バイクの上半分 242014/02/09 10:42



この所、話が難解になっていて、少々読みあぐねていた。
vagotonal economy って何だろう・・・
・・・迷走神経系の活動域、てな感じ?・・・

「知らない=学びのチャンス」
調べ始めると、そっちにハマって、戻れなくなることも。
まあ、それはそれで、幸せではあるのだが。
こちらの連載(?)は、進まないわけで。

以下、例のように、ストーリーがつながりやすい部分だけを、簡単に辿る。

メンタルトレーニングという用語は、本式には、世間一般の概念より広いことを指す。サーキットのコースをブツブツ言いながらアタマの中で反芻するのがそうならば、役者さんがセリフを暗唱するのも同じことだ。言い換えると、我々は、思ったよりも広範囲でメンタルトレーニングをしている。(消極的に)不安を取り除くこと、(積極的に)精神面を鍛えること、「その時」に向けて、精神的にベストな状態に持っていくこと、などなど。

メンタルの活用は、冷戦下の東側で研究が進んだ。主に、(国策としての)スポーツ工学や、軍事面に活用されたとある。
なので、この分野では、既に膨大な知識やノウハウがあるのだが、ライディングに関しては、その一部が適応できる、というか、一部で十分なのだと。
(だから、ここで書いているような話は、スポーツ工学では「よくある話」で、既にご存知の方も多いのだろうと思う。)

ライディングのように、動作プロが主要な役割を果たす場合、メンタルが及ぼす重要な作用として、「意識の界面のコンディショニング」があることは、今までも繰り返し述べた。

「自信があり、かつ、不安なくリラックスしている状態」が望ましい。
しかし、単に「補強」するだけでなく、「過剰を抑える」ことも必要になる。そこで既に矛盾があるので、その両方を、バランスよく備えるのは難しい。

まず、「自信」の方だ。
自分の能力の「自己評価」と、「実際の能力」は、異なるのが普通だそうだが、その「差」には、功罪の両面がある。

自信過剰(できない事をできると無闇に思いこんでいること)はもちろん無益だが、あまりにも自信が無いと、能力を出すことができない。しかし、自信が無いことが、向上心につながることもある。

実際にトレーニングを重ねて、技術の向上を実感できれば自信につながる。しかし、その後にブランクが空くと、実力としては下がる一方だが、自信の方は、なぜか青天井に向上したりする。(メンタル「だけ」トレーニングしていると更なり。)

というのは、ライディングの場合はよくあることだそうで、やはり、トレーニングの継続が大事だとある。「ライダーは特に。」
(単純に、うぬぼれ屋さんが多い、というだけではなくて、例えば、冬の間は乗れないといったような、仕方ない事情も影響しているらしい。)

また、トレーニングの最中は、実際より上達が早いと感じるものらしい。そういう意味で、始めたばかりの「どビギナー」より、ちょっと慣れてきた辺りが危ないといういうのは、研究でも確かめられていると。

次に、「リラックス」の方だ。
リラックスしていないと実力が出ないというのは、今までも何回か触れた。ビビッていたり、緊張して肩に力が入っていたり、逆にトサカに来ていたりすると、本来の能力が出せない。

しかし、あまりにリラックスして、やる気まで失うと逆効果だし、さらにリラックスの度合いが進んで、「やる前から幸せ」になっちゃったりすると、実力どころの話ではなくなる。(「起きろコラ」状態。)

また、リラックス自体も動作プロの一部として組み入れられている場合もある。例えば、一部のベテランのライダーは、乗ればすぐに、いつも通りに適当にリラックスができている。そこへ来て、もっとリラックスしましょうねというアドバイスは、余計なお世話になってしまう。

また、リラックスは集中力を高める効果があるが、一点集中型の認識・判断になる傾向をもたらす。これは、例えば、サーキットで、前を走るライダーや、路面の状況「だけ」を注視していていい場合にはよく適合するのだが、、あらゆることに幅広く対処せねばならない公道のライディングには、かえってマズい場合もある。

と、いろいろとややこしい「リラックス」なのだが、その有効な効能の一つとして、著者は、「潜在意識の動作プロと、意識による課題の認識と整理を、効率よく統合する作用」を挙げている。

簡単に書くと、「内に向いたドアが開く」状態だと。
動作プロと、そこへの意識の関与というのは、階層に分かれていたり、障壁を経たりしながら、階段やエレベータなんかで、微妙かつ複雑に、つながったり、切れたりしている。適当なリラックスは、それらを隔てていた「ドア」を解き放ち、全体として一体に動くチャンスを与えるのだと。

その鍵を握っているのは、意識の方なのだそうだ。
つまり、これは、高効率に動いている動作プロの横で、意識がやれる重要な仕事の一つなのだと。

その具体的な方法は、既に研究が進んでいて、著者もいろいろと書いているのだが。メンタルトレーニングというよりも、瞑想や、催眠?に近いように見えるケースもあるようだ。

そんななので、ちょいと理解はしにくいのだが、幸いなことに、日本語には、いい表現があって。
たぶん、「平常心」が、一番近い理解なのではないかと。

とまあ、抽象的な物言いが続いたが。具体的なお話も、一つだけ紹介する。
「バイクに関する、リラクセーションによるメンタルトレーニング方法」

止まったままバイクに跨り、走る様を想起する。
そのまま、下に、バイクに向かって、意識を没入する感覚を持つ。
さらに、タイヤの接地面に向かって、意識を落とし込んでいく。
意識が集中してくると、その、タイヤの表面の感触を、直に感じるように思えてくる。

砂ツブだ。ザラザラ。
土くれを踏んだ。ボフッ、パリッ(乾いてる)。

いつだったか、「道具と人間の界面の移動」について書いた。
クギの頭にトンカチを振り下ろす瞬間、「自分と外界の界面」として意識されるのは、「クギとトンカチの間」だろう。その時、トンカチは、自分の内側、身体の一部として認識されている。
つまり、「道具の肉体への取り込み」が起きているのだ。

それと同じことを、バイクでもやる。
界面は、無論、「接地面と路面の間」だ。

その「界面の移動」を行うのに、メンタルトレーニングが一助となる、ということらしい。


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The Upper Half of the Motorcycle: On the Unity of Rider and Machine

コメント

_ テク ― 2014/02/15 20:16

初めまして。いつも拝見しております。

vagotonal economyとはなんでしょう?

副交感神経系の効率的使用?みたいな意味でしょうか?

学生時代、vagotonyワゴトニーは副交感神経優位状態、 sympathicotonia ジンパチコトニーは交感神経優位状態と学びましたが・・・。

_ ombra ― 2014/02/16 07:10

いらっしゃいませ。
<(_ _*)>

お医者様でいらっしゃいますか。
解説ありがとうございます。

ネットを徘徊すれば、大体そういった情報は得られたんですが。

まず入り口から、
 ・その「economy」とは何ぞや
出口まで、
 ・その副交感神経優位状態がライディングの何に
  どう影響すると言っているのか
引っかかり続けまして、うまく読めませんでした!

件の記事は、そういう失態の吐露であります。(笑)

まあ、筆者の方も、これは専門的にはこういう解説ができますよ、という視点で書いていて、これがワカランと先に進めんぞボケ、ということではなかったので。軽く流させていただきました。

一旦このまま進めますが。でもやっぱり気になったら、また独りで帰ってきて考えるんだと思ってます。(笑)

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