読書ログ 「マイクロモノづくりはじめよう」 ― 2014/03/15 06:07
一時期、書評で取り上げられていて。(ホメられていた。)
個人的に、興味がある分野でもあり。読んでみたのだが。
面白くなかった。
手工業的な規模を越える、いっぱしな工業製品としての「ものづくり」は、量産の規模を必要とするので、個人レベルでは対応ができない。だから、世の中に広く問うような「ものづくり」は、大企業でないとできない、というのが、これまでの常識だった。しかし、今や状況は変わりつつある。SNSや3Dプリンターなどの新鋭ツールを駆使すれば、設計製造、ロジスティクスやサプライチェーン、ビジネスモデル(収益構造)まで、個人レベルで構築できる世の中になりつつある。どうぞ、本書をご参考にしていただいて、皆様が持つ「ものづくり」への欲求を、思う存分、実現していただきたい。
と、そんな内容だ。
でも、その実は、「私の時はこうやったらうまく行った」という例示(&少々の自慢話)である。解説めいた部分もあるのだが、「その辺でもよく聞く話」を後付けであてがったような感じで参考にはならないし、面白くもなかった。(文章も、あまり上手ではない。)
大体、既に話が古い。
今から、これをそのまま再現しようとしても難しいだろう。
また、「こんなものを作ってみました」という例がいくつか出ているんだが、正直、あまり魅力的なプロダクトではない。そう数は出なさそうな(大して売れなそうな)物が多いのだが、関わっている人数が少ないので、それでも食える(こともある)のが、今までにない素晴らしいこと、という論旨らしい。
その辺りに、どうしても違和感が残った。
何となく、作り手の側の(この場合は個人の)欲求を、第一に置いている。
その後で、製品やビジネスの意味なんかを、後付けにしているような感じがする。
逆じゃないんだろうか。
本来、「製品」というのは、お客に向かって出すものだ。
不特定多数の顧客に向かって、その意義や普遍性を問う。
そうでないと、「事業」として、ものづくりをすることにはならない。
ただの趣味になってしまう。
(趣味の延長でナンボか稼げりゃいいじゃんよ、という事なのかも知れないが。それにしちゃあ、余計なことに手間がかかりすぎだ。そも趣味として、楽しめなくなってしまう。)
デジタルツールは動きが早い。
悪く言えば、すぐ変わるので、頼りにならない。
まだ脆弱であり、時を経る普遍性があるのかは、わからない。
未整理なことも相まって膨大で、個人が触れられる範囲が限られる。
普遍性を問うようなプロダクトは、そんなものには頼らない方がいいのだ。
その辺りは、冷静に見て欲しいと思うのだが。
プロなんだから。
そんな違和感は始終消えなかったし、何より、その「お話の変な方向」が、あまり新しくも見えなかったのが、読後に、妙に印象に残った。
(昔からよくある話、「夢見る人は、夢見ちゃうのよね」。)
業界の本筋に馴染みがない素人さんが、入り口で夢を見るには、いい本なのかも知れない。
(と言うと、何だか、年かさのセレブ向けの、怪しい営業を見るようだが。)
冷静な人は読まない類の本だろうとも思うので。
少し、嫌な予感もした。
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マイクロモノづくりはじめよう ~「やりたい! 」をビジネスにする産業論~
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