「隠れていた宇宙」 ― 2011/08/27 06:39
宇宙に関する、物理学の最新の知見をまとめた本
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本書は、望遠鏡や加速器、数式といった有形無形の道具を駆使し、宇宙の姿をイメージすべく奮闘する、物理学の最先端を記した本である。
なにせ最先端なので、まだケリがついていない。話はいろいろと、ぼやけている。例えると、映像は見えているものの、それが何なのかわからなかったが、最近何となく、どう見るものかわかってきた・・・とそんな感じだ。だから、読み通しても、何か完成したり、達成したりするような感じはない。
難しい数式やら、専門用語が並ぶのが普通の分野である。「棲み込みの専門家」の話が不親切でわかりにくいのは、古今東西、共通するようだが、その中でも、飛びきりにややこしい分野だ。それを、言葉だけで、しかも平易に伝えようという著者の努力は、しかし、かなりの度合いで報われている。その結果が、これだけの文章量(上下巻、各300頁余)になってしまうのは、致し方ないか。
この文章量を持ってしても、話の筋はあやふやだ。もともと、小説やRPGのように、決まった筋や終着点などは存在しない世界である。どこから何が出てきてもいいし、後出しジャンケンもアリだ。話は十分に入り組んでいて複雑なくせに、いびつで、穴だらけで、不安定で、危うい。
その舞台で、学者たちは、データや数式が何を表しているのか読み取ろうと、懸命に目を凝らし、頭をひねっている。科学(組み立てること)と哲学(掘り下げること)と、宗教(信じ、守ること)が為すまだら模様の上を、さまよいながら。
でも、そうして得られた知識は、実生活には、何の役にも立たない。
実際、女房あたりに話してみても、「だから何?」と、にべもない。(笑)
そんな知識を、これだけの量つめこんで、喜べる人も限られるだろう。
用途や儲けなど、他に目的があるのではなく、知識そのものが目的だったり、幸せだったりする場合だけではなかろうか。
でも最近、この手の科学の本が以前に比べてよく出ているように思うのだが、そういう「好き者」は、意外といるもの、なのかもしれない。
少なくとも私には、下手なビジネス書やドキュメンタリーなんかよりは、よほど面白かった。
疲れたけど。(笑)
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