読書ログ 海底戦記 ― 2014/08/23 06:38
確か、この著者の名前を、何かで見かけて。
私は普段、小説の類は読まないのだが。
珍しく、図書館で探して。
これかな?とエイヤで借りた。
戦時小説である。
舞台は、潜水艦。
時代は、真珠湾攻撃の直前。
出撃。「訓練ではない」。
索敵。そのまま戦争に突入。
浮上すらかなわないまま、ひたすら敵艦の撃沈目指し、潜航する。
過酷を極める環境の船内、
美しくも切ない諸情を背負った、乗組員たち、
「誠」を絵に描いたような、真摯な人柄で引っ張る艦長、
乗組員全員が形作る、隙のない「やまとごころ」の円錐、
それが、艦を、ひとつの生き物として動かす。
お国のために。
まるで、著者が艦内に乗り合わせたかのような、実にリアルな筆致だ。
まことに美しく、かつ、見事な描写。
あまりに美しくチームプレイが成されていて、下衆に見れば、チームマネージメントの理想として、その辺のビジネス書なんかに、感涙と共に紹介されていても、全くおかしくない内容だ。
でも、違和感が残った。
少なくとも、犠牲と言うには大きすぎる、苛烈な終末を招いた事象の一端であるということを、今を生きる私は知っている。
それもあるが、少し違う。
何というか、ある種の嘘っぽさのような。
その感触は、実はこの小説は、著者が艦内に居合わせたものでも何でもなく、事前に、乗組員に多少の取材を行い、その内容をまことしやかに描き上げた作り話だ、と後書きで読んで、確かなものになった。
話を「うまく書く」のが、作家の腕なのだ。
いや。
もう一つ、納得が行かない。
もう一つ、裏があるような。
「反発」の表れ(いやみ)として、でき過ぎた笑顔で対応する。
そんな笑顔にあるような臭いが、ふっと、したような。
気のせいか。
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海底戦記(伏字復元版) (中公文庫)
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