「株式会社という病 」 ― 2011/12/10 06:57
会社やビジネスという文脈が、考え方に及ぼす影響を思索
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子供のころに見たアニメ映画だったと思うが、小さな女の子が、こんな台詞を言っていた。
「あら、だって。パパは、会社に行くものよ。」
さようかほどに、会社は当然のように存在し、物質的な糧として、また精神的なよりどころとして、当たり前のように機能している。(または、機能していないので、物質的、精神的な圧迫要因になっている。)
一般に、そう思われているようだ。
この、当たり前の与件のように振舞う「会社」を、「病」という全く脈絡のない比喩に置くことで、不快だが避けられないもの、誰でもハマりかねない落とし穴、といった予感を抱かせる。
うまい題名だ。
そこに「姑息さ」を見る人もいるかもしれないし、例えば会社という制度を一方的に糾弾するために書かれたような本を想像されるかもしれないが、違う。もっと、まじめな本だ。
目的は、著者も書いているが、「会社とはどういうものなのか、の考察」だ。
「会社」が、どんな姿をしていて、どのように成り立ち、我々にどう影響したか、しつつあるか。それを、淡々と「考えて」いる。
一応、整理して伝えよう、という心遣いはしてくれているが、思索の道筋を略さず記した「記録」のようにも見え、平たく言うと、文章は少々くどい。結果として、伝えたいものが明確にあったのか、ただ考えたことを書きたかっただけなのかは、ぼやけている。
しかし、著者の思考の後をたどるのは、あながち無駄な作業ではない、とも思わせてくれる。著者の経験と見識には厚みがあり、それを言葉に乗せる技にも優れている。多面的で、時に鋭く差し込む著者の視線は、その辺のビジネス書の風情とは、一味違った風景を見せてくれる。スリリングで、刺激があり、参考になる。
閉塞感が強まる昨今、立ち止まり、振り返る形で考えてみたい人にとっては、有用な書だと思う。
しかし、何せ「思索」なので、結論はない。
これからどうすべきか。
それは、自分で考えねばならない。
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2007年版
株式会社という病 (NTT出版ライブラリーレゾナント)
最近、文庫版も出たようだ。
株式会社という病 (文春文庫)
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