バイクのビデオ ~ 「The History of the TT」2012/05/13 05:23



田植えも終わって、暖かさが増していくこの季節になると、何故か、マン島TTを思い出す。
「そろそろだなあ・・」

TTのDVDは、以前、単年度のレースの様子をまとめたものを 取り上げた が、今回のは、TTの歴史を追ったものだ。

創世記の当時の様子から、レースの映像はもとより、関係者のインタビューなどをまとめている。何せ歴史が長いので、収録時間もなかなか長い。

歴史が長いということは、端的に「いろいろあった」わけで、情報の量も多くて興味深い。GPと違って、クラス分けもいろいろあったし、内容的に市販車に近かったりもしたので、バイクの歴史そのものを一望する感じとも見える。記録モノとしてはなかなか便利で、資料としても使いでがある。

「あの憧れの一台」(例えば、ホンモノのベベルやパンタとか)の実働状態を見られる貴重な資料でもあるのだが、ほんの一瞬しか写っていなかったりで悔しかったりする。(出ていた期間も一瞬だったりするので、仕方ないんだけど。)

上のパッケージ写真の版は既に古くて、今は、最新年度を後付けした次の版が売られている。といっても収録は2006年までのようで、そろまたupdateするかもしれない。

今年のTTはどうかな。


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The History of the TT - マン島TTレース 1907~2006 [DVD]

ヒコーキのDVD ~ The History of BLUE IMPULSE “蒼い衝撃”の軌跡2012/05/06 06:10



ブルーインパルスの歩みを、当時の映像と関係者のインタビューで振り返る

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今週のエントリーは、バイクとは直接関係がない。しかし、このDVDを見ていると、どうにもバイクを連想してしまうことが多いので、そのことをつらつらと書いてみる。

最近、ハチロクが何とかいう話題をよく耳にする。個人的には、重くて大きいスポーツカーなんてのには興味はなくて、むしろ、あったなあハチロク・・・と、飛行機の方を思い出してしまった。そういえばDVDがあったはず、と引っぱり出して、また見てみた。

買ったのは、ちょっと前だ。F-86Fのブルーインパルスがまた見たくて、ついでに?最近の映像も見られるという便利さに惹かれて、買ってみたのだった。

86ブルーは、幼い頃にテレビで見て感動した。
あの、翼を広げて舞うイメージが好きだった。

今、実際の飛行シーンをあらためて見てみても、あのころのイメージはそのままで、実に優雅に飛んでいる。
しかし、よおーく見てみると、実際はそんなに甘くはない。

機体の剛性は低く、エンジンの効率も悪い(パワーがない)。今の感覚からすると、何をするにも不如意で厳しい。それで、近接してアクロバットだ。空恐ろしい状況だったと思う。

昔は良かった・・ワケではないのだ。

バイクで言えば、多分、かつて名車と言われた旧車に乗ると、多かれ少なかれ、同じような感じがするのだろうと思う。

ブルーに戻って。続いては、T-2の時代に移る。
翼が小さい、精悍なイメージの国産機である。

演技の方も、86ブルーの優雅なイメージとは様相が変る。機体の鋭さに合わせるかのように、至極ソリッドな感じになった。編隊でロールを切る時など、まるで一枚の板に張り付いているかのように、精密に回って見せている。

この機体、ぱっと見だが、低速で舞って見せるアクロには向いていない印象がある。実際、えらく派手に落ちたりもしている。

当時の関係者のお話からしても、このイメージはおおむね間違ってはいないようだ。しかし、当のパイロット達のコメントは、やはり一味違う。

パワーに余裕がないので、一度遅れると挽回に時間がかかる。ちょっとしたタイミングで演技が間延びしてしまうので、えらく気を使った、と。これを、うまい言い方をしていて、「安定性重視な特性」と表現されていた。

一番驚いたのは、翼の面積が小さい(翼面荷重が大きい)機体なので、曲がるとスピードが落ちる、だから、高低差をつける(落とす)などして躍動感を保つように工夫した、と。
タイヤが細くて面圧が大きいので、コーナーで減速する・・・それって、一昔前のバイアスタイヤのバイクと同じだ。

ビシッと決まれば美しいが、レンジが狭くてリカバリーには腕が要る。常に二手、三手は先を読んで、備えておかねば立ち行かない。そんなイメージだろうか。

この機体で、正確に編隊を維持するのは至難だったろうと思う。それが、カキッ!と見事に決まっているのは、パイロットの技術がいかに卓越しているかを示している。戦慄するほどだ。

