読書ログ 巨大な夢をかなえる方法 ― 2015/06/21 07:13
合衆国の大学では、卒業式にエライ人が来て講演をする風習があるそうで、本書は、その中でもデキがよく、日本人受けしそうな講演を選んで、翻訳・収録したものだそうだ。
TEDのような「優秀で面白くためになるプレゼン」がNHKでやっていたりで、この手の講演が彼の国にはふんだんにあることは周知されてきたし、プレゼンとは何ぞや的な所は、英語が苦手な我々日本人にも、ずいぶん馴染みができてきたように思う。先ごろ、ジョブスが亡くなった際に、スタンフォード大での卒業講演が再注目されていたので、類例を集めてみた、といった企画が元になっているようだ。
大学の卒業講演なので、オーディエンスは、20代半ばの、イキがよく、意気揚々としていて、頭脳明晰な若人であることが想定されている。壇上に上がるのは、実業家、役者、投資家など背景は様々だが、いずれも、その世界で大成功を収めた超のつく有名人達だ。その彼ら彼女らが、今まさに巣を飛び立たんとしてる若い後輩達に、自らの成功の秘訣を語る。そういう構造のお話になっている。
なので、読めば素晴らしく爽快で、いろいろとためになる内容を想像しがちなのだが、まあ粗方は間違っていないというものの、さほど読ませる内容でもないように感じた。本書の副題は「世界を変えた12人の卒業式スピーチ」だが、「世界を変えた」が修飾するのは「12人」であって「スピーチ」ではない、とそんな感じだ。
そもそも、成功の秘訣を語るというのは、簡単なことじゃない。確かに、ご本人達も相当な努力して来られて、これだったからうまく行った、のような手ごたえなり分析などがあり、それを上手に話として組み立ててご開陳してくれているわけだが、確かに必要条件(成功するにはそういう資質が必要)だろうなとは思うものの、十分条件(それさえあれば皆成功できる)ではないことも多いし、簡単に「ハイそうですか」と実践できる内容ではなかったりもするから、お話に対する納得感はイマイチだったりする。
まあ、読んでるワタクシが、学校を出てからン十年を経た、ヘタすると講演者より年長というエエおっさんなので、残された時間(つまり「未来」)はないわ、体力ヘナチョコでそうは前のめりになれないわで、卒業生のつもりでトキメクという感じには程遠いというのが、そもそも大きいのだが。
全体を通して見ても、要は「これからの若い人たちにはこうあって欲しい」というメッセージという点では共通しているので、繰り返しというか、似た話が多かったりする。まあ、そこに流れる共通のエッセンスを拾えれば、それが究極の教訓というか成功のノウハウであるはずなので、もうちょっとマジメに読みゃいいのになあ、と自分でも思いつつ、つい飽きてしまって眠気が差した。
いや、講演者は皆、本当にマジメで話もうまい手練ればかりで、その彼ら彼女らが、練って仕込んで作りこんだ、ちゃんとした話ばかりではあるのだ。
ただ、やはりこの手のお話は、卒業式というステージでライブで聞くから、臨場感なり高揚感なりが伝わる(盛り上がる)ものであって、翻訳をしずしずと読んでいても、ダイレクト感のほとんどが失せてしまっているようにも感じた。
同じ理由で、この内容は、「卒業生」から年齢や立場が遠い人たちには伝わりにくくて、想定オーディエンスに近いほど共鳴度も増すように思う。他方、例えば、受験生なんかに読ませても、あまりピンとは来ないだろうし、すぐ役立つ教訓にもならないだろう。(入試問題という、本質がないゲームに強制的に付き合わされている若人に向かって、本質を見極めて遺憾無く努力せよ、なんか説いてもしょうがないでしょと、そんな状況認識。ま、本人次第だけど。)
気に入った講演(またはその類似品)をYouTubeで探して見てみる、のような副次的な読み方はできるかもしれない。
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巨大な夢をかなえる方法 世界を変えた12人の卒業式スピーチ
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