「子どもの頃の思い出は本物か」 ― 2011/09/23 18:27
記憶の曖昧さに関する科学的知見をまとめる
(★★★☆☆)
#####
内容は題名の通りで、記憶というものの曖昧さについて、さまざまな角度から論じている。心理学、生理・解析学、脳科学など各方面の研究の最前線や、裁判の判例、世論の変遷といった所まで、広い角度でとらえている。
我々は、自分で得た情報を消化し再構築して、記憶として残している。
その元となる情報は、自分で見聞きした経験だけに留まらない。伝聞や学習、世論、時には尋問や、催眠、セラピーなども含まれる。(誘導されうる。)
我々は、そのうちで、役に立ったり、注意を要すると思われるものを、抽出し、再構成する作業を、意識/無意識に行っている。その過程で、元の情報の出所は、ほとんどが捨てられてしまい、忘れられてしまう。
その「消化」のプロセスには、生物学的、脳科学的な、人間が動物として持つシステムだけでなく、その国の文化や、身近に接する人間の性格など、環境の影響も受けて、揺らぐ。
記憶というのは、たとえそれが、いかに鮮明であったとしても、本質的に、真実性とは無縁の曖昧さを持つ。ビデオ映像というよりは、やらせ番組に近いというわけだ。
だから、状況次第では容易に混乱し、矛盾をきたす。実際にはなかったことを思いだしたり、思い出したことを、すっかり忘れてしまったりする。
しかし実際、これが裁判で証拠として使われたりしているのだから、状況としては、あまりよくない。悪用したい連中は、原告被告、双方の側にいるだろう。虐待されているのは、被害者の児童ではなく「真実の方かもしれない」という、著者の主張には説得力がある。
他人ごとと笑ってもいられない。我々の大切なアイデンティティってやつは、この脆弱な記憶の上に組上げられているのだ。
しかし、裏を返せば、実に示唆に富んでもいる。
例えばだ。
自分を信用しているうちは、本当の自信はつかない。
ということになる。
少し学術に寄った、固めの印象を受ける内容だ。エグい症例も容赦なく取り上げられており、正直、不快に思うことも多い。逆に、通例にありがちな「知的科学読み物」に物足りなかった向きには、手ごたえがあっていいかもしれない。
Amazonはこちら
子どもの頃の思い出は本物か: 記憶に裏切られるとき
「 Vespa TECNICA 5 PX '77-'02 」 ― 2011/09/25 05:26
あんまりユーロが安いので、久しぶりにイタリアから本を買ってみた。
「べスパの技術」
前から気になっていたのだ。
べスパは、独特だ。
トランスポーテーション・ユーティリティのミニマムサイズ。
ドライブシステムは小さく集約して、モノコックのボディーに搭載する。
人間への優しさ(エルゴノミクス)にも配慮している。服装に気を使わずに済むし。
でも操作は全てワイヤーで、手触りとか、信頼性は微妙。
機械的には、徹底した合理性と、潔い切り捨て(矛盾)が共存する。
えらく長い歴史を持つ、何となく、人間臭い乗りもの。
その、「べスパの技術」と銘打った本だ。
何が書いてあるんだろう、とずっと思っていた。
英語版とイタリア語版があるが、後者を選んだ。
この手の本の英語版は、イタリア語版の翻訳で、妙に読みにくいことが多いのだ。
ネット通販で買ったのだが、「在庫僅少!」の文字にあおられて、5巻出ているうちの最終巻をポチッとした。
着いてみると。
ただのモデルヒストリーでした・・・。(沈)
ラージボディのP~PXの変遷をまとめている。
まあ、その辺のムック本よりは、桁外れに詳細な解説本ではあるのだが。
「中古で買ったオレのPXが何年型なのか、マジ真剣に悩んでいる・・・」といった方には、すんごく役に立つだろう。
成川仕様(?)まで網羅しているかは微妙そうだが。
イタリア語の本なので、Amazonにはありません。
ドイツ語を入れてくれてるんだから、イタリア語も入れてくれればいいのにね。
ISBN 88-7399-093-2
最近のコメント