宗教とは何か ― 2011/04/29 10:55
近年の浅薄な宗教批判への反論。ネオコン批判を筆頭に、平易な筆致で書かれている。
原題は、「理性、信仰、革命 神に関する論争への反駁」
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この本は、装丁で損をしている。
この、おどろおどろしい帯がよくない。
これを外せば、実にシンブルな外見になる。
そして、こっちの方が中身のイメージに合っている。
題名からすると、宗教に関して、こむずかしい理論を延々と述べた、どうでもいい本に見えるが、実はそうではない。
平易な語り口で、茶化しや例え話を多用しながら、勢いで走りがちな若者に対して、そうじゃねえんだよ・・と語りかけている。知識の豊富さや、造詣の深さが、ウイットの合間に垣間見える。
頭がいい爺ちゃんの軽妙なお喋りを、面白おかしく聞いている・・と、そんな風に読み飛ばすこともできる。
それでいて、結構、考えさせられる。
「そんなのは、雑誌に書いてあるのが本当か確かめるために、もう一冊買うようなものだ。」
うん、そんなこと、しょっちゅうやっているような気がする。(笑)
「神」、特にキリスト教的な神と言われると、白髪にヒゲ、ボロ布をまとったジジイで、両腕を広げた姿で雲の上からヌッと出て来て、ホッホッホーなんか言いながら、ようわからん奇跡や災いをもたらす、そんなイメージをお持ちではないだろうか。
多分それは、全然、間違っている。
聖書やバチカンなどの「正式な」神とも違うし、キリスト教徒の皆さんがイメージしている、「一般的な」神とも違う。
本来「神」とは、もっと別な、本質を突くような、絶対的な何かだ。
だからこそ、これだけ長い間、多くの人々に影響を与えて来たのだ。
筆者は、それが何なのか、直接は教えてくれない。
ヒントや、とっかかりだけはくれる。
(知っていることを前提に話している、のかもしれない。)
科学や経済、権力とか、今、君たちが大好きな物差しは、確かに便利だが、まだ新しくて、実は大したものは測れない。
宗教は違う。君たちは、それが何か良く知らないし、使いこなせてもいない・・。
「宗教」として、「神」を信じなくてもいい。
ただ、それが何なのかは、理解しておいた方がいい。
現に、それを様々な形で行動原理にしている連中に囲まれているのだし、その中でどう振る舞うべきか、考えなければいけないのだ。
そういうプロットができるのは、無宗教国家に育った者の、特権だ。
この本の著者には、怒られるかもしれないが。(笑)
9.11についての下りは、以前取り上げた、この辺とも共通するものがある。
→ 社会の真実の見つめ方
もし、今の世の中が何かしら間違っていて、もっと真っ当なプロットを得ようと思った時、共通の軸として使える何か、そのヒントがあるような気がする。
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宗教とは何か
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