バイクのマンガ 「ライダーズ ラプソディ 広井てつお」2013/03/03 06:58



先週、なんか疲れたので。
(怒るのは、ムダに疲れる。)
今週は息を抜きます。

本棚にあった、古いマンガだ。
ミスターバイク別冊、1988年5月、定価\280。

この値段で、270ページ余。
実にお買い得であった。

いや、お買い得だからという理由だけでは、本は、本棚には居続けられない。

バイクが居る風景を、上からでも、下からでもなく、
横から目線、対等の目線で、眺めるマンガだ。

ぱっと見、ありがちな、くっさい雰囲気ではあるわけだが。
(以下、クリックで拡大)

一応オチャラケもあって、雰囲気マンガ特有の、夢遊病のような非現実感には、没入しないで済んでいる。
(バイク乗りにとって、現実感は命綱だ。)
(時代感もたっぷりですな。でも、探せば居そうな分かり易さ…。)

「現実感」という背骨が、スッと一本、通っている横で。
ストーリーが、静かに流れていく。

地元の話とか。
(レストアを待ち続ける陸王)

ごく個人的な話題が、かえってリアルさを彫り出す。

北米ツーリング。
乾いた地面を走るわけだが。話の方は、いつも通りの湿気を帯びる。
異文化の大地を走るのに、帰依は必要ないので。
日本車でも十分。
何に乗ったって、道は変わらない。

美しい思い出。

・・・だけでなく、USの実際を、さらっとえぐり出して、見せてもくれる。
(人種が様々。)

バイクマンガにありがちな「伝説」や、

「説教」もあるわけだが。

旧車に女の子を並べるにしても、この程度だし。
(宣伝的にキャッチーな萌え系ではなく。普通に居そうな。)

普通にありそうな「横から目線」なので。
現実感は失われず、安心して、ページをめくれる。

現実感というのは、「身に覚え」だったりもするので。
素直に、辛らつだったりも。
(バイク乗りには、証明が必要なんかな。)

好き者のにおいはプンプンするのに、宣伝くさくない。
この感触は、今はもう、探しても出て来ない気がする。

だから、なくなってしまったのか。
( いいものは、売らんかなの臭いがしない。
 だから売れずに、消えて行く。
 vice versa. )

全然カンケーないけど。

シンヤさん、マジ若っけーっすよ。(笑)
(当時の、ウエアの広告。)
(カドヤのHPによると、なんと、 バトルスーツはまだ手に入る らしい。フルオーダーのみだそうで、AB~BE体のオジサンでも着れますぞ!。)


Amazonですが…
ありません。
作者の名前で検索すれば、似たような短編集はあるようですが。
現状、妙にプレミア化して、「売らんかな」になってしまっているというのは、皮肉ですな。
ちょっと寂しい & 世の中難しい・・・。


バイクの本 「バ・イ・ク」2013/03/10 06:32



以前取り上げた、 「ま・く・ら」という本 の続刊ということだが。

いろいろ、微妙な本だ。

「ま・く・ら」の方は、噺のまくらを活字にしたもので、噺家の軽妙な語り口を本で楽しむという、リズム感を持った稀有な本だったが。本書はまるで違ってしまっている。あの軽妙さは、多少は残っているものの、ほぼ普通の口述筆記の書き物レベルに落ち着いてしまった。「ま・く・ら」の続きを期待すると、間違う。

では、バリバリのバイクの読み物かというと、そうでもない。確かに、バイクにまつわる物語ではあるわけだが、わかりやすく噛み砕いていることもあって、ぱっと見、素人さん向けの入門書ライクに見えなくもない。無論、深い話もあるのだが、そこまでの待ち時間が読めないので、昨今の読み物、トントン拍子だったり論理立てや演出だったりするが、そんな物に慣れている人には、かったるく感じるかも知れない。

1980年代前半の、中年ライダーの体験記である。

いや、いい話なんですよ、ホント。(ちょっと著者風)
でもね、なんかスカッと終わらないというか。しみじみした後に、なにかが、ボヨンと残っちゃう。
いつまでもダラダラ終わらないし、頑張って読んだって、やっぱり、どうもスッキリしない。
ああよかった、面白かった、そういう読後感が無い。
それでいて、ある意味、バイクの真髄をしっかり突いているという。
微妙ですよ、コレは。(やっぱり著者風)

