バイクの本 「Moto Morini 3 1/2 & 500 Performance Portfolio 1974-1984」 つづき ― 2013/03/31 06:49

前回、モリーニのトレメッツォは、イタリアの高級品であり、いわば「正統派クラシック」ではなかったか、と 紹介した 。
高級品なだけに、値段は少々高かったようだ。
当時の(英国での)相場では、750ccの大型クラスの中古や、中型(500cc)クラスの新車と同じ程度だったとある。その金額を払って、一クラス下の350ccに食指を伸ばす人というのも、限られたろう。
そんな状況もあってか、モリーニのVツインはこの後、大型、小型の双方に展開を図り、500ccや、250ccのモデルが追加される。
本書には、その500ccの方の記事が豊富なので、少し紹介してみよう。
エンジンの設計、クランクやミッションの容量などは、もともと、その程度の拡張性を想定してあったらしく。そちらの方は、さして苦労はなかったようだが。問題は、「燃焼室」だったようだ。
これらモリーニのVツインは、ヘロンヘッドである。燃焼のコントロールは、ピストンの上面に刻まれた、燃焼室の形状で決まる。設計者であるFrancco Lambertini は、排気量をやり直す度に、この燃焼室の形状を、イチから試行錯誤していたらしい。
コンピュータシミュレーションがない当時なので。それが普通、ではあったのだが。相当の苦労がしのばれる。
実際、開発は、一筋縄では行かなかったようだ。
ピストン。350と形が違う。
市場での問題は、販売の価格でもあったので、これ以降のモデルヒストリーは、コストダウンを並行している。
美しかったメッキのフェンダーは、無愛想なプラスチックに。
軸距離は、少し伸びた。1443mm。
そのせいか、前後に長く見える。
(「長さ感」が、ルマンIII の辺りに似ているようにも。)
何となく、シルエットは、トレメッツォの感じを保持してはいるのだが。
エンジンが縦にかさばっている感じがあって、あの「こじんまり感」は、だいぶ失せている。
先週の写真を再掲。比べてみてね。
500の方に話を戻して。
ライダーが小さいのか、バイクがデカイのか・・・。
排気量を上げたので、ラクに乗れる意味での余裕は得たように思われるが。当然、全体のキャラクターは、一回り大型車寄りにシフトしたろう。
当時の「ライバル対決」。
同じ500ccツインとはいえ、相手はさらに大きかったりして。
(いささか古びたとはいえ、イタリアの貴婦人と、コンナノを並べるというのは。どうもね。)
なお、500で導入された「新しいパーツ」は、順次、350ccにも投入される。
で、やっぱり、何となく、安っぽくなってしまって。
燃焼室が新しくなったりで、ちゃんと開発もされているのだが。
始動用のセルも、500ccのが降りてきた。構造が微妙とか。
この辺は同じ。
時に従い評価は変わるが。(今時コレかよ、と。)
フレーム構成の透視図。
conventional か、obsolete か。
その後も、市場に合わせて(?)いろいろ改変を加えられ、いわゆる「正常進化」を続けるのだが。
これ↑の記事を書いているのは、かのMick先生で、一生懸命ホメてくれているのだが。いわく、やっとこさ左チェンジになったが、長いリンクを介しているのにタッチが良い、ブレーキも前2枚ディスクで安心、云々・・・。
私などは、この横置きV2のエンジンレイアウトは、昔のホンダVT250辺りを先に見ている世代なので。その先行イメージの呪縛を、自分で意識して解いてかからないと、このモリーニV2を、公平に見てやることができない。
なのだが、ここまで「正常進化」されてしまうと。
どうしても、昔の国産125ccのスポーツモデルの辺りに似通って見えてしまって・・・。
市場の要求に追いつくために、重ねた努力だとは思うのだが。
いつの間にか、大切な何かを、削り取ってしまったような。
ある意味、疲弊のようにも見えてしまう。
初代モデルに感じた「遊びバイク」の強い香りは、だいぶ薄まってしまったように感じられて。
私にはもう、その断片が少し、見えるだけだ。
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Moto Morini 3 1/2 & 500 Performance Portfolio 1974-1984 (Performance Portfolio Series)
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