バイク読書中 「Vespa style in motion」 #112012/10/28 04:38

Vespa: Style in Motion


カッコよくて、楽しそう。(イタリア風味?)


ちょっと前の話だが、イタリアの街中の石畳を散策していると、特に早朝に、くそ細い急坂の裏道を、小さい三輪の運搬車がノコノコと登る光景を見かけたものだ。それが、Ape(アペ)というPiaggio の製品であり、小排気量ゆえの維持費の安さ(税金とか)などもあって、かなり昔から使われていることを、私も後になって知った。

見た目は、押しが強くなくて、街に溶ける優しいデザインで、ゆっくりと、しかし必死感たっぷりに力みながら、ユーモラスに動く。キッチリ使い込まれた様子のこれらが、ユーティリティの高さ(意外と荷物が載る)を発揮しつつ働く様は、妙に印象に残った。

それからずいぶん時間がたったが(イタリアに遊びに行けてない・・・)、Apeが今でも使われているのかは、確かめていない。

いや、キッチリ使われているようだが・・・。


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バイクに荷台を引かせよう → 荷台を引けるバイクを造ろう、という方法論は、1920年代からあったと聞く。Vespaが立ち上がったこの当時(1940年代終盤)、既に同じようなプロダクトを街中でも見かけたろう。なので、Ape がオリジナルというわけではないし、Piaggio にその発想が既にあったとしても、おかしくはないのだが。

しかし、Vespaを量産し始めた次の年に、いきなり世に出すという手回しの良さは、やはり、ちょっと出来過ぎな感じがする。

初めは、Vespaの後ろ半分を、荷台の構造にすげ替えた形の三輪車だ。後方に置かれたミッションはデフを回し、そこから両輪に別々にチェーン駆動だったらしい。前半分は、フェンダーライトのベスパそのまんま。(これが草レースに出ている写真を いつか載せた 。) エンジンは、初めから125ccだった。(大きいエンジンをApeが先に出して、Vespa にはあとから使うというパターンは、この後に150ccでも再現する。)

この、「お安い荷車」というコンセプトは、商売という商売の末端、働き手と顧客のあらゆる境目にある、豊富に散在する小さなニーズをヒットした。個人商店からお役所まで、都市部から田舎まで、イタリアから、世界中に、このプロダクトは拡散していく。ちょこまかと、細かい改良(バリエーション)を加えながら。






生産台数は、だいたいVespaの一割程度とのことで、Vespaほど凄まじくブレークしたわけではなかったようだが。ロングテールだったことは想像に難くないし、単価(粗利)も違ったろうから、収益としては悪くなかったのではなかろうか。

しかし、Vespa(スクーター)と、Ape(荷車)という、まるで違うプロダクトを、事業の立ち上げのごく初期から並存させてしまうというPiaggio の手腕には、唸らざるを得ない。Vespaの、あのミッション一体型のドライブユニットは、こういうニーズもカバーできるように、あらかじめ考えられていたのでは?などと、いろいろと勘ぐれてしまう。

一見、二足のわらじを履き分けているような、狡猾な感じにも見えなくはないのだが。両方とも、「庶民の手となり足となり、役に立つ製品を」という思想は一貫していて、その辺りが、ブランドに信頼感を与えていた所以かとも思う。


余談だが、パソコンとタブレットなどの異なるアーキを跨いでいるのに、製品のバリエーションは極力抑えて(モデルあたりの生産数を増やして量産効果を狙う)、シンプルな感覚性で訴求するという、今のアップルのビジネスモデルともよく似ているように思えるのは、錯覚だろうか?。

本書には、モデルヒストリーも出ているのだが。詳細を書き写す気になれないので。すいまそん、ご興味のある方は、自分で追ってください・・・。
ちゃんと調べたら面白そうなんだが。いろいろとドラマがありそう・・。

時代の趨勢に合わせてか、後から小さい排気量を加えたりと、いろいろ変遷を経ているようだ。


コメント

_ moped ― 2012/10/28 14:35

まいどです。

Vespaの奥深さに、ただ驚くばかりです。

バイクから、3輪トラックに派生していくのは、モトグッチでも見られます。
一方、同時期の日本では、3輪トラックは、バイクの派生ではなく、独立して開発されました。この違いが不思議です。

それにしても、APEのドリフト動画は、インパクトありました。
音は、2ストレーサーみたいでしたし(笑)

_ ombra ― 2012/11/03 06:17

まいどっす。

Ape以前のバイク荷車は、もう少し排気量も荷台も大きくて、どちらかというとトラックのイメージだったかと思われます。(映画フェリーニの「道」で、ザンパノ達が乗ってました。)
Guzzi のも、この感じですね。(後に大小取り揃えたようですが。)

Apeは、軽自動車よりさらに小さくて、日本では例えるものがないですね。戦後の日本のオート3輪は、主に大型化に走ったようですが、このカテゴリは無かった。
なので、私も初めて見た時は新鮮でした。(笑)

> 同時期の日本では、3輪トラックは、バイクの派生
> ではなく、独立して開発されました。

・・・確かに。
当局の意向で、二輪と四輪が分れてたからですかね?。

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