バイクの上半分 272014/03/02 08:56



「万一の備え」の話の続き。
次の話題は、恐怖である。

重大な事態というのは、単一の原因から起るものではなく、複数の失敗が連鎖して起る場合がほとんどなのだそうだ。そして、その初めの引き金を引くのが、恐怖である場合が多い。バイクの場合は特に。

我々がバイクに乗るときの動作の粗方は、動作プログラムによっているが、恐怖は、そのインテグレーションを、シャットダウンしてしまう。

もし、恐怖に、はまってしまったらどうするか。
恐怖からの脱出の方法。

恐怖が及ぼす影響の「逆」を、いちいち意識的に行って、その呪縛を説くのだそうだ。

恐怖が及ぼす影響とは、具体的に、どんなことか。
本書には、面白い例が載っている。
いわく、「虫歯の患者」だと。

歯医者で、イスに寝かされて、顔面にライトを当てられて、
無表情にマスクという歯医者の顔と、
キュインキュイーーン!という、あの甲高いツールの音が近づいてきて、
ズキズキと痛む患部を、さらに傷めてくれようか、というその時に、
身体に、何が起こっているか。

肩に力が入り、肩幅がすぼまる。
背筋と腹筋に同時に力が入り、背中が少し丸まる。
尻の筋肉が収縮し、ヒザ関節がこわばり、つま先が上を向く。
腕は伸び、または不自然に曲がり、
宙をまさぐる手は、あんなに練習して挫折した、ギターのコード「F」の形。
呼吸は速く、浅くなり、
これが歯医者でなかったら、歯を食いしばっているだろう。

なので、自分が「ビビった驚いた固まった」と思ったら、

肩の力を抜いて、肩を落とす。
背中を伸ばし力を抜いて、その上に、頭を自然に乗せてやる。
下半身のこわばりを抜いて、バイクと自然に接する。
腕から力を抜き、ハンドルはそっと触れるだけに。
深呼吸する。深く吐く。
呼吸を整える。吐いた後、次に吸うまでに、少し間をおく。
アゴの力を抜いて、上下の唇を離す。

できれば(or 必要なら)、止まってゆっくりやる。

それぞれの順番や重要度は、場合によりけりだし、人それぞれなので、自分で試せ、ともある。
(どれかがトリガーになって、残りが連鎖的に進むこともある。)

こんな面倒な手順を踏まずとも、瞬時に恐怖から抜け出るやり方もあって、
例えば、数回ヒーとか叫ぶのも効くらしいが。
変な人だと思われないように気をつけましょう、だそうだ。(笑)
(映画「となりのトトロ」の、お風呂のシーンを思い出した。糸井重里が、突然笑い出すあれ。)

次に、
はまった後の話ではなく、はまる前の話もある。
恐怖の罠に、はまらないようにはどうするか。
予防の話だ。

端的には、恐怖を避ける。
手段としては幾つかあるが、「予想」については、いつぞや書いた。

もうひとつ、「慣れる」のも有効だと。
「恐怖の引き金」を分析すると、「突然の脅迫的な事態に驚くこと」だから、ある程度慣れて驚かなくなったり、対処できる自信がついてくれば、「脅迫」とは感じなくなる。だから、恐怖を避けられると。

上手に「慣れる」には、それ用の環境で、熟練のトレーナーによるトレーニングが有効だと。
ま、そりゃそうだわな。
「慣れるまで、怖い思いを続けましょう」じゃあ、あまりに無責任だ。(笑)

ここで一番悪いのは、「最悪の事態を考えもしないこと」だと。
これって、「男らしい」態度として好まれたりもするので。
「何だ、ビビってんのか?。オレは怖くねえぜ。(ニヤッ)」
意外と、克服するのが難しい、ともあるのだが。
こういう人って、次の瞬間に負けているのが、アニメなんかでは昔からのパターンみたいだし。これを踏襲している人というのも、今や少数派のような気がするが。

それに、当ブログのような、理屈っぽい文章に目を通す皆さまは、
カッチョエエからバイクに乗ってる若輩者さんは少なくて、
マジメにライディングに取り組もうという堅物、もとい聖人君子であらせられる場合が多いのではと拝察しますので(笑)、この辺りの詳細は割愛する。

以上、話の筋を俯瞰すると、何となく、
 ・知れ、やれ、
 ・できなければメントレ、
 ・でも知ってるだけではダメ、
と、論理が三すくみで回っていない気もするが。

知っていればその分マシだが、実際はそれだけではダメで、やはり、できるようになっておかないと確度は上がって行かないよ、とそんなことなのだろう。


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