読書ログ 「日本海軍はなぜ過ったか」 ― 2012/08/04 06:02
海軍退役軍人による「反省会」を題材に、識者の討論をまとめる
#####
暑い日が続いている。
そして、夏は、日本にとって、戦争を思う季節でもある。
戦後のことだが、海軍を退役した元軍人が集まって、戦時の様子を話し合う「反省会」というのがあったそうだ。やっている当時は極秘で行われていて、後になって記録テープなどが明らかにされた。数年前に、NHKの特番などでも取り上げられ、話題になったとのこと。
本書は、戦時の情勢に造詣の深い作家さんなどの識者3人でもって、「反省会」の内容について批判・討論したものの記録である。
識者さんは、三者三様で面白いのだが、やはり、基本線としては批判的な意見が目立つ。「反省会」の内容は、真理に切り込もうという気概を持った少数を除いて、結局は、戦時を逃げおおせたエリートによる自己弁護に近い、といった意見だ。
3人の識者は、犯人探し(誰が悪かった/悪いのは誰か)に陥ることなく、真の原因を見定めたいという強固な意志では共通している。「反省会」の参加者が、根底で共有している意識のようなものを探り、そこに宿る普遍的な要因に、真の原因を求めようとする。今に通じる一般化した解を探ることで、教訓や予防策として生かす、つまり「歴史を生かす」。その姿勢は真摯で、一貫していて、迫力がある。
あの惨事を招いた真の原因は、誰かの判断ミスの積み重ねや、時代の流れ、運命といった表層にあるのではなく、当時の人々の意識の底流に流れる何かが、それをもたらしたのではないか。
そしてそれは、今の我々にも、そのまま当てはまるのではないか。
そういう視点である。
あけすけな「私利私欲の組織防衛」や、破綻を承知でも動かしてしまう「戦艦大和」が、いまだに散見される昨今。この議論には、引き込まれる。
今現在、普通に我々が行ったり考えたりしていることの作法、その根幹が、「あの時と同じ」だったりしかねない。よくよく意識して、目を凝らし続けねばならない。
個人的な感想だが、今、日本が傾いているのは、「今、ダメになった」のではなくて、「昔からこうだった」のが、悪い方に現れているだけなのではないか、つまり、実質的にはあまり変っていないのだが、ただ時勢に流されて丁半が転がっているだけではないか、そう感じていたのだが。何となく、その裏打ちを得たように思われた。
その証として、本書は、読者の側をも批判する。「我々は、戦争を真面目に考えていない。」 確かに、過去を考え、消化して、意義として残す努力を、我々は、ほとんどしていない。
歴史とは、「何年に何があった」を憶えるだけではない。その中に、何が流れたり、つながったり、切れたりしているのかを、把握して、今に反映しないと(生かさないと)いけない。でなければ、同じ「とんちんかん」を、またぞろ繰り返すことになる。
そういったことを思い出す、とっかかりの材料としても、いい本だった。
印象の強いコメントもあった。
「国は瞬間的に消える」
今、テレビをつけると、世はオリンピックで。ニッポンバンザイが、無邪気に繰り返されているが。
国って、何なんだろう。
いや、具体的に。何のことを、「国」と言っていますか。
「責任とは、約束を守ること」
個人的に、ずっと、分らずにいるのだが。
責任って、何のことだろうか。
いや、具体的に。何のことを、「責任」と言っていますか?。
どなたか、説明してくれないだろうか。
Amazonはこちら
日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の証言より
コメント
_ moped ― 2012/08/05 17:43
_ ombra ― 2012/08/11 17:12
どうもです。
目的ですか。
・・・・わかりません。
と言いますか、
「なかった」
ような気もします。
目的ですか。
・・・・わかりません。
と言いますか、
「なかった」
ような気もします。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://mcbooks.asablo.jp/blog/2012/08/04/6530216/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
今となっては、「たられば」の議論かも知れませんが、
客観的に戦争を振り返ることは、生き残った人と次の世代の責務でしょうね。
乱暴な言い方かも知れませんが、戦争を外交手段の1つと考えれば、
目的と手段の取り違えが、根本的な原因と考えています。
では、戦争になっても、得たかったもの目的は何だったのでしょう?