「テリー・サビーネの遺言」 ― 2012/01/08 10:19
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決断 なんて、理屈で詰めると、ろくなことにならない。
ものごとをやるかどうかは、メンタルに決まる。
どんなに簡単なことでも、やろう、と思わねばやらないものだ。
逆に、どんなに面倒だったり厄介なことでも、やってしまおう、と思い始めると、どうにもやらずにおれなかったりする。
しかしだ。
誰が好き好んで、砂漠をバイク(乗り物)で突っ切ろう、なんか思うか?。
砂漠に行くと人生が変わる、と誰かが言っていた。
たぶん、あの容赦のない乾きは、死そのものだからだ。
死神ってのは、自分目当てに来たヤツが、近づいてきて初めて、恐ろしさがわかる。
いつも隣に座っていた、自分の人生の向こう側に、初めて気付く。
だからこそ、また、行かずにおれなくなる。
その恐怖に、立ち向かおうとする。
たぶん、本能的に。(惹かれたように。)
そういうヤツは決まって、猛々しくない。
どこか悲しげで、深い目をした優男。だが「止め難い」、そんな感じ。
あのティエリーが、どうして「それ」を思いつき、実現できたのか、よくわからない。
彼が着想したのか、ただの看板役だったのか。
本当に、言われているような、いいヒトだったのかも。
しかし、当初、「それ」は確かに違っていた。
「ラリー」と呼んでいいのかも、よくわからなかった。
文字通り、砂にまみれて、ボロボロになって、ゴールを目指す。
・・・結局、みんなで。
「レース」でさえ、なかったような気がする。
食事や救急体制など、最大限に配慮された、
しかし、(都会の狭間のサーキットにすらある程度の)最小限の命の保障すらない、
「冒険」
当時、あれが、どうしてあんなに盛り上がって、政治とか、カネとか、どこぞの御曹司を巻き込んだり、一流メーカーが行先不明な試作車を突っ込んでまで ・・・。
関係者が増えるに従って、その「冒険だかラリーだか」は、少しずつ、姿を変えた。
そうこうするうち、案の定?ティエリーが早死にして(ああいう目をしたヤツは、早死にするのが多い)、イベントの方は、カネの臭いが濃くなっていく。
「冒険」は、その辺にありがちな「競争」の亜種になることで、定着したように見えた。
そうやって、それは残った。
舞台を別の大陸に移して、今も、「競争」は続いている。
でも、あの時の、砂漠の匂い ・・・ 冒険? ・・・ は、もうしない。
なんとなく、なりたかったものになれなかった、「はがゆさ」のような影だけは、うっすらと、見えるような気がするんだが。
ティエリーが死んで、もう26年になるそうだ。
でも、今年もまた、パリダカの季節が来た。
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87年刊ですので。古本です。ちなみに定価は\980でした。
テリー・サビーネの遺言
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