バイク読書中 「Vespa style in motion」 #102012/10/21 06:35

Vespa: Style in Motion



映画 フェリーニ「道」の、時代感だろうか。


Vespaの生産数は、発売の一年後には月産500台に達したが、それでもバックオーダーは増え続け、10~12ヶ月分にも及んだ、とある。なかなかのブレークぶりだったようだ。

初めの98ccは、ちょこちょこ改良を施されつつ、1947年まで生産される。(全部で4バージョンあった。) その後、ラインナップは125ccにスイッチする。

実はこの時、初めてスタンドがついたの(笑)

初めは125r(rigid、リアリジッド)、次に125e (elastic、リアサス付き)など、いろいろあったらしいが。技術的な詳細は私も調べていない。ただ、98に比べて、エンジンだけでなく、車体全体にも相当に手が入って、その改善ぶりは、当時、お堅いことで有名だった雑誌でさえ賞賛した、とある。

エンジンのマフラーの効率向上は眼を見張るものがあった・・・などとあるが、航空分野のエンジニアであるD'Ascanioと、重厚長大産業だったPiaggioのタッグが、小型2stエンジンのノウハウを潤沢に持っていたとは考えにくい。きっと、Piaggio の開発部隊が、この時期にテストベンチをブイブイ言わせながら、作り上げたものだったかと想像される。(だから、この後も日進月歩する。)

当時の機体の値段だが、(本書でも、98ccか125ccか記述が混乱しているが)、初め 68,000 Lireだったものが、この当時(終戦直後)の超インフレの影響で、その後90,000 Lireになり、一年後には、168,000 Lireになった、とある。
(何回か前に、 値段を書いた資料がない ことに触れたが、確かにこれでは、値段なんて書きようがないね・・・。納得。)

この数字が、当時の売価の相場(平均)を表しているのか、こんな値段で売ったヤツもいましたよ(最高値)、ということなのか、よくわからない。そも当時のイタリアに、定価という制度(概念?)があったのかもよくわからないので、判断に困るのだが。本書は、別のモノサシを挙げてくれている。

当時のVespa の値段は、
 ・ 中流の管理職の給料の8か月分
 ・ または、一般労働者の給料の一年分弱

今の我々で言えば、クルマを買う感覚だろうか。お気軽に買えるほど、安くはなかったようだ。(ローンの仕組みが整備されていたとも思えないし。)

ただ、当時、4輪のクルマは、さらにもっと、高嶺の花だ。でも、移動の足や運搬手段として、乗り物のニーズは強かったろう。(映画「自転車泥棒」の時代感。)

皆様の手に届く、「二輪のクルマ」
Vespaは、実際に宣伝文句として、そんなプロモーションを打っていたし、機体の作りとしても、実際に、人々の実地の役に立つことを、まず考えた機体だったことは何度か述べた。

まるで、Piaggioが、そういった機体で、生産の量にアクセスすることで、社会への貢献と、会社の利益が両立できることを、知っていたかのようだ。
(以前書いた、Ducati が ついに触れることかなわず 、Guzzi が かろうじてアクセスできていた 市場のこと。)

生産量は、1953年に50万台を達成。

日本では、神主さんのお払いだが。向こうでは、坊様の祝福。

これは、計算すると、生産量を毎年ほぼ2倍に増やしたことになる。(えらい投資である。)

そして、3年後に、100万台を達成する。
(再度、坊様の祝福。上と同じ光景をもう一回。)

ちなみに、
Moto Guzzi のCarderino の「総」生産台数が、21万台。
Galleto が、7万台である。
VespaがリーチしていたTAM(市場規模)の大きさには、驚かざるを得ない。
(こんだけ大きければ、ゴタゴタもある。そのうち書くかと思う。)

Vespaが製品として完全に立ち上がって、イタリアだけでなく、ヨーロッパ以遠をも侵食するに至らしめた主役は、この125だった。
実際、発売直後から、ドイツ、スイス、オーストリア、フィンランドにも輸出されていた、とある。

スペイン語の広告 「世界で最もよく知られた小バイク」


さて。
上で、Piaggioが、人々の実地の役に立つことをまず考えていた、とシレッと書いたが。
その、「次の例を」、次回に述べようと思う。



「スペイン階段だって登っちまうんだぜ!」



コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://mcbooks.asablo.jp/blog/2012/10/21/6608087/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。