す皆様に、そんなこんなが少しでも伝わって、お役に立つことがあればと思い、つらつら書いているわけなのだが。

もし、CB750やZ2を気に入って、歳をとっても長く乗り続けて、満足している人がいらっしゃるなら、とやかく言う以前に、本当にうらやましい。

私も、出来ればそうなりたいと、Guzzi を傍らに、日々、心から願っているのだが。
(傍から見ると、変わないかもしれないが。)


Amazonはこちら
当時のバイク雑誌などに書いた記事の、おまとめ&加筆だそうだ。
新装版 2004年刊 春秋社 定価\1800
ツーリング・ライフ



実は、もう一冊借りていて。

「オートバイの旅は、いつもすこし寂しい。」

こちらは、上の本のあと、2001~2004年に、BMWの専門誌に連載した記事の、おまとめだそうだ。

著者が郷里に戻ってからということで、何か、著者的には、心境の変化があったようだ。ただ、内容としては、雑誌の取材で全国を走り回っている様子が書かれているだけで、上の本と何が変わったのか、よくわからない。相変わらず、「ご開陳」が目的のように見える。

BMWに対する賛辞が、より強化されているようだったが。
雑誌の記事としての、与件だったのだろう。

しかしまあ、半分?仕事??とは言え。ここまで全国を走り回れると言うのは、うらやましい限りだ。自営業だから、私のような、ツルシの会社勤めよりは、自由に時間が取れるということか。

ちなみに、副題にモノクロームの云々とあるが、載っている写真は、ばっちりデジタルのカラーである。

内容としても、やっぱり、そういう感じで。

きっと、こんなことを書いていることが知れたら、
「買っていない人の、図書館で借りただけの論評は受け付けない」
なんか、しれっと言われちゃうんだろうなあと、勝手に想像・・・。


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2004年刊 ネコパブ \1700
オートバイの旅は、いつもすこし寂しい。

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