次の機体は、今も使われる最新型。T-4だ。
軽く小さく、翼も大きい国産機。
これでまた、イメージが一変する。

大きさや軽さ(重さ)が、アクロの速度域に合っている。パワー自体は高くないが、機体の方も軽いので、動作には余裕がある(テキパキ動く)。結果としてパワーに余裕を持てるので、今までは難しかった、スモークで「縦に」何か描くことも可能になったようだ。(今までは性能的にムリだったので、例えば86の時の五輪のマークなんかも、水平に描いていたとのこと。)

実際に飛んでいる姿にも、安心感がある。まるで、空気をそっと押さえるように、翼をちょっと下向きに伸ばしながら、しかし翼端から雲を引きつつ(翼が長いから)、軽々と、ふんわりと身をひるがえす。その姿は実に優雅で、86ブルーを思い出させる。違うのは、力んでいる感じが全くしないことだ。それでいて、演技が実に緻密なのは、T2ブルーからの伝統だ。

インタビューで曰く、86は、アクロの速度や高度で、すごく動きが良かった。あんな機体を目指した、とのコメントがあったが、その狙いは、十分に達せられたように見える。

使うステージにしっとりと合っていて、使ってみてもしっくり来る機体。
こんなイメージの、公道バイクが欲しいなあ、としみじみ思った。

スペックで見るなら、サンダーバーズ F-16(来日時の映像が収録されている)の、パワーと剛性にはかなわない。翼面に雲を巻き出しながら、力で空気を押しのけて行く強引なイメージは、T4ブルーのしっとり感とは対極にある。機体が軽く、翼面積もあり、パワーも凄い。無茶苦茶な動きができるので、便利でもあるのだが、ちょっと行き過ぎ、という意味で、しっくり感はあまりない。

これが低速でブイブイ言わしている様は、何となく、次の信号まで全開!を繰り返す、スーパースポーツ君のありがちな風景に、似ているように見えなくもない。

スポーツ単能機という意味では、エアロバティクス(本DVDへの収録はない)の超軽量機の方が近いようにも思われるが、あそこまで尖がられてしまうと、使いこなすのは難しいだろう。かなりの訓練が必要な特殊仕様なので、一般人が乗った日には、やりにくくて胃が痛くなりそうだ。趣味としては度が過ぎる、曲芸専用機。Buellやモタードなどの、一部のとんがった車種のイメージだろうか。

普通のステージ(公道)に合っていて、操ることを、皆が楽しめるもの。
そんなに難しいことなのかなあ、と、青空を舞う機体たちを追いながら、思いをめぐらせていた。


飛行機乗りは大変だ。仕事で乗るのだから、大概は、自分では機体を選べない。

ブルーのパイロットには、共通点があるように見えた。皆、派手なところがほとんどなくて、すごく真面目で、冷静だ。飛行機の操縦も、ミスは死に直結する。それに真正面から向き合う生真面目さがないと、安全には飛べないし、生き残ることもできないのだろう。そう思った。
不良ちゃんや見せびらかし君は、時に従い退場して、結局は、地味で真面目なタイプしか残らない。バイク乗りと、類似だろうか。

ちなみに、こんなのも。
ブルーインパルス ジュニア
http://www.youtube.com/watch?v=RPkQKS4c6KA&feature=relmfu
あら?新型機になってる。知らなかった。
これ、上から見る方が面白いんだよね、きっと。


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ちなみに、96年の作なので、ちょっと古いのだが。
T-4が出たての頃で、初々しさが強調されていて。これもまた良し、です。
The History of BLUE IMPULSE “蒼い衝撃”の軌跡 [DVD]

バイクのビデオ ~ バリー・シーン [DVD]2012/04/29 07:14




ここ数週、バイク関係は話がとっ散らかっていて、うまく書けていない。
ざっとまとめておくと、

・ もし、レースが実験室なのだとしたら、市販車に何かしらのフィードバックがあるはずなのに、実際は何もなかった。
・ 実質的に、レースは「頂点のイメージ」(お手本)を提供することで業界に貢献してきたが、それを利用してきた当のメーカーが、何の反省もなく、それを捨てようとしている。
・ 一方で、サーキットで戦うライダーたちは、安全面は環境が向上しているにもかかわらず、速いだけで妙な特性のレーシングバイクに苦しめられ、命さえ絶たれ続けているように見える。
・ もういいかげん、レースをどう使い、何を残すつもりなのか、少し考え直した方がいいんじゃないかと思う。日本のメーカーは特に。(レーサーだけど、そこそこ人間が乗りやすそうに見える例としてManx Nortonを挙げた。)