話題を選んで噛み砕いているので、分かり易くはあるのだが。実感というか、あるある!とひざを打つ感じというのは、やっぱり、乗っている人にしか分からないだろうなあと思えるのが、さらに微妙な感じを上塗りする。

これを読んで、バイクに乗りたいと思い始めるニューカマーは、さとい皆様が多い昨今、そうは居ないような気がする。(やっぱり、一部中高年かなあと。)

また、著者の実体験を、いろいろと紹介してくれているのだが、それが、バイクの上達の役に立つかというのも、微妙と思う。(この当時とは、環境が違いすぎる。道路も、教材も。)

だけど、きっとバイク乗りは、これを読んで、つい深くうなずいてしまう。それは、バイクに乗るということが、ある種の真実、現実の厳しさと、人間の間抜けさの対比が作るアイロニーのようなもの、そこを突いていることの証でもある。それを知っているからこそ、苦笑のような表情でもって、思い出すように、読めてしまう。

だから、バイク乗りには、お勧めである。

初めから、順にきっちり読むのではなくて、パラパラめくって、目に付いた所から、そこはかとなく読んで。フフンと笑いながらうなずいて、閉じる。そういう本だと思う。

まあしかし、北海道ツーリングの話題がほとんどなので。今年の夏は北海道か!?、とそんな気になることは請け合いだ。

何だかダラダラ長くって、終わりそうも無いんだが、所々が・・・仕舞には全体が、印象に残る。
で、性懲りも無く、何度も読み直したりする。

確かに、80年代の北海道ツーリングって、こんな感じだったなあと、思い出した。


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バ・イ・ク (講談社文庫)

クルマの本 「福野礼一郎スーパーカーファイル〈2〉」2013/03/16 07:34



先週の本で思い出した。

この人も、鋭いクルマ評を書く人で、私も以前はよく読んだ。

広告とか提灯持ちとか、ありがちなポジショントークからは別の視点で、結構あけすけに、いろいろなことを書いていた。
何となく、突っ込み隊長的なポジショニングで、その時代時代の裏事情を、わが身を呈してよく知っていた。それが、話のリアルさを裏打ちしているのが、当時は新鮮で、面白かったのだ。

でも、だんだん本心を語らなくなってきて、何となく、奥歯にモノ的な話し方も増えた。
そのうちに、何だか仲間内に閉じた感じになって。つまらなくなってきたな~と思ったら、まともな本が減っていった。雑誌の連載の過去ログ集、しかも対談の会話調を活字にしただけの、内容が薄い本が増えた。最近は、妙に物フェチに寄った少数が残るだけだ。途中で挫折した企画も多い。

何となくだが、自分の興味や好きなことを情熱的に語るスタイルと、ジャーナリストとして言うべきことの乖離が、埋められなくなったようにも見えていた。

業界内のポジションというか立ち位置が、そういうものになってしまったのか。
端的に、こういう記事では食えない、ということか。
雇われ教祖の役に、飽きたのか。
・・・歳、取っただけ?。

今回の本は、図書館を探して、この著者の、新しめの本を探して借りた。
2008年の本で、さして新しくは無いのだが。

読んでみて、驚いた。

見覚えがあった。
一度、読んでいる。
でも、忘れていた。 (印象が薄い)

前半は、今のGT-R(R35)のアセンプリ工程を紹介した記事だ。
一生懸命ホメているのだが。どうにも、提灯持ちな臭いがする。

製造工程を追って、その造りの良さをしきりに誉めているのだが。メーカーは、その必要があるから、やっているだけだろう。(でなければ、同じクオリティを作りこまない、それ以外の市販車全てを糾弾すべき、となってしまう。)

本書で直接見たのかは忘れたが、著者は、このR35 GTRを評して、
「これはゼロ戦ですよ」
と言ったと、どこかで読んだ。

この所、ずっと不景気だし、日の丸印の豪奢なGTRに気持ちが沸くのも、わからんではないのだが。

日本人の魂は、あんなにデブで巨大な、電子制御の塊になった、ということだろうか。

(ISBN 88-85386-52-0)

ふん。
案外、そうかもしれない。


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福野礼一郎スーパーカーファイル〈2〉