とまあ、小うるさいことは、今週は忘れて。
シンプルに、レースを楽しもう。
だって、バリーシーンだもん。

根が明るい人である。茶目っ気があって人懐っこくて、いつも、どことなく楽しそう。美人も夜遊びも大好きだが、実は素朴で真面目な男だ。表裏がなくて正直で、ジョークも本音も素のまんま。たとえ相手が偉かろうと、文句はハッキリ、ズバリを言う。きっと、本当はいつも本気なのだ。

いつだか読んだ記事なのだが、バリーが公道で交通違反で捕まって、それがために大切なレースに出れない、という事態となった。国家的ヒーローのピンチ(?)ということで、当局が特別に配慮をしてくれて、事なきを得たらしいが。その時の彼のコメントがふるっていて、
 「ありがとう。ボク、いい子になるよ!」 (I'll be a good boy!)
だったとか。

今で言うと、陽気なロッシあたりが近いイメージかも知れないが、ロッシの、自分で自分を追い込んでいるような、あの微妙な影は、バリーにはない。むしろ、はなっから喜んでやっている、いたずら坊主のイメージだ。

トップのレーシングライダーは皆、焦点がぼやけたような、すごく遠い目つきをするようになる、とは富樫ヨーコさんの受け売りだが、確かに、心ここにあらず、といった感じの「遠い目」が、トップライダーには多い。バリーもそうではあるのだが、少し他の人と違っていて、彼の目の奥底にある光は、最後まで失われなかった。

そんな彼がいた頃のGPである。
レースは、凄くて、怖くて、楽しかった。

何せ、あの頃のレースだ。いろいろ凄い。セーフティーエリアったって、ストローバリアが申し訳程度に置いてあるだけだし、バイクは無作法な、正真正銘の怪物だ。それで、雨の中でもレースする。こそここでアクシデントは出続けるし、実際、シーンも何度か死にそうな目にあっている。

ヨーロッパ(イギリスだが)のライダーなので、その歩みを追うということは、GPを初めとした向こうのレースの歴史をなぞることにもなる。資料的に見ることもできて、例えば、50ccのクライドラーなんて久しぶりに見た(静止画だが)。本人や関係者のインタビューも豊富で、当時のものもあれば、取材しなおしたものもあって、単純に解説として役立つ以上に、当時の雰囲気をうまく伝えている。これが、字幕付きで見られるのだ。いい世の中になった。

やっぱり、レースって、凄かったなあ。
この「ゼッケン7」は、いつも、そう思わせてくれる。

そうそう。
アンチ・ケニーな人にもお勧めである。(笑)

そういえば、ライダースの別冊で、バリーシーンのもあったよね。再販してくれないかなあ・・。


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バイクのビデオ ~ ケニー・ロバーツ [DVD]2012/04/22 08:14



先週の類例で、DVDソフトを取り上げる。

以前、ケニー関係では、 ライディング論の本 とか、 DVDつきのレーシングテクニックの本 を取り上げたが、これは、ケニーのレース史を追ったものだ。GPに行く前のダートラ時代から、GPでは白/黒/黄色の78年から83年の引退までと、その後の様子(チームロバーツとか)をまとめている。当時の映像を、本人の回想インタビューではさむ作りで、ケニーの活躍を広範に網羅されている。スリックタイヤやリアステアの「なれそめ」や、機体の技術的な話(何年型はどう変わった)、舞台裏の方も、あの「政治の話」などなど。GP参戦当初の車載映像(カメラを取り付けたバイクがケニーを追いつつ、後ろから撮っている)などもあって、単純に映像としても楽しめる。

礼儀として(?)「キングケニーを奉る」作りでもあるのだが、その分を差っぴいても、このドヤ顔の尊大な男がGPに及ぼした影響は、やはり、小さくなかったと思う。何せ「偉そうで正しい」ので、ムッとする面々も少なくなかったろう(ヨーロッパ勢は特に)。しかし、種をまくことにマメだったのも確かで、今、残っているアレコレに、彼の影響を見ることも少なくない。そんな流れも展望できる。

しかし・・・やっぱり車体の特性の話になってしまうのだが、この頃は、レーサーですら機体の動きに安心感のようなものを感じる。機体の方は、ちぐはぐだったり、無茶や矛盾だったりで、乗り手も苦労しているのはわかるのだが。ステアリングヘッドを大事に扱う感じか、丁寧にバランス作りをしているからか・・。この頃は、速い人は皆、乗り方が丁寧だった。

この後、レーサーはただひたすら、トラクションでもって前後左右に車体を押し込む単能機に進化し、一触即発の、胃が痛い乗り物になった。そして何と、今やそのまがい物を市販したメーカー自身が、自己否定するに至っている。(詳細は、こちらの リンク を参照。レプリカを買った顧客を愚弄していると思う。CBRのオーナーは怒るべきだ。) それで改心して出した市販車の方は、ただの安さ&安定重視で、乗り味で言えば、ノホホンと乗ることしか能がない感じの(何もさせない、できない)、大きなカブのように見える。熟成の香りも、努力の跡も、ほとんど感じられないから、このケニーの当時の機体が持っていたような、「自分から操るが故の安心感」の公道版なんて、望み薄なんだろう。とどのつまり、ケニーの昔から今に至るまで、ライダーが命がけで戦って来たレースって、何だったんだろう・・・と脱力してしまう。

これから先、市販車はどうなるんだろうか。
大型スクーターの類例以外は、またカタナやニンジャのあたりをインジェクション化して、再販する位しか手が無いのか?。

全然関係ないが、昔、ライダースの別冊で、ケニーを特集した大型のハードカバーがあった。ああいうのを、再販してくれないかな・・。(当時、高くて買えなくて。持っていないのだ・・。)


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バイクのビデオ ~ 1983 GRAND PRIX 総集編 [DVD]2012/04/15 07:44



今年もGPが始まった。

去年と変わったこと。
125ccクラスは4stになって、キレが鈍くなったようだ。シャシやタイヤが向上する一方で、エンジン出力を抑え込めば、スリップ&ブレーキングの胃が痛い勝負になる。スリルは増えるけど、爽快感が減ってしまうのは、上のクラスと同じか。あと、MotoGPに市販車クラス?脈絡が・・。

今年も変わらないのは。
テレビ中継の、最大クラスの某・解説者がしゃべりすぎでウルサい。しかも、しょっちゅう嘘を言う。何とかならんのかなコイツは・・・。

と、今の話をし出すとグダっぽくなるので、例のように、昔話をしよう。

GPを振り返ると、もう一回見たいと思わせるレースはいくつかあるが。シーズンの展開として、一番印象が深いのは、私の場合「ケニーvsフレディ」だ。(歳がばれる瞬間) その映像を端的に見られるソフトとして、これを久しぶりにPick して見てみた。

シーズンの展開を追えるほど細かい作りではない。1983年の#10 イギリス(シルバーストーン)と、#12 サンマリノ(イモラ)の2戦だけ、インタビューと本戦の様子を収めている。見た感じ、「あの頃の雰囲気をざっと拾える」に近い。

もう、30年近く前になる。

ライダーは、みんな若い。
今や息子が走っているロケットロンだって若いし、マモラだってまだ黒い髪の毛がちゃんとある。バリーシーンは相変わらず運営側の文句をグチっていて、スペンサーはまだ小僧だった。だから、あんなチャランポランでも許してもらえてた。ちなみにケニーは、初めっからオヤジ顔だった。(笑)

バイクも懐かしい。
今のレベルから考えると、タイヤも車体も、いろいろショボイ。エンジンもフレームも、ギリギリだったり、ちぐはぐだったりだ。そこで、職人技の美しい動バランスと、ちょっと無鉄砲な冒険が混在している。サーキットの運営もスムーズじゃないし、チームやライダーの雰囲気も、今ほどはビジネスライクに冷たくない。作り物っぽい演出がない分、リアリティが強い。

なんだか、面白みが、今とは違う気がする。
その差は、ツールド何とかとか、野球とか、他のスポーツでも、同じのようにも感じられる。

確かに、今の方が「進歩」はしていて、スピードも荷重も野放図だ。その分、三途の川には近づいているわけで。どっちがいいのかは、よくわからない。
(サーキットのセーフティゾーンのような、安全面は確かに進歩しているのだが。死人は出続けている。それが、むしろ「車体の特性」そのものが原因のように見えていて。どうにも、気になっている。)

どうだろうか。
何か、見落としているような気もするのだが・・・。


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DVDは輸入が安かったりですが、国内版は字幕があって見るのはラクです。